2-8 再会VIII 〜重いなー〜
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町長に見送られ、アスカと共にプルミアスを出た俺。
……あれ? 見送りが町長だけ?
「なあアスカ。お前これからドームに向かう事両親には行ってないのか?」
ドームまでは特に急いだりする事もなく、ゆっくりゆったりと徒歩だ。
狼の警戒はしてるけど、割と暇なため、ふと気になった事を質問してみた。
「ああ。ボク親いないから」
「え゛っ」
ごく普通の、涼しい顔をしながら隣で凄い事を言ったアスカの顔を思わず凝視してしまっていた。
「そんな顔すんなよ。珍しい話じゃないだろ?」
「……そう、だな」
魔獣という危険生物がはびこるこの世界じゃ珍しい事じゃないのか。
そうだよな。日常的に戦いがあるこの世界は、ある意味常に戦争の中みたいなもんだ。
戦争中にはたくさんの孤児が生まれてしまったっていうニュースを見た事がある。本当に辛い世界だ。
俺は戦争を経験してない。
元の世界じゃ考えた事なかったけど……そうか、なんか色々と考えさせられるな。
「今はどう生活してるんだ?」
「ボクは天才光魔師であるとおさんの一番弟子だぞ! 一人暮らしくらい余裕だ!」
「はいはい。で、本当は?」
「……町長のところでお世話になってます」
おや、もっと誤魔化されると思ってたけど、想像以上に素直だな。
「そういえばアスカって今何歳なんだ?」
「ボクか? ボクは今十歳だぞ」
十歳か。て事はえーと、小学四年生か? 誕生日が来てなかったらだけど。
……そっか。その若さで戦うのか……。なんかこう、辛いな。この世界の現実は。
「そういう健太はいくつなんだ?」
「俺か? 俺は十七だ」
「へえ。同い年なんだ」
「同い年? 誰のーー」
「っ健太! 魔獣の気配!」
「え?」
慌てて叫んだアスカの声に驚きながらも、俺は彼と背中を合わせて周囲を観察した。
「方向とかはわかるか?」
「ごめん。今の距離じゃまだわかんない」
なんでアスカが魔獣の気配に気が付いたのかは知らないけど、多分光魔師としての技術の一つだろうな。
探知魔法とかそんな感じの。
けどまあ、便利だって事に変わりはないな。
腰に差した鞘から刀を抜き、基本的な中段に構えた。……ん?
「っ見つけた! あっち!」
指を差しながら叫ぶアスカ。急いで目を向けると少しの間の後、カサカサと草むらが揺れた。
来るっ!
「ガアウッ!」
「アスカ下がれっ!」
突然草むらの中から弾丸のように跳び出てきた狼型の魔獣。
草むらが揺れる音だけが目印だったら、とても反応が間に合わなっただろうけど、残念だったな。
こっちにはアスカっていう探知能力のある奴がいるんだよ!
タイミングを合わせてその首斬り落としてーー
「ーーっ!?」
なんだこれっ、身体が重い!?
ダメだっ間に合わない!
慌てて身体を横に投げ出し、転がるようにして回避をした。
「くそっ、なんだこれ」
今の一瞬、明らかに身体が重く感じた。
違和感は刀を構えた時からあった。
やけに刀が重く感じたんだ。
普通に店で持った時には特に重いと感じなかった。
むしろドームにあった奴と比べたら少し軽くすら感じたんだ。
なのに、さっき構えた時、重かった。何故だ?
いや、今はそんな事に疑問符を浮かべてる場合じゃない。
アスカに下がれと言っておいて良かったな。
あいつに探知能力がある以上、不意打ちはない。
だからあらかじめ魔獣に遭遇したら基本は俺一人で戦い、アスカは下がるように言っていたんだ。
アスカと共に戦うのはこれが初戦だし、一応声出しをしといて本当に正解だったな。
「来いよワンコロ。今度こそぶった斬ってやるからよ!」
前回の戦いでこいつらに対して挑発は効果があるだろうって事はわかってる。
まあ、あの時はただの偶然だったって可能性もあるけど、まあいいや。
……いや、効果があるって証明になった。ワンコロは俺の方を向いていた。
「ガウガウっ!」
「なんだワンコロ。怒ってんのか? 汚ねぇよだれ垂らしやがってよ」
「ガアウッ!」
ほら来たっ予測通り!
