2-6 再会VI 〜腹が減ってはなんとやら〜
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「うわぁっ!」
慌てて飛び起きた俺はすぐに周囲をキョロキョロと見回した。
そして現在地を知り、ホッと安堵の息を漏らした。
「……なんだよ。やっぱり夢だったのかよ」
現在地、見覚えのある玄関。
仁美の家の玄関だ。
つまりさっきまで見ていた牢獄とか鑑賞部屋とかは夢だったって事だ。
何がまた転移してしまっただよ。確かに珍しい経験をしたのは確かだけど、それでも異世界転移なんてそう何度もするようなもんじゃないだろ。
はぁ、夢の中でこれが夢だって気が付けた事は初めてだったからな、心配して損した。いやほんと。
「……うわー、汗びっしょりじゃん」
俺は悪夢を見てうなされる子供か!
そういえば昨日は風呂に入ってないからな。ぐぬぬ、風呂が恋しい。
この世界には風呂って文化はあるのだろうか。
そういえば仁美って結構風呂好きだってような。もしも風呂って文化がなくても、あいつなら作ってそうだな。
ここって仁美の家なんだよな。だったら多分あるよな、風呂。
「……ごくり」
この廊下を進んで扉のどれかを開けば風呂場に続いているのかもしれないかの。くっ入りたい!
暖かいそこに早く入りたい!
「っダメだダメだ。家主がいないのに勝手に使うなんて人としてアウトだ」
頭をブンブンと振って邪念を振り払った後、俺はよっこいしょと立ち上がり、玄関から出た。
「ふうー。やっぱり太陽の光って大切だよなー」
既に偉大なる太陽殿はお空で我々を照らしてくれていた。
あー、光よーありがたなー。
そういえば吸血鬼って太陽の光がダメなんだっけ? どうでもいい話だな。
さてと、とりあえずは町長のところに行くべきだろうな。
思いっきり背伸びをした後、歩き出そうとしたところで俺はその人を見つけた。
「ふぉっふぉっふぉっ。疲れは取れたようじゃの。旅のお方や」
「はい」
軽く頭をさげなから返事をした瞬間、情けない事に俺のお腹からぐぅーっと明らかな要求音が響き渡ったいた。
「ふぉっふぉっふぉっ。腹が減っては戦は出来ぬと言うしの、ついてくるのじゃ」
「……はい、ありがとうございます」
やべえ、マジで恥ずかしい。
だけど、こんなにも天気の良い朝なんだ。お腹が空くのは仕方がない。っと言い訳をさせてくれ。
町長さんに連れてこられたのは町唯一の食事処[プルプル亭]……えーと、確かにこの町の名前がプルミアスだったけか?
プルミアスだからプルプル? 随分とゼリーが美味しそうな店の名前だな、うん。
こっちの料理がどんなものなのか知らないため、とりあえずシェフのおすすめを注文しておいた。
十分ほど待っていると愛嬌のあるウエイトレスさんが料理を持ってきた。
「へえ。唐揚げね」
「ふぉっふぉっふぉっ。この町は森の近くにあるからの。良質な肉が名物になっておるのじゃよ」
「へえそうなんですか」
どうして森の近くってのがその根拠になっているのかは知らん。
だけど町長さんがさぞ当然のように言ってきたから合わせた方がいいだろうな。
定食の内容はメインたる唐揚げと四種類ぐらいの葉が入ったサラダ。それからこれはかぼちゃのスープかな。そらから主食はありがたい事に米だ。
これは結構嬉しいね。日本人たるもの米を食えっ! てねっ。
とりあえずメインを一口。
「うおほっ」
サクッとした皮に包まれた肉を噛み締めた瞬間、口の中に広がる肉汁。
肉汁は火傷するくらいに熱く。これが決して作り置きなんかじゃない。作りたてだってのが良くわかった。
というか、
「うめーーっ!」
「ふぉっふぉっふぉっ。喜んで貰えたようで良かったわい」
楽しそうに笑っている町長の事は一回放置しておくとしよう。
それにしても、これ朝食なんだよな。朝食から唐揚げとか結構ハードなもの食べるのかって内心不安だったんだけど、地球で食べていた肉とはまるで違うんだ。
なんていうのかな、とてもジューシーなんだけど、さっぱりしてるというか、唐揚げのくせにむしろ朝食向きの味になっているというか……。
御託なんてなんでもいいんじゃい! とりあえずめっがさうまいんじゃー!
