第5話 残滓
太陽は空高くにかかっていた。木々の梢に金色の光を注ぎ、その下で影は短くなり、風のままに揺れ踊っていた。暖かさは穏やかだったが、まだ戦いの代償を背負っているアートにとっては、一歩ごとに足取りが重くなっていった。
湿った土と、戦いで焼け焦げた葉の匂いが、空気に染みついていた。疲れ果てながらも決意を胸に、若い《ストライカー》は前へ進んだ。王国の北西、下水道の入り口を目指して森を抜けていく。そこで仲間たちと合流できるはずだった。
一歩進むごとに、下水道の腐臭が強くなっていった。アートは鼻の奥を刺す痛みを無視して、進み続けた。体はまだ疲労に悲鳴を上げていたが、それとせめぎ合う不安のほうが、強く声を上げていた。
下水処理区域は、ドームの内側に存在する未知の魔法を映し出すものだった。天然の石の段に沿って並ぶ七つの大きな池から成り、王国の汚水を集めたのち、伝説の《オーロラの鏡》の一つへと流し込んでいた。
オーロラには、そうした湖が三つあった。王国の住民たちは《中央の鏡》を憩いの場として使い、そこに入って体の汚れを落とし、くつろいでいた。浄化の作用を受けるのは有害なものだけで、生き物はまったく傷つかなかったからだ。それは《商業区》にあり、店々の間には多くの浴場が軒を連ねていた。
《北の鏡》は王の城だけが使うことを許されたもので、《北西の鏡》が、この下水道の区域にあるものだった。
澄みきった水の静かな魔法は、あらゆる汚れを打ち消していた。水は陽の光の下できらめき、空の輝きのような、柔らかな青と銀の色合いを放っていた。それは魅惑的であると同時に謎めいた現象で、あの湖は真に祝福されたもの――ドームが王国に与えた贈り物だという信仰を支えていた。
ようやくチームの仲間たちの姿が見えたとき、溜まっていた緊張がほどけていくのを感じた。見つけた二人はひどい有様だったが、それでも彼は笑みを浮かべた。《アーチャー》と《シールダー》は、処理池の汚水でずぶ濡れになっていた。二人は疲れ切った様子で、一刻も早く助けを求めようと、出口へ続く階段を急いで上っていた。
「ダイアナ!」
アートが叫んだ。
嬉しい驚きに満たされ、彼女は勢いよく振り返った。
「アート!……」
遠くにいる彼の姿を探した。
若い魔法使いは足を引きずりながら仲間たちのほうへ向かい、片手を上げて小さく振った。それを見た二人の顔に、彼の無事を喜ぶ笑みが浮かんだ。進むにつれて、《森林保護区》の濃い緑は途切れ、空が遮るものなく広がる、広大な開けた場所が現れた。王国を守るドームに濾された陽光が、辺りを強い輝きで包み、アートは目を細めずにはいられなかった。木々の薄暗がりと、目もくらむほどの明るさとの突然の落差が、その瞬間、いっそう彼の感覚を狂わせた。
ダイアナは友人のほうへ数歩、急ぎ足で近づいた。顔には安堵の笑みが浮かんでいた。濡れた服が地面に跡を残していく。近くまで来たところで、制服の状態を思い出し、ためらって鼻にしわを寄せた。自分の匂いを遮ろうとするかのように、両手を上げる。そして、つぶやいた。
「ん……距離を取ったほうがいいかも」
アートはただ笑い、彼女の心配を気にも留めず、ぐっと抱き寄せた。
「何言ってんだ!」
一瞬、若い《アーチャー》は顔を赤らめて固まったが、すぐに力を抜き、抱擁を返した。ほっとした吐息が漏れる。
「中毒で死んでも、私のせいじゃないからね」
金色の目をぐるりと回したが、かすかな笑みを隠そうともしなかった。
シルヴェインは長い赤髪を絞った。汚れた水が滴り落ちる中、真剣な顔でアートを見据えた。
「どうやって逃げたの?」
「リーダー・カエラが来て、助けてくれた」
「オリバーとケンノは?」
ダイアナが尋ねた。
「無事だ。もうすぐリーダーと一緒にここへ来るはずだ」
リーダーの実力と強さ、そして彼女につきまとう「鬼」という評判を知っていたので、二人は驚いた様子を見せなかった。
若い《シールダー》は空を見上げ、ほっと息をついた。
「ふぅ! あの人には、説明してもらうことが山ほどあるわね。じゃあ……みんなが来るまでに、この汚れをどうにかしてくる」
彼女は浄化の湖を指さした。
