第2話 最初の跳躍
壇上から、《アーチャー部隊》のリーダー、カエラ・ドレイヴェンは自分のチームを見つめていた。
彼女は、研ぎ澄まされた刃のように輝く深緑の瞳と、短い黒髪を持つ女性だった。髪には小さな金属製のリングがいくつも飾られ、その一つ一つがオーロラの闘技大会で勝利した戦いを表していた。軽装の鎧は肩と前腕が補強され、矢の速さを象徴する、翼を模した意匠が刻まれている。
手には、藍青色の《ルーン》が刻まれた黒い木製の弓を持っていた。それはまるで彼女自身の身体の一部だった。両腕と顔の左側には傷跡が刻まれ、不屈のベテランとしての雰囲気をさらに際立たせている。肩にはマフラーのように灰色の外套を巻き、そこには彼女の部隊の紋章――円の上で交差する矢――が付けられていた。腰には、接近戦が必要になった場合に備えて湾曲した短剣が収められている。
他のチームは全員、それぞれのリーダーに従って広間を後にしていた。しかしカエラだけは、壇上に残っていた。
「なんか変……ずっと黙ってる」
ダイアナが囁いた。
「何か待ってるんじゃないか?」
アートが答えた。
「私たちを……?」
「あなた、あの人の部隊でそれだけ長く働いてるんだから、もう慣れてると思ってた」
隣でシルヴェインが、会話しているところを見つからないよう黄色い瞳を伏せたまま言った。彼女は長い赤髪と褐色の肌を持つ《シールダー》だった。
「あんまり仲良くないんだよね……」
ダイアナはほとんど唇を動かさずに言った。
「静かにできないのか?」
ケンノが口を挟んだ。橙色の瞳は壇上に向けられている。彼は三大貴族の一つに生まれた《サポート》だった。茶色の髪に似合う金色の装飾が施された赤いローブを身につけ、貴族らしい外見を損なうことはなかった。
友人が会話に割って入った隙を利用し、長い金髪とルビー色の瞳を持つ《ソードマン》、オリバーは自分を目立たせる好機を見つけた。
「役立たずども、俺に任せろ!」
落ち着いた足取りで隊列を離れ、壇上へ近づいていく。周囲には誰もいないかのように、その目はリーダーだけに向けられていた。姿勢をすっと正し、自信に満ちた様子を見せる。
「ご命令は何でしょう、リーダー?」
彼はわずかに笑みを浮かべた。
カエラは何の反応も示さなかった。大広間を通り抜けた微かな風にさえ、彼女の外套は揺れなかった。沈黙がオリバーの頭の中に響き、自信に満ちていた表情が徐々に崩れていく。
「オリバー・エヴァーハート……マイナス1点」
カエラは冷たく言った。
「何だと? でも……」
王子はどう反応すればいいのかわからず、問い返した。常に自分の高貴な身分を思い起こさせるような称賛や特別扱いに慣れていた彼にとって、上官の態度はあまりにも対照的だった。
ダイアナは笑いを堪えようとした。
「そうすると思った」
チームの残りのメンバーも、アーチャーと同じ反応を見せないよう俯いた。それでも、堪えきれない笑い声が広間に響いた。
「隊列に戻れ、坊や!」
リーダーが命じた。
オリバーは軽蔑するように顎を上げたまま、列へ戻っていった。
やがて、鎧と床が触れ合う金属音を伴った足音が広間に響いた。銀色の制服を身につけ、胸元に兜を抱えた二人の兵士が入ってくる。その急ぎ足から、切迫していることは明らかだった。
「輸送手段の準備が整いました、リーダー!」
兵士の一人が報告した。
「待ちに待った時が来たぞ、《オーロラの戦士》たち!」
今回の任務で彼らの指揮を任されたリーダー、カエラがようやく口を開いた。
「お前たちがここにいる理由を、私に見せてみろ!」