唐揚げにしてはさっぱりしてるとは言っても肉である事に変わりはない。
お米も口の中にかき込んでいるけど、そろそろサッパリしたいな。
そう思ってサラダに箸を伸ばした。
ん? 箸? ーーっ!? そういえばこれ箸じゃん!?
いやいや、そんな驚き今はどうでもいい。今は口の中に完全なるさっぱりを、シャキシャキを求めているのじゃー!
サラダにはドレッシングが掛かっていたけど。ふむ、イタリアンドレッシングに似た感じだな。
あ、ちなみにイタリアンドレッシングってのは別にイタリアで使われてるわけじゃないらしい。
向こうじゃオリーブオイルとかブラックペッパーとかを使うのが主らしいって話しをバイト先の先輩に聞いた事があるな。
チーズとかトマトソースとかワインとかイタリア関係についてやけに熱弁してたんだよなー。まあ、後から別の先輩に聞いた所、イタリアンのシェフを目指している人だったらしい。そりゃ詳しいよなって思ったな。
あ、ちなみに先輩はちゃんと成人してたぞ? って、イタリアンドレッシングから話が無駄に弾み過ぎたな。
さてと、ここの料理は大皿に唐揚げとサラダ、それこらお米も乗っているのだが、そろそろ一つだけぼっち待遇を受けているスープちゃんの相手をしてやるとするかね。
ぱっと見はかぼちゃスープっぽいんだけど……ここって異世界なんだよなー。仮にかぼちゃがあったとしても、名前は違うだろうなー。
「あの町長? これは一体なんのスープですかね?」
「どうやらかぼちゃスープのようじゃな」
ひとくち食べてからそう教えてくれる町長さん。うむ、優しい。
それにしても、そうか、こっちでもかぼちゃはかぼちゃなのか。
不変のかぼちゃか。ふふ。
全体的に味は良いな。
一度修学旅行で海外に行った事があるけど、どうも外国の料理は合わなかったんだよな。
だから異世界だってわかった時、密かに食事に関してそわそわしてたんだけど、心配するだけ無駄だったな。美味美味。
「あっ健太お前!」
「ん? よおアスカ。どうしたんだ?」
挙動不審な感じで入店したアスカは俺を見つけるなり大声を出していた。
こらこら近所迷惑だし人を指で指すもんじゃありませんよ!
「探したんだぞ!」
「そうかそうか。ご苦労さん」
「ふぉっふぉっふぉっ。どうじゃ、アスカも一緒に食べるかの?」
「町長のお誘いは嬉しいですけど今は健太!」
「な、なんだよ」
なんでお前はさっきから若干キレ気味なんだ?
いやー、最近の若者はキレ易くて怖いのう。
「もう明るくなったぞ! 早くドームに向かうぞ!」
「あー、はいはい」
「おいこら健太!」
「ふぉっふぉっふぉっ。アスカよ。店内ではお静かに、じゃぞ?」
「ぐぬぬぬぬ」
町長に言われて悔しそうにしながらも黙るアスカ。
「まあまあまずは座れ」
「ボクは一秒でも早くっ」
「どーどー。落ち着けアスカー。簡単な話だ。腹が減っては戦は出来ん」
「それはっ……そうだな」
町長のセリフを丸パクリしましたけど、何か?
どうやらアスカも落ち着いたみたいだな。素直に座ると俺と同じシェフのおすすめを頼んでいた。
「あの町長。雑貨屋とか道具屋みたいなのはどこにありますかね」
アスカの朝食が始まった頃にはこっちの食事は終わっていたため、ちょっと質問をする事にした。
死んだ後ドームで復活する際に傷が治るって事が分かってるけど、それでも薬草とか何かしらの回復アイテムは準備しておいた方がいいだろ。
今回はアスカもいるしな。後衛だから攻撃を受ける機会は少ないと思うけど、用心に越したことはない。
「ふぉっふぉっふぉっ。そうじゃの。ならばアスカの食事が終わり次第案内しようかの」
「わざわざありがとうございます」
座りながらも頭を下げながら思った事が一つ。
えーと町長さん? あなた、町長としてのお仕事はしなくて大丈夫なんですか?
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