だけど、なんか前に戦った時よりも速くないか?
やっぱし同じ種類の魔獣でも強さに差があるって事か?
前回のはレベル一、今回のはレベル三くらいか?
それとも、単純に……アイテム買い過ぎて身体が重いかだ。
「うおっ!」
やっぱし身体の反応が鈍いぞ!?
敵が速くなるだけならまだしも、俺が遅くなってるって事はやっぱし敵のレベルがどうこうじゃなくて、俺の身体が重いってか!?
「アスカ! お前は周囲の警戒に集中してろ!」
「だ、だけど!」
「そう心配そうにするなって、うおっ!?」
そりゃそんな顔になりますよねー。こんなザマじゃよ。
だけどここは年上のプライドみたいな何かを出してやろうじゃねえかよっ。
ギリギリ避ける事は出来るんだけど、カウンターとかは無理だ。間に合わない。
……さて、どうするか。
もう……これしかないか。
「健太!」
ああ、だめだな。この案は却下だ。
アスカにあんな顔させた上でそんな事したら、泣かせるかもしれない。
年上として年下を泣かせるなんてやっぱだめだよな。
俺の喉に向かって跳び掛かってくる狼野郎。
俺はそいつの額に向かって、
「おりゃっ!」
足を振り抜いた。
「よしっ」
刀が重くて攻撃が間に合わないなら刀を使わなきゃいいよな!
跳び掛かったところを蹴り返されて、可哀想な感じで地面をゴロゴロと転がる魔獣を見て、俺は小さくガッツポーズを決めた。
身体の反応がやっぱり鈍いな。玄関なんかで寝てたから身体痛めたか?
まあいいや、ともかくこれでキックなら間に合う事がわかったし、もっかい来いや魔獣っころ。
すぐに体制を直し、また跳び掛かろうとしている魔獣。
やっぱりただのキックじゃ飛ばす事は出来てもダメージにはなってないか。
まあ、首裏を棒で叩いても普通にしてた奴だもんな。
普通の動物にはない高い耐久力が厄介だねー。
「ガアウッ!」
だけど頭は野生動物以下だな。
毎度毎度狙うのは喉。飛び掛かりしか選択肢がないなら。
「もういっちょ!」
もっかい蹴り飛ばすのなんて超楽勝。
今度はガッツポーズなんて取らずにすぐに追いかけ、そして魔獣が体制を立て直すよりも早くその首に刀を突き刺した。
「……ふぅー。終わったぞー」
魔獣の身体が消えていくのを確認した後、アスカを呼ぶとなんか呆れた顔をしていた。
「……なんか、デタラメっていうか、随分と適当な戦い方だな」
「うるさい。剣が変わったからなのか知らないけど、どうも調子が出なくてな。本調子なら最初の飛び掛かりにカウンター決めて終いだったぞ」
「本当かー?」
「こいつ……」
完全に疑いの目のアスカ。
やばい勝ったというのにこのままでは年上の威厳がっ。
「おーい。何やってんだよー。早く行こうぜー」
「……はいはい」
まったく、子供は落ち着いがねえな。
「おいアスカっ後衛が前歩いてんじゃねえよ」
「大丈夫だって」
「……たくっ」
まあアスカには探知魔法があるから不意打ちされる事はないもんな。
☆ ★ ☆ ★
ドームから町に向かった時は狼二匹だったな。
あれからまだ一匹も出てきてないけど、目の前に建物が見え始めていた。
「よっしゃドームだ!」
とりあえず行きはクリアっと。
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