2-9 再会IX 〜おや? アスカの様子が〜
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「アイー。俺だー戻ったぞー」
ドームに入るなりそう叫んでみた。
これじゃあまるで家に帰ってきた親父みたいだな。
「あっ! 健太さんっそれにアスカ君!?」
ドームの中央にある台座の前にしゃがみ込み、手を合わせていたアイちゃん。
俺が頼んでくれていた通りに祈っててくれてたんだな。ありがとう。
「アイー心配したぞー!」
「わわっアスカ君!?」
「……ほう」
アイが驚愕の表情で立ち上がった瞬間、俺の後ろからアスカが弾丸のように発射されると、そのままアイの事をぎゅーっと抱きしめていた。
「あー、ほんっとうに無事でよかったー!」
「わわわっアスカ君落ち着いてなのですっー!」
このまま両目をくの字にして慌てているアイちゃんを眺めているのも楽しそうだけど、子供とはいえセクハラはいけませんぞい。
「そこまでだアスカ」
「うわっ!」
猫を捕まえる感覚で首根っこを掴んで無理やり引き剥がした後、軽く頭にチャップを入れておいた。
「にゃ、にゃにすんだよー!」
「感動の再会はいいけどいきなり抱き着くな」
「あっ、ご、ごめんアイ」
「いいいいえ、だだだ大丈夫なのですっ」
大丈夫そうにはとても見えないな。わらい。
「さーてと、軽く休憩してから町に向かうぞー」
「な、なんですぐに……あ」
途中で気が付いたのかふっと落ち着くアスカ。
そうそう、昨日俺が言った事をちゃんと覚えてるみたいだな。
大切なのはスピードじゃなくて安全第一だ。
町からここまでそこまで遠い場所じゃないけど、ずっと周りを警戒していたりと体力を使ってるはずなんだ。
特にアスカはまだまだ子供だし、探知魔法をずっと使っていたからな。精神的負荷が特に大きかったはずだ。
休憩は大切だ。
「あ、あの二人でここまで来たのですか?」
「ああ」
そういえばまだアスカの魔法を見てないんだよかー。まあ、帰り道でも魔獣と一回くらいは遭遇するだろうし、その時にお披露目してもらえばいっか。
「そういえばアイー」
「なんですか?」
「召喚の儀は上手くいったのか?」
「うっ」
チラリと俺の方に視線を送ってくるアイちゃん。
まあ、言えないわなー。俺を、人間を召喚しちゃったなんて。
それにしてもだ。
「こらっ」
「にゃっ! な、なにすんだよーっ!」
「無神経だぞ。そういうのは黙って悟ってやるべきだぞ男として」
「え?」
「わ、悪いアイっ!」
俺の言葉が心に染みたのか慌ててアイに謝罪するアスカ。
だけど顔が近い、手を握らない。
「ていっ」
「痛っ! 今度はなんだよー!」
「いちいちタッチが多い。セクハラだぞ」
「ぐっぬぬ……」
確かにアイちゃんは可愛いからな。男として手を繋ぎたいとか思っても仕方がないと思うけど、そういうのはちゃんと正式にお付き合いしてからにしなさい。まったく、これだから最近の若者は。
……って、俺も若者か。ははっ。
「さてと、そろそろ行くか」
「おうっ」
「はいなのですっ!」
アイがいる以上、ここまで来た時よりもさらに慎重になるだろうからな。
これ以上ゆっくりしてると途中で日が沈んでしまう可能性が欠片だけ生まれる。
まあ大丈夫だとは思うけど、念には念をだ。
出発の前に一度刀の様子を見てみる。
前は一撃で刃こぼれしてたけど、今回はほぼ問題なしだ。
はっ! まさか俺の剣術レベルが上がっているのか!?
……いや、単純に刺突だと消耗が小さいってだけか。
一本目の時もそうだったし。
ともかく、この感じならここで剣を変える必要はなさそうだな。
「んじゃ。出発」
「はいなのですっ!」
「おうよ!」
やっとの事でドームから外に出たアイちゃん。クルクル回ったりしてテンション高いなー。
「アイ? 一応警戒な?」
「あっ……ご、ごめんなさいなのです」
「謝る必要はないよ」
目に見えて落ち込んでしまったアイちゃんの頭を撫でると、彼女は気持ちよさそうに目を細めていた。
やっとドームから出られて嬉しいのはわかるけど、ゆっくりとはいえクルクル回り続けていたら目を回すかもしれないからな。
もしもそんなタイミングで魔獣に襲われたら恐怖以外の何物でもない。
「それにアスカの探知力が凄いからな。ぶっちゃけ俺たちはさほど警戒する必要なさそうなんだよなー」
「アスカ君はそういうのが得意なのです!」
そう言って何故か胸を張るアイちゃん。
こうして見るとアイちゃんはまな板ってわけじゃないみたいだな。……って、俺のこの思考はセクハラじゃね?
「……っ健太!」
後ろからついて行く俺たちの会話を百面相をしながら静かに聞いていたアスカは突然目を見開くと俺の名を叫んだ。
声に混じるのは、恐怖。
つまり、
「おいでなすったか」
今度はアスカの魔法って奴を見せてもらいたいもんだな。
俺が囮になってその間に詠唱とかチャージとかをして貰ってって感じでいいな。
「アスカいいか……アスカ?」
作戦を伝えようと立ち止まっているアスカの側に駆け寄り、彼の表情を見て俺は目を見開いた。
「あ、ありえない。こ、こんなのって」
「アスカっアスカ! 落ち着け! どうしたんだよ!」
あんなに強気だったアスカが明らかに怖がっていた。
優秀な光魔師だとしてもまだまだ子供なんだ。
戦いを前にして怖がるのは仕方がないと思う。
だけど、この反応は異常じゃないか?
恐怖の領域を一つ超えてしまっているかのような。
「アスカっどうしたんだよ!」
「健太さん!」
「アイ? ……っ!?」
ああ。そういう事か。
恐怖の色に染まりきったアイの声で俺はやっとそれに気が付いた。
「ガルルルルルッ」
なんだよこれ。
俺たちは無数の狼によって完全に包囲されていた。
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