3-5 選ばれし光V 〜家庭訪問〜
「い、いらっしゃい。健太君」
「……お邪魔します」
町巡りが終わり、俺はとうとう仁美とトオちゃんの家にやってきたのだ。
玄関で照れくさそうに迎えてくれる仁美。
自分の家を友人に案内するって結構恥ずかしいだろうなー。
「えーと、アイちゃんとトオちゃんが今日、町長さんのところに泊まるんだって」
「その話なら俺も聞いたぞ」
ん? アイちゃん?
そっか、仁美の事を母親のように思ってるなら一緒に住んでてもおかしくないか。
「そうなの?」
「ああ。ほら仁美って町長に俺の事なんか話してたんだろ?」
「え、ええっ!? ななな、何聞いたの!?」
驚い過ぎじゃないかい? 仁美ちゃんよ。
なんか俺に知られて困るような事でも話してたのかね。
でも仁美は人の悪口を言うような奴じゃないよなー。何言ったんだ?
「別に? もう戻れない故郷の友人って聞いたな」
「あ、そっか……良かった」
「ん?」
ぼそぼそっとしてて後半の方が聞き取れなかったな。
「なんでもないよ! そ、それよりもほら、入って」
「おう、そうだな」
仁美の家、仁美の部屋、二人っきり……ぐふっ。
だめだ。やめろ。考えるな。動揺するな。落ち着け、落ち着くんだ俺。
こういう時はあれだな、素数を数えるか。
一、ニ、三、五、七、十一……ってあれ? 一って素数に含まれるんだっけ?
……うん、まあいいや。結果オーライ。落ち着いた。
「そういえば健太君晩御飯は食べたの?」
「あ、そういえば食べてないな」
なんせ私文無しですからね。誰かからご馳走して貰わんと食べれんのですわい。
「そ、それじゃご馳走するね!」
「いや……俺としては泊めてもらうだけでもありがたいわけで……」
「遠慮する事ないよ! そ、その今日は再会記念日だもん!」
両手を胸の前でギュッと握りながら、ぐいっと顔を近付けてくる仁美。
……ち、近い……それに、なんかいい匂いがする。
「……あっ」
戸惑っている俺の様子を見て何かがおかしいと気が付いたのか、仁美の動きがピタッと止まると、みるみるうちに顔が赤く染まり上がっていた。
「ごごごご、ごめんね!」
まるで瞬間移動をしたのではないかと思うような速度で顔を遠ざける仁美。は、速え。
「え、えーとね。それに健太君にはアイちゃんを助けて貰ったし、お礼させて。ね?」
「でも……」
結局アイちゃん……いや、アイちゃんだけじゃない。アスカや俺も助けてくれたのは仁美だし、トオちゃんだ。
俺は何も出来なかったんだ。
「うんん。健太君は助けてくれたよ。ちゃんとアイちゃんの心を……ね?」
心……か。つまりメンタル面で支えてやる事が出来たって事か?
……俺にはとてもそうは思えないけど、だけど、ここはそう思っておく事にするか。
「そうだな。ありがとう」
「ふふ。何で健太君がお礼を言うの?」
「さあな」
俺の心を助けてくれてありがとう。
「それじゃあちょっと待っててね。ちゃちゃっと作るからっ!」
「何か手伝える事あるか?」
「んーと、そうだねー。あっ、あたしが頑張れるように応援してて!」
最後にウインクを残して仁美はキッチンへと消えた。
「……にしても……」
女の子の部屋をキョロキョロとするなんて良くない事だってわかってはいるけど、好きな子の家だ。しちゃいますよねー。
文化というか、技術の差だな。日本での部屋とはまったく違う。
機械とか、写真とかがまったくない。
あるのは小さなぬいぐるみとか、小物入れとか、そういう雑貨だけ。
凄く綺麗に片付けてられるている事も合わさって、なんというか生活感が薄かった。
そういうばそうだよな。
仁美はトオちゃんと一緒に旅に出てたんだもんな。
家を持ってても、あまり使っていなければ生活感がないのは仕方がない。
……あれ? だとしたら、どうして仁美は家なんて買ったんだ?
まあそんな事を考えてても仕方がないか。
……ん? アイちゃんのためじゃね?
けどアイちゃんって良くドームに閉じ込められてるわけだし……あっれー、意味ー。
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