2-11 再会XI 〜フラグ〜
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今目の前で起きた現象に俺はただひたすら呆然としていた。
まるで狼を球に見立ててテニスを、いや両手のフルスイングだしどちらというなら野球か。
球を打ち返すと同時に光の球体をくっつけてて、それが炸裂。
しかもただ爆炎を周囲に撒き散らすわけじゃない。
綺麗な球状を作るように範囲を限定きて、爆発の威力を圧縮するなんてな。
ただの爆弾じゃ絶対に出来ない、魔法だからこそ出来る芸当か。
それに、範囲内に入っていた木が綺麗に消滅してる。威力は凄まじいって事だ。
どう足掻いても俺の剣でその威力を出すなんて事、無理だな。
だけどだ。
「よしっ!」
「よしじゃねえ」
「痛ぁっ」
ガッツポーズを決めているアスカの頭にチョップを落とした。
「な、なにすんだよー」
結果を見ればアスカはお手柄だ。
だけど、だけどだ。
「お前、遠距離型じゃなかったのか?」
「え?」
しゃがめって言われた時、俺は魔法弾的なものが飛んで来ると思ってたのに、実際はアスカのフルスイングとか、聞いてないぞ。
「アスカは後衛なんだよな? だったら普通は遠距離から攻撃するんじゃないのか?」
「え、違うぞ? 俺はチャージに時間がかかるから後衛で精神統一して、終わったら直接叩きつけるんだ!」
片手を杖から離し、グッと握り締めるアスカ。
そんなアスカの頭にチョップを追加注文しといた。
「痛ぁー、なにすんだよー!」
「それならそうと先に言えよ」
「ぐぬぬ……」
まあ色々と驚いたけど結果的にはうまくいったわけだしいっか。
「あ、そうだアスカ」
「なんだよー」
町に向かって歩き出して早々に俺が問いかけると、不機嫌そうな声が返ってきた。
やべ、拗ねたか?
「悪い悪い。思ってたのと違かったから驚いただけだ。助かったし、凄かったと思ってるよ」
「……本当か?」
「ああ、あんな威力に攻撃範囲、俺の剣じゃ絶対に無理だな」
俺にはできなくても、仁美ならやりかねないって思ったのは内緒だ。
だって[剣姫]って二つ名が付くほどの有名人……じゃない、実力者なんだろ?
なんかこう、飛ぶ斬撃とかをまるで息するように放つイメージなんだよな。
仁美ならそこに一つステップを加えて飛ぶ斬撃が着弾と同時に爆発するとか。……あると思います。
「そうか……そうだよな!」
「そうそう」
おー、単純。さすがは子供だな。
まあ嘘は言ってないけど。
「アイちゃんは怪我はしてないか?」
「はいっ大丈夫なのです!」
良かった。
正直あの量を前に俺も焦ってたんだよな。
いやー、ほんと、念のためにって光石を色々と買っといて本当に良かったな。
「それにしてもまさかいきなりあんな大群に囲まれるなんてな。そういう事ってよくあるのか?」
「いや、ボクは初めて経験したな」
「……まあ、だろうな」
もしもあんな状況が頻繁にあったらアスカがあんな反応をするわけないもんな。
こんなタイミングでそんな珍しいのに出くわすなんて、本当に運が悪い。
これが運命のいたずらってやつなのかね。
「それからもう囲まれる事なんてないか」
まあもう一度あの量に囲まれても光石はまだまだあるし、問題ないといえば問題ないな。
「ちなみにアスカ」
「なんだ?」
「さっきの魔法ってどうなってるんだ?」
「まさか健太も光魔師になりたいのか?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど、原理が気になってな」
「ふーん」
若干嬉しそうに振り返ったアスカが若干寂しそうに正面を向いた。
「町にアスカ以外光魔師はいないのか?」
「いないぞ。光魔師になるには魔学を独学で学ぶか、弟子入りするしかないからな」
「……へえ、意外だな専門の教育機関とかがあるわけじゃないのか」
「あるわけないだろ?」
魔法学校的なものがあると思ってたけど違うのか。
繰り返しになるけど意外だ。
アスカからそんな事も知らないのかっていう視線がちと辛いな。ははは。
「まあそうだなー。ボクたち光魔師は人間が内包している少量の光魔力を使って空気中の純魔力を操作するんだ」
「……光魔力? 純魔力?」
「……そんな事も知らないのか?」
やべ、とうとう呆れた声で言われちまった。
くっ、年上の威厳がっ!