一同は長い階段を下り、《オーロラの鏡》の奥の区域まで歩いていった。そこではもう臭いも気にならず、水は清らかに澄みきっていた。
ダイアナは濃いライラック色のジャケットを脱ぎ、長い三つ編みをほどいた。シルヴェインは――待ちきれずに――湖へ飛び込んだ。染みついた汚れを落としたくて、必死だった。アートはブーツを水に浸したまま縁に腰を下ろし、青い空を見上げていた。
これまでの出来事を思い返した。
青い瞳の若い魔法使いはため息をついた。汗ばんだ肌に、そよ風が軽く触れるのを感じる。湖に映る空は遠く、まるで二つの現実を隔てているかのようだった。ずっと知っていた穏やかな世界と、今まさに彼を呑み込もうとしている混沌とを。
彼の頭は、攻撃が始まってから起きた出来事を、しつこく何度もたどり直していた。潜んでいた敵、自分たちがはまった罠、リーダーが打ち明けた脅迫……それだけでも頭痛の種としては十分すぎたが、さらにあの声――頭の中の奇妙な存在――があり、それがどんな戦いよりも彼を不安にさせていた。その声は思考の中で響いた。ときにはほとんど聞き取れないささやきとして、ときには切迫した呼びかけとして、理解できない感覚を帯びて。
気づかないうちに、時間が流れていった。しっかりとした足音が彼を現実へ引き戻し、目を上げると、カエラが三人の兵士を連れて近づいてくるのが見えた。
◇
一人目は、濃い髭をたくわえた、疑り深い目つきの屈強な男だった。《オーロラ軍》の標準制服を身につけている。補強されたチュニックの上に濃紺の長いマントを羽織ったもので、ルーンの縫い目には、魔法使いたちに受け継がれてきた伝統が表れていた。
布地と手袋に織り込まれた《アンセストラル・ルーン》は、ただの飾りではなかった――闇に包まれたときや、魔法を操るときには、かすかな光が秘術の紋様を走るのだ。衣服そのものが、マナの流れとともに呼吸していた。少ししわの寄った装いからは、見た目にあまりこだわらない人物であることがうかがえた。欠点はあっても、経験を感じさせる男だった。
その隣では、短い白髪まじりの髪の女が、表情一つ変えずに急ぎ足で歩いていた。《ウォリアー》用の旧式の標準制服を着ている。補強された布地の上に軽金属の分割式の鎧を重ねたもので、耐久性を損なうことなく動きやすさを確保していた。姿勢は揺るがず、手には幅広の刃を持つハルバードを握っている。その刃は陽の光を受けて輝いていた。柄には使い込まれた跡があり、鋭い眼差しと同じく、幾度となく戦いの熱の中に身を置いてきた者の経験を物語っていた。
最後の一人は、浅黒い肌に、注意深い目をした男だった。旧式の盾兵の鎧をまとっている。厚手の布地の上に、よく磨かれた鋼の板を重ねたものだ。背中には楕円形の盾を背負い、その表面には繊細な彫り込みが刻まれていた。片手で、まだ収めたままの持ち手を握っている。その慎重な構えは、必要とあらばいつでも動けることを示していた。準備はできていた。視線は周囲を正確に見極めていた。
その後ろから、アートのチームの《ソードマン》、オリバーが、苛立ちに満ちた顔でぶつぶつ言いながらついてきた。ケンノを肩に担いでいる。意識のない《サポート》の重さは、彼が快く受け入れたわけではない罰だった。
まだ湖の真ん中にいたシルヴェインは、彼らが近づいてくるのを見て、鼻を鳴らした。
「ちっ! 全部洗い流す時間もなかった……」
《アーチャー》のリーダーは確かな足取りでやって来て、注意深い視線で一行を見渡した。風が、湖の清らかな冷気に混じった、下水道特有の臭いを運んでくる。彼女は彼らの前で立ち止まり、深く息を吸った。
「全員、五体満足か?」
ぶっきらぼうな声だったが、そこには本物の心配がこもっていた。
オリバーは小さく鼻を鳴らして目を逸らした。顔の筋肉がこわばる。肩にかかるケンノの重さなど、内側で感じているものに比べれば何でもなかった。湖のほとりに座るアートは、最悪をすでにくぐり抜けた者の落ち着きで、彼を見ていた。それが何より彼を苛立たせた。
彼――オーロラの王子――は、敗れたのだ。文字どおりの意味でも、比喩の意味でも、敗北の重みを背負っていた。一方、若い《ストライカー》は、傷を負いながらも、揺るぎない態度を保っていた。拳が握りしめられる。屈辱が焼けつくようだった……!
