2-3 再会III 〜心は難しい〜
ブックマーク登録本当にありがとうございます!
そう言って無い胸を張る幼女。あ、こいつはそもそも男だったな。胸があったら問題だ。
でだ。光魔師ってのがなんだか良くわからないけど、魔ってついてるし、それに旦那さんもそれらしいから、多分この世界独特の魔法使いの呼び方だろうな。
それにしてもだ。
「な、なんだよ!」
「おっと失礼」
ジッと見ていたら怒られた。そんなんで照れるなよ。男だろ?
ローブにとんがり帽子、手には先端にテニスボールくらいの大きさのガラス玉みたいなのがくっついてる棒、ロッドって奴か?
いやいや本当にザ・魔法使いって感じだな。うむ。
「君が光魔師って奴だって事はわかったけど、どんなジョブでもピンキリだろ? 君は戦えるのか?」
魔法使いだからといって、はいそうですかと連れて行くわけにはいかない。
世の中には剣士と名乗りながら剣を持たない奴とか、技名にキックがついてるくせにチェーンソウを振り回す奴だっているんだ。
えーとつまり、意味があるのは外見じゃなくて中身って事だ。
「戦える! 当たり前だ! ちょっと溜めが必要だけど破壊力は半端ないぞ!」
「へえ」
つまり後衛向きの火力職って事か。
まあ魔法使いって大体そんな感じだよな。一撃一撃は規格外に強いけど、詠唱時間とかが長かったり、防御力が低い、耐久力なんて紙レベル。
アスカがアイちゃんを助けに行かなかったのも前衛無しじゃ無理だからか。
その場の感情だけで後先考えずに特攻する事はないか。戦う者としては良い心がけだな。
……って、なんか俺偉そうだな。
狼を倒して調子乗っちゃってる?
一匹目に二度リトライしてるんだよなー。わらい、っと。
「わかった。その言葉、信じるぞ」
「おう!」
どんな攻撃方法があるのかとか、詠唱時間の長さとかは道中に聞けばいいよな。
さてと、さっそく出発……。
「お待ちくだされ旅のお方や」
さっそく森に向かって歩き出そうとしたところで呼び止められた。
振り返るとそこには仙人って肩書きが似合いそうなやけにお髭の長いお爺さんが立っていた。
ちなみに杖持ち。足腰が心配だ。
「町長!? だめですよ立っちゃ! ボク知ってるんですからねっ一昨日からぎっくり腰が悪化してるんでしょ!?」
ぎっくり腰っすか。俺は経験ないけど聞いたところによれば相当辛いらしいっすね。
お爺ちゃん。無理しないでー!
「ふぉっふぉっふぉっ。このジジィをそう年寄り扱いするでないわ。若いもんにはまだまだ負けておらんぞ」
髭をサワサワと伸ばしながら語る町長さん。どうして年寄りってこういう事を言いたがるんだろうな。
「えーと、旅のお方って俺の事ですよね? どうかしましたか?」
「ふぉっふぉっふぉっ。状況はアスカの顔を見ればわかる」
「そうですか。それならすぐにでも出発したいのですが……」
「ふぉっふぉっふぉっ。アイならば問題あるまい。あやつは良くドームに行っては閉じ込められておるからの」
……え、初犯じゃないのは知ってたけど、常習犯なのか?