彼女は壇上を降り、出口へ向かった。チームはすぐに隊列を組み、その後を追った。大広間と基地内のさまざまな区域を結ぶ、《白曜石》と《金色のルーン》で造られた長い廊下を進んでいく。
その途中で、彼らはそれらすべての場所を目にすることができた。宿舎、訓練場、工房と研究所、監視塔、医務室、図書館、リーダーたちの会議室、そして牢獄。
数分後、彼らは格納庫――輸送区域――へ到着し、そこに何台もの《ヴェラロ》が並んでいるのを目にした。
《ヴェラロ》は王国中で希少な物資を運搬するために使われる乗り物だった。一般的な荷馬車に似ているが、全体が《黒アダマンタイト》で造られ、車輪の代わりに反発チューブが取り付けられている。反発チューブは操縦者のマナを吸収してエネルギーへ変換し、車体を浮遊させていた。
そのうちの一台がチームの前で停止した。大量の荷物を運びながら安全性も確保できる、頑丈な造りになっている。幾重にも施された塗装によって、光を反射するのではなく吸収しているかのような、深く、ほとんど艶のない金属光沢を帯びていた。側面には青みを帯びた繊細なルーンの彫刻が施され、車両が起動するたびに微かに脈打つ。それは《マナの流れ》がエネルギーへ変換されていることを示していた。
反発チューブは《魔法浮揚場》を生み出していた。起動すると、凝縮されたマナの残滓である薄い霧を吐き出し、《ヴェラロ》を地面の上ではなく空中を滑るかのように、ゆっくりと浮遊させる。
車両の前部には強化された操縦室があり、操縦者がマナを中央機構へ直接送り込むための専用スペースが設けられていた。その中央機構には純粋な状態の《黒アダマンタイト》が使用され、この金属が持つ比類のない魔力吸収能力を最大限に活用していた。
「この中に乗っていくのか?」
ケンノが嫌そうな表情で尋ねた。
《ヴェラロ》が起動し、何羽もの鳥が同時に鋭く鳴くような唸り音を発した。車両が前進すると、その音は強い風へと変わり、《魔力流》が絶え間なく流れていた。
「いや。隠密性を考えれば理想的だが、時間がない」
リーダーのカエラが答えた。
「今日は新しいものを試す……」
そう言って、ルシアンのチームが集まっている方向を指差した。
《ヴェラロ》が道を空けると、チームは格納庫の反対側へ進んだ。そこには他の《ヴェラロ》が何台も停められた屋根付きの区画と、新装備の試験に使われる開けた場所があった。
近づくにつれ、全員が試験場に設置された構造物に驚いた。
《ヴェラロ》に使われているものと同じ反発チューブ――ただし、その十倍の大きさだった。大柄な《ウォリアー》一人が中に入れるほどの大きさがある。チューブには、成人の腕よりも太い円周を持つ銅製のケーブルが何本も接続されていた。それらは《黒アダマンタイト》の容器に蓄えられたエネルギーを反発チューブへ送る導体として機能していた。
大量のエネルギーを一度にチューブへ送り込むと、チューブは過熱し、接触しているものを極超音速で弾き飛ばす反応が起こる。
それは《フェリンガー反発効果》と呼ばれる現象だった。
発見者は、オーロラ科学部の著名な元科学者、エゼキエル・フェリンガー。王国における最大級の技術的進歩のいくつかを生み出した人物だった。
「あれ、マークか?」
アートは機械の中に見える人影と、友人である《ソードマン》の姿を重ね合わせようとした。
ヴヴヴヴヴッ! シュウウッ!!
唸り音が次第に大きくなり、「タービン」が力を増していく。金属の弾ける音が、発射前に魔力エネルギーが圧縮されていることを示していた。甲高い音はさらに強まり、脈打つ金属音の咆哮へと変わっていく。機械仕掛けの蜂の群れが激しさを増し、やがて鋭い遠吠えへと変わったかのようだった。
ドォォン!!
