2-12 再会XII 〜切断〜
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突然空から降り立ちた魔獣。
またまたバトルパートという、安全からそっぽを向かれた状態なのだが、悲報はそれだけじゃない。
「……なんだよ……こいつ」
形は今までの狼に似ているだけど、だけどだ。
「デカイ……」
今までの狼は大きさに個体差があったとはいえ、大きくても一メートル程度だった。
だけど、こいつは高さ計算で一メートルはあるぞ?
つまりこれってさ、ボス戦って事か?
「アスカっアイと一緒に下がれ!」
「け、けどっ!」
「俺が時間を稼ぐからさっさとチャージ終わらせてぶっ放なせ!」
「っわかった!」
この巨大を倒すには剣でチマチマ斬っててもほぼ意味がないと思うんだよな。
だから期待するのはアスカの光魔法だ。
ノヴァとかいう魔法が直撃すればこいつも倒せるだろ。
だけどそれには結構な時間がかかる。
俺がいかにそれを稼げるかが勝負の分かれ目だ。
腰を刀を抜き、構えた。
あーあ。男子の大好きな刀だってのに、なんて、なんて頼りなく感じるんだろうな。
だけど下がるわけにはいかない。
後ろではアスカが無防備を晒しているんだ。
やるしかない。
「アイっ」
俺は念のために彼女の名を叫ぶと腰につけていた二つの袋を投げ渡した。
「わわっ。け、健太さん!?」
「ちっさいのが来る可能性があるからな。もしも来たら悪いけどアスカのことを守ってくれないか?」
「っ! はいなのです!」
持っている光石を全てアイちゃんに渡し、俺は刀一本で目の前のボスに向かって行った。
身体はもう随分と調子を取り戻しているみたいだ。
今ならちっこい奴らなら余裕で倒せると思うけど、雑兵とボスとじゃレベルが違うよな。
飛び掛かりしかしてこなかった狼と違って、大型君はがっしりと四足で立っていて、動く気配がなかった。
半開きになった口の中に見える牙、そしてそんな間から垂れ流しになっている大量のヨダレ。ちくしょう、汚いやろうだ。
敵の動きが通常とボスとでどれくらい違うのか先に見ておきたかったから、向こうが動くのを待っていたんだけど、動いてくれる気がなさそうだな。
ならこっちから仕掛けるか?
いやだめだ。内包してる魔力の量は多分通常種とは比べものにならないと思うんだよな。
魔獣にとって内包魔力の量はそいつの攻撃力、防御力、速力、耐久力と直結してるらしいし、おそらく刀剣じゃ有効打は無理だろう。
図体がデカイから速力についてはさぼと心配していない。
最高速度とかは通常種よりも上だと思うけど、動き始めは同じくらい、あるいは遅いと思うだよな。
ほら、デカイイコール鈍いってイメージあるじゃん?
思考を元に戻すか。
未だボスに動く気配はない。
俺の目的はアスカのチャージが終わるまでの時間稼ぎだ。
だったら無理にこっちから攻めるよりも、このまま待っていた方が良いよな。
よし、今は攻撃は考えないで全神経を回避と防御に向けるか。
この戦い、俺が終われば全部終わりになる可能性が高い。
前衛無しじゃアスカは戦えない。アイちゃんに至っては戦う力なんてないはずだ。
……ん? アイちゃん?
アスカは光魔師。それならアイちゃんは?
召喚獣と召喚者の関係はただの術使用者と呼ばれた者ってだけなのか?
それともーー
「健太さん!」
アイちゃんの声が耳に届いた瞬間だった。
「……え?」
目の前に大きな爪が迫っていた。
「ーーっ」
咄嗟に身体を横に投げ、ボスの爪で切り裂く攻撃を避ける俺。
相手が狙っていたのは頭。だけど咄嗟の回避で無事に頭を攻撃の範囲外に逃がすことに成功した。
だけど、
「あああああああああああっ!」
周囲に飛び散る鮮血。
そして視界の端にそれは映った。
「健太さんっ!」
今まで聞いた中で一番の大音量。大絶叫だった。
それもそのはずだ。
だって、鮮血と一緒に舞ったのは、俺の左腕だったのだから。
「あああああああっ!」
頭がおかしくなりそうだ。なんだこの痛みは、ありえない、ありえない!