……まさかやけに食料とかが充実していた理由って……いや、考えるのをよそう。結果としては良い事だし。
「重要なのはすぐに行く事ではなく、安全に連れ戻す事であろう? ならば今日は休み、明日の朝にでも向かえば良かろう」
「で、でも町長!」
「アスカや。お主がアイの事を大切に思っている事はよーくわかっておる。だからこそ今は休むべきじゃ」
「でも……」
「ふぉっふぉっふぉっ。お主は後衛じゃろう? 前衛である旅のお方の体力が減っていては困るのではないかの?」
そう言ってチラリとアイコンタクトを送ってくる町長さん。
……確かに今すぐ向かう必要って別にないんだよなー。
まあ、心優しいアイちゃんなら俺の事を心配してるだろうけど……それは結構辛いけど、だからと言って無理して急ぐ必要はない。
それに戦えると言ってもアスカは子供だ。町長さんが言っているように途中で俺のスタミナが切れてしまったら危険極まりない。
「そうですね。ならば一泊泊めさせてもらってよろしいですか?」
「ふぉっふぉっふぉっ。よろしよろし。最近の若者にしては随分と礼儀正しいもんだの。ふむ仁美を思い出すの」
仁美か。あいつらしいな。昔から目上に対する礼儀はちゃんとしてたからな。
「な、どうして今すぐいかないんだよ! ボクなら大丈夫だ!」
「アスーー」
「アスカ。俺の目を見ろ」
町長さんが何かを言おうとしていたけど悪いが重ねさせてもらった。
彼には同じ男として言いたい事があるからな。
こらそこっ! 町長さんも男だろとかいうツッコミは入りません!
今割とシリアスパートだから! 真剣だから!
え? 俺が台無しにしてる?
それはともかくとして、俺はしゃがんで頭の位置をアスカに合わせると、彼の目をジッと見つめた。
「アスカ。感情に振り回されるな」
「なっ、そんな事ない!」
「アスカ。お前はアイを助けたいんだろ?」
「そ、そうだ! ボクは一秒でも早く助けてやりたいんだ!」
「お前のその欲求を満たすためにアイを危険に晒しても良いって言うのか?」
「……え?」
唖然したように、意味がわからないと言いたげに、キョトンとした顔を見せるアスカ。
まだまだアスカは子供だ。俺だってまだまだ未成年で子供だけど、そんな子供よりも更に子供だ。
そんなアスカには難しい話かもしれない。酷な話かもしれない。だけど、アスカにはわかって欲しいんだ。
だから、俺は話した。
「ど、どういう」
「早さを求めるのは良い事だと思うぞ。だけどな、助ける側は万全の状態で行くべきだ。もちろん万全じゃないからと伸ばされた手を振り払うってのはアウトだ。だけど出来るなら、余裕があるなら助ける側は万全でいるべきなんだ。理由、わかるか?」
「……ミイラ取りがミイラになるから?」
まさかこんな小さな子がそんなことわざを知ってるとはな。驚いた。
というかそれって日本のことわざだろ? なんで同じことわざがこっちの世界にもあるんだよ。ご都合主義って奴か?
「その通り。助けに来た人がボロボロだったら不安になるだろ? それにアイは優しいから。きっとそんなになって助けても傷付けちゃうぞ?」
冷たい話になっちゃうけど、アイちゃんがドームから出られなくなったのは自業自得だ。
一人で勝手に行って勝手に帰れなくなった。
召喚士としての修行のため、背水の陣って奴だったとしてもそれは自業自得だ。
そんな事はアイちゃんが誰よりわかっているはずだ。
自業自得で出られなくなっているアイちゃん。もしもボロボロになってまってそんな自分を助けに来る人が来たら?
アイちゃんは優しい。絶対に傷付く。だから助けに行く俺たちは可能な限り無傷で行くべきなんだ。
「それにだ。そろそろ暗くなる。視界が悪くなればそれだけ不利だ。わかるだろ?」
「……ああ。そう……だな」
どうやらわかってくれたみたいだな。よかった。
町長さんの提案を受け入れた理由も九割がそれだ。
俺の体力はほとんど問題ない。
いやー、インドア系だったというのにこれほどスタミナがあるとは。
マラソンでもやればなかなかに良い記録を残せるんじゃないか? 足もそれなりに速いし。って、マラソンに足の速さは関係ないのか? そうでもないのか? わからん。
人間は夜目があまり効かない生き物だからな。それに比べて相手は狼。鼻だって効くだろうし、夜の戦闘は無理ゲーだ。
感想や評価、ブックマーク登録。作者のお気に入り登録なども是非よろしくお願いします。