ダイアナはその緊張に気づいたが、気にしないことにした。
「私たちは無事です!」
湿った薄紫の髪をひと房、顔から払いながら、彼女はあっさりと答えた。
リーダーが何か言う前に、シルヴェインが勢いよく水から立ち上がった。その顔は怒りに歪んでいた。
「来るのが遅すぎます!」
吐き捨てるように言い、目には火花が散っていた。
「もっと早く来てくれていれば、こんな目に遭わずに済んだのに!」
カエラは一瞬、その視線を受け止めた。表情は変わらなかったが、アートは彼女の瞳をよぎった影に気づいた。彼は真実を知っていた。リーダーがためらわざるを得なかったことを知っていた。家族の命がかかっていたのだ……そして今、彼女は弱さを見せるわけにはいかなかった。
「機械の装填に問題があった。発射が遅れた」
その言い訳は、あらかじめ嘘を練習していた者のように、自然に口から出た。
アートは何も言わなかった。ただ見ていた。
カエラは、何か反応を探るように、さりげなく彼へ視線を移した。何の反応もない! 彼は彼女を売るつもりはなかった。二人の間の沈黙は、どんな言葉よりも多くを語っていた。
彼女はいつもの態度に戻り、手袋を整え、肩をまっすぐにした。
「それはともかく、よくやった。誇りに思う!」
口調は少し柔らかくなったが、すぐにオリバーへちらりと目をやり、付け加えた。
「いくつか細かい点はあるがな……」
オリバーは歯を食いしばり、緊張で顎がこわばるのを感じた。その力で顎の筋肉が脈打つ――内側で燃える苛立ちの、無意識の表れだった。彼は唾を飲み込み、表情を崩さずにいたが、肩のこわばりと指のかすかな震えが、口をついて出そうな言葉を抑え込もうとする努力を物語っていた。その間にも、リーダーは続けた。
「今から基地へ戻る。あとで会議がある。下水道区域の出口を出て《農村地帯》を進んだ先で、《ヴェラロ》が待っている。時間を無駄にはできない」
アートは立ち上がり、カエラにほんの一瞬長く視線をとどめた。彼女はよく選んだ言葉の下に真実を埋めたが、彼は騙されなかった。そして、彼女の目に宿る抑えた光から、彼女もまたそれに気づいていると知った。
《アーチャー》のリーダーは、誰かが何か言う前に背を向け、兵士たちに動き出すよう合図した。出発の時だった。
◇
一行は黙ったまま、下水道の端まで進んだ。そこでは腐臭が薄れ始め、代わりに《農村地帯》の土の香りが漂ってきた。出口は丘の斜面に開いた広い穴で、背の高い草が風に揺れていた。かつては街の建造物に息苦しく覆われていた空が、今は広大な青い海のように広がり、それを遮るのは、オーロラを包む魔法のドームの輪郭だけだった。
目の前の景色は、素朴な一枚の絵のようだった。金色の小麦畑が波打ちながら地平線まで続き、その間に小さな耕作地や木造の小さな家々が点在していた。農夫たちが畑で働いている。
何本かの果樹がまばらな木陰を作り、小川が大地をくねって流れていた。陽の光を映している。穏やかな景色とは裏腹に、一行の間には緊張が漂っていた。
「やっと、きれいな空気……」
シルヴェインは、澄んだそよ風を吸い込もうとするかのように両腕を上げ、ぼやいた。
「今のうちに味わっておけ。家まではまだ遠い」
合流地点へ続く土の道に目を据えたまま、リーダーのカエラが言った。
オリバーは険しい顔で黙り込み、まだ自分の考えを反芻していた。ダイアナはアートを横目で見て、友人もまた物思いに沈んでいることに気づいた。彼女はため息をつき、ただ歩き続けた。
そのとき、低く脈打つような音が辺りを満たした。《ヴェラロ》が到着する前に、反発チューブが起動するときの独特の音だった。
丘の上、王国の縁に沿って並ぶ《監視塔》の一つから、《ヴェラロ》が一台、優雅に一行のほうへ降りてきた。地面からわずか数センチのところに浮かんでいる。
貨物や兵士の輸送に使われるこの浮遊車両は、魔導工学の驚異だった。全体が《黒アダマンタイト》で鍛えられ、その表面は光を反射せず、吸い込んでいた。底部に組み込まれた反発チューブは、操縦者のマナをエネルギーへ変換しながら薄い霧を吐き出し、ほとんど霊妙とも言える安定感で車体を宙に支えていた。側面には青みがかったルーンの彫り込みが刻まれ、穏やかなリズムで脈打ちながら、車体を浮かせる魔法の流れを示していた。
《ヴェラロ》が地面の上で安定すると、カエラは手を上げ、一行に乗り込むよう促した。
「さっさと行くぞ」
ぐずぐずする気など、さらさらなかった。
一人ずつ、一行は荷台に乗り込んだ。最後のアートは、乗る前に地平線へ目をやった。全員が落ち着くと、車両は静かに浮き上がり、野原を滑るように進み出した。一定の速度で《農村地帯》を進んでいく。
風が顔を切るように吹きつけたが、誰も何も言わなかった。沈黙は完全で、それを満たすのは魔法の反発が立てるかすかな唸りと、周囲の農村の暮らしの遠い音だけだった。それぞれが自分の思いに沈み、戦いの重さと、語られなかった真実の重さを背負っていた。