発射音が格納庫全体に響き渡った。遠吠えは低い咆哮へと変わる。まるで稲妻の到来を告げる雷鳴のようだった。
マルコスは極超音速で空へと射出された。その叫び声は、ドームの頂上へ向かって消えていくにつれて小さくなっていった。
「え?」
ダイアナは完全に困惑したように眉を上げた。
「一列に並べ。次はお前たちだ」
カエラは笑みを浮かべて言った。チームの恐怖と、新しいものを体験する興奮が入り混じった様子を見ることに、満足しているようだった。
「マム、これがどういう仕組みなのか、知ってるんですか?」
アートが尋ねた。
「『マム』なんて呼ぶな」
カエラは苛立った様子を見せた。
「私ではなく、その友達に聞け。父親がどうやってこの可愛いやつの開発を手伝ったのかをな」
そう付け加え、ダイアナを横目で見た。
「はぁ……! ほんと、この人は変わらないな……」
ダイアナが小声で呟いた。
その瞬間、激しい気分の悪さがアートの体を襲った。彼はよろめき、鋭い脈動が頭の中で炸裂した。こめかみに手を当て、増していく痛みを押さえ込もうとするかのように強く押さえた。視界がぼやけ、暗い斑点が目の前で踊る。低い耳鳴りが周囲の世界をかき消していった。その感覚は脈打つ波となり、内側から彼の意識を引っ掻いた。鋭い痛みが頭蓋を貫くと、アートは目を固く閉じ、歯を食いしばった。抑える間もなく、呻き声が漏れた。
「うああっ!」
「どうしたの、アート? 大丈夫?」
ダイアナが心配そうに近づいた。
「大丈夫。ただの厄介な頭痛だよ。たぶん、これの音のせいだ」
「そういえば……お父さんが《エア・キャノン》とかいうのを作ったって言ってた。たぶん、これのことだね」
再び機械が起動した。すでに充填されていた《黒アダマンタイト》の容器から反発チューブへエネルギーが送り込まれ、過負荷状態になる。太い銅製のケーブルが、発せられる甲高い音と同調するように震えていた。
ヴヴヴヴヴシュウウッ! ドォォン!!
「リーダー・ルシアンも行ったね」
褐色の肌を持つ《シールダー》、シルヴェインが言った。長い赤髪が、発射によって生じた風に揺れていた。
「誰が最初に行く?」
カエラはチームに笑みを向けた。
「俺は最後だ……リーダーは役目を果たさないとな」
オリバーが自信を装って言った。
「怖いのか?」
アートが挑発する。
「まずは下賤な者どもが試してから、王族が使うものだ」
シルヴェインが会話を遮るように一歩前へ出た。その行動に仲間たちは黙り込み、彼女をじっと見つめた。一方、リーダーは嬉しそうだった。
「よし! お前にはプラス1点だ、娘!」
褒められたことを喜びながら、シルヴェインは盾を背中のホルダーに固定し、そのままキャノンへ入った。この頃には、全員が機械の発する音にも慣れていた。
彼女が発射されたあと、グループの《サポート》は、高所恐怖症にもかかわらず、続いて自分から名乗り出るのが得策だと考えた。ケンノも同じように評価されることを期待して前へ出た。しかしリーダーは、わずか数秒でその期待を打ち砕いた。
「お前が名乗り出るとは思わなかった、兵士。見た目より強いようだな」
「ありがとうございます、点数を――え?」
少年は困惑し、口を開けたままカエラを見つめた。期待していた点数をもらえるという確認の言葉を待っていた。
「いつまで私を見てる? さっさとしろ! キャノンに入れ!」
その命令が若い《サポート》の頭に響いた。期待していた見返りのために恐怖を乗り越えていた彼だったが、機械へ近づくにつれ目を見開き、汗が止めどなく流れ始めた。
「えっと……あっ……そうだ……れ、礼儀を忘れてました。レディーファーストですよね! すみません、ダイアナ! ははっ!」
そう言って、彼はすぐにグループの近くまで戻ってきた。
「うっ……情けない!」
カエラは目元を手で覆いながら呟いた。
「命令だ! キャノンに入れ!」
肩を落としたケンノは、震える足を渋々チューブの中へ入れた。機械を起動させながら、オペレーターは目の前の光景にこみ上げた笑いを隠そうとしていた。
ヴヴヴヴヴシュウウッ! ドォォン!!
若い《サポート》は射出されると同時に叫び声を上げた。その声は空へ消えていくにつれて弱くなっていった。
「まだ叫び声が聞こえる気がする」
ダイアナは笑った。
「あの若者にもう1点つけるよう、私に思い出させてくれ。たぶん一番大きな声で叫んだのは彼だ……」
リーダーの声には、皮肉とも本気とも取れる響きがあった。
アートとダイアナは笑った。一方、オリバーは軽蔑するような態度を崩さず、腕を組んだまま横目で他の者たちを見ていた。
「次はお前だ、殿下!」
カエラが命じた。
「だが……」
「また1点失いたいのか?」
カエラは真剣な眼差しで遮った。
王子は、腰に下げた剣の柄へ左手を置き、剣をわずかに後ろへ傾けた。落ち着いた足取りとまっすぐな姿勢のまま、頭を高く上げ、顎をわずかに上向けて皆の前を通り過ぎる。家紋――金色の角を持つ黒い雄牛の顔――に付いた埃を払った。
十分に離れたところで、苛立った声で呟いた。
「何様のつもりだ?」
オリバーはキャノンへ入った。腕を組み、目を閉じる。発射されてから最後まで、一言も発しなかった。
ヴヴヴヴヴシュウウッ! ドォォン!!