「人間が内包してるのが光魔力、魔獣たちが内包してるのが闇魔力。それでどっちにも染まってない、というより、この二つが同量で混ざって空気中にあるのが純魔力っていうんだよ」
「へえー、流石は光魔師。よく知ってるな」
「そ、そうか? へへっ」
嬉しそうに鼻先を掻いているアスカ。
そんなアスカをアイちゃんは微笑ましいものを見るような目で笑っていた。
「光魔力を使うから光魔師っていうんだよ」
「あ、なる。て事は魔獣の中に魔法を使う奴がいたらその場合は闇魔師とでも言うのか?」
「……まあ、そういう奴もいるけどその場合はそもそも魔獣じゃなくなるからな」
「そうなのか?」
「ああ。そもそも魔法を使うには高い理性と……その」
頬を赤らめて何やら恥ずかしそうにしているアスカ。
どうしたんだ?
「魔法を使うにはすっごい理性と知性が必要になるのです。だから知能の低い魔獣レベルでは出来ないのです」
「ほー。なるほどね」
自分で言えないアスカの代わりに答えてくれるアイちゃん。
俺はニヤニヤとした笑みを浮かべてアスカを見た。
「こっち見んなよ!」
ぐふふ、二つの意味で赤くなってまあ。初心じゃのう。ふぉふぉふぉ。
「魔法使う場合は魔獣ではなく、魔人なのですっ」
「へえ」
「……お前、本当に何も知らないんだな」
「ほっとけ」
魔法を使えるのはとりあえず人だけって事か。
「あ、ですが確かに闇魔力を魔法として使えるのは魔人だけなのですけど、魔獣も魔人も内包している魔力量に比例させて身体能力を上昇させているらしいのですっ」
「あー、道理で」
ずっと思ってはいたんだよな。生き物にしてはあまりにも硬すぎるんじゃないかってな。
さすがはただの動物ではなく魔獣。
魔法が使えなくても魔力を己が力に変換しているとはな。
「そういう事ねー。で?」
「……ん、なんだ?」
「結局アスカはどんなイメージで魔法を使ってるんだ?」
「え? んー、そうだな。これ見てくれ」
そう言ってアスカが出したのはずっと持っている杖だ。
指し示しているのは杖というより先端部にくっついてる球体の方だな。
「感覚的にはんー、ボクの光魔力で空気中の純魔力を操作して、この球体を覆うんだ」
「ほう」
「それで中に魔力で出来た球を作る。あとはそれをぶつける、以上」
「……お前、説明下手だな」
「う、うるさいな! 手をどうやって動かしてるのか説明しろって言われたら難しいだろ! それと同じだ!」
「なるほどね」
光魔師にとって魔法はそのレベルで染み付いた技術って事か。
逆に言うとその感覚が理解できなければ使えそうにないな。
俺が光魔師になるのは多分無理って事だろうな。
いや、そうとも限らないか。この世界で長く過ごしている仁美が使えるようになってたら、いつかは俺が使える可能性もある事になるのか。
一度でも良いから魔法って使ってみたいんだよなー。
町とドームの中間あたりまでやってきた。
その目印となんというか、ここだけただの道じゃなくて、少し開けた空間があるんだよな。
ちなみにだけど、というか誰もが思った事だと思うけど。
「嫌な予感が凄いな」
アスカの様子を見てみるが特に変わった事はない。
「どうかしたのか?」
ずっと見ていたら首を傾げられた。
探知魔法には何も引っ掛かってないって事か?
こんな広い場所、完全にイベントポイントだと思うんだよな。
まあ、これは誰かに作られたゲームとかじゃない。フラグなんてないか。
「……え?」
ああ、この思考こそがフラグだったのか。ちくしょう。
「ガオオオオオオオオオオンッ!」
目の前にそいつは現れた。
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