あまりの痛みに周りが何も見えない、何も考えられない。
なんで、どうしてこんな事に。
どうしようもない痛みに涙を堪える事も出来ずに顔をあげると、また、鋭い爪が目の前に見えた。
「……え?」
また、俺は死ぬのか?
多分、ここで死んだとしても俺はドームで蘇る。
だけど、だけど、ここは町とドームのほぼ中間。
いくら俺が走ってもたどり着いた頃には二人はどうなってる?
後衛のアスカに、戦う力を持たないであろうアイちゃん。
だって、アイちゃんはボスどころか普通の狼魔獣からあんなにも必死に逃げていたじゃないか。
……二人とも、死ぬのか?
そして、俺だけが生き残る?
いや、それすら確実じゃないんだ。
仮にドームでまた復活したとしても、アイちゃんが死んでしまったら?
……アイちゃんが死ぬ?
あいつの、仁美の娘が、死ぬ?
だめだ。
そんなの、だめだ!
ここで死ぬわけにはいかない。だけど……ごめん、もう手遅れだ。
避けられない。
「健太さん!」
あの子の、アイちゃんの声が聞こえたと思った瞬間、目の前で聞き覚えのある炸裂音が響いた。
これは、銀光石!?
「今のうちに離れてくださいです!」
そう言ってまた銀光石をボス狼に向かって投げつけるアイちゃん。
今のうちに離れろって言われたって……くそ、あまりの痛みに動ける気がしねえ。
それに、血を失い過ぎたのかもしれないな。頭の中に霧がかかって意識が乱れるんだ。
くそ、どうすれば……っそうだ。どれくらいの効果があるかしらないけど、一応使ってみるか。
俺はポケットに手を入れると目的の小瓶を取り出し、中身を一気に飲んだ。
たった今飲み干したのは光薬こと回復薬だ。
どんな原理かは知らないけど、頭の中の霧が明らかに減ったな。
「うぐっ」
だけど意識がはっきりしてきたせいで腕の痛みがより強く感じるようになっちまいやがったな。
光薬はまだある。もう一個取り出すと、それを腕の切断面に向かって振り掛けーーっ!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」
しっみるーーーーーーっ!!
なんだこれっ今まで感じた中で最凶の痛みだぞっ!?
だけどあまりの痛みに脳内麻酔でも分泌してくれたのか、感覚がなくなってきたな。
よし、これなら立てる。退けるっ。
ーーだけど、いいのか? このまま下がっても状況は変わらない。
さっきから頭上で何度も炸裂音が響いてるけど、そろそろ銀光石の在庫もなくなるはずだ。
炸裂にボス狼の奴は嫌がっているように見えるけど、ダメージがあるようには見えない。
所詮は予備のサブウェポン。雑魚には効いてもボス相手じゃ足止めが精一杯って事だな。
つまり、在庫がなくなった瞬間、俺たちは一気に不利になる。
俺は左腕を失った。アイちゃんの唯一の武器たる銀光石はなくなる。アスカのチャージはまだ掛かる。
つまり、ここで俺が何かをしなければ負けは必至。
この距離、奴は銀光石の炸裂で動けていない。
炸裂が続いている間は俺も奴に近付けないけど、それでもこの距離。
考えろっ思い出せっ!
お前は何個アイに銀光石を渡した?
ちょっと前の出来事だ。ほら、思い出せ。そして、そこを突け!
「あっもうっ」
アイちゃんの焦った声が聞こえた。だけど、それは俺の動き出しよりも後。
炸裂が終わったが奴はまだ動かない。炸裂が完全に消える前から動いていたせいで熱風を顔面に浴びた。
皮膚が焼けていくるのがわかる。だけど、それでも、ここでお前の首を落とさなきゃ全部終わりなんだよ!
「死に晒せっ!」
俺の振るった刃はまるで閃光の如く輝き、そして、奴を斬り飛ばした。
鮮血と共に、奴の一部が天を舞った。
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