「《発明家》!」
カエラはダイアナを見た。
「私は《アーチャー》です!」
ダイアナはキャノンへ向かいながら答えた。
「この人、一日たりとも私をからかわずにはいられないの?」
そう独り言を漏らした。
ダイアナは《ルミニス材》と《黒アダマンタイト》で作られた弓を手に取った。それは幼い頃、アートの母マリアンから贈られたものだった。チューブの中に無理なく収まるよう、両手で身体の前に持つ。弓の窓とグリップの近くには、こう刻まれていた。
「サラのプリンセスへ。愛を込めて、マリアン!」
機械の中に入り、オーロラの空へ射出される準備を整えたダイアナは、父親が作った装置の仕組みを理解しようと、素早く機構を観察した。
「……機械のオペレーターは魔法使いじゃないといけないんだ。たぶん《黒アダマンタイト》の容器にマナを溜めて、それからチューブ内の余剰エネルギーが《フェリンガー反発効果》を起こす……じゃあ着地は? もしかしてルート自体がもう魔法で――」
彼女は突然言葉を止めた。アートが再び頭に手を当て、明らかな痛みに歯を食いしばっていた。
「どうしたの、アート?」
《アーチャー》はそう声に出して呟いた直後、射出された。
友人が発射されたあとも、アートは気分の悪さを隠し続けた。顔には汗が浮かんでいたが、平静を装っている。リーダーに状態を悟られ、任務へ行くのを止められたくなかったからだ。
「さあ、若者! 急げ!」
カエラが急かした。
「……」
アートは額の汗を拭い、髪をかき上げた。自分を落ち着かせようとしていた。
キャノンへ入ると、あることに気づいた。
「変だな。何の説明もされてない。まさか……」
ヴヴヴヴヴシュウウッ! ドォォン!!
発射によって思考を遮られた。
若い《ストライカー》は、凄まじい速度で空へ向かって上昇していった。周囲の景色に視線を合わせることすらほとんどできない。やがて飛行の最高点へ達し、垂直方向の速度がほぼゼロになった。その瞬間、ようやく落ち着き、呼吸を整えることができた。
「なんて無茶苦茶な……!」
そのわずかな数秒間、アートは眼下の景色に目を奪われた。
王国全体を見渡すことができ、数メートル上にあるドームの半透明な表面が、彼の青い瞳に映り込んでいた。
外の世界へ目を向けた瞬間、時間そのものが止まったかのように感じた。
北にそびえる巨大な氷の山々。東で王国を取り囲む森。そして西に広がる、「果てしない」海の水平線。
それらを目にしたアートは自由になったような感覚を覚え、自分と広大な自然との間に存在する障壁を、ほんの一瞬だけ忘れた。
しかし南の乾燥した土地へ目を向けると、ドームを絶えず攻撃している生物たちの広大な野営地が見えた。
その瞬間、激しい頭痛とともに視界がぼやけた。
――それらを一つにして!
女性の声が響き、アートを現実へ引き戻した。
「何なんだ、これは……?」
アートは顔に手を当て、聞こえた声と頭の中で続く容赦のない痛みを本能的に結びつけた。
そのとき初めて、自分が自由落下していることに気づいた。
王国西部、《農村地帯》に近い《森林保護区》へ向かって落下していた。
そこは、オーロラの存続に欠かせない作物や家畜を世話する農民たちが暮らす場所だった。天然の泉と肥沃な土地が広がり、泥、木、石、葉だけで造られた簡素な家々が点在している。
「何だ?」
落下への恐怖から叫び声が漏れそうになった。しかし、自分の身体を赤みを帯びた力場が包み、加速を防いでいることに気づいた。
「レイモンドさんは本当にすごいな」
安堵し、わずかな笑みを浮かべた。
ほどなくして、背の高い木々が密生する森の中、任務地点へ到着した。
ゆっくりと地面へ着地すると、頭の痛みが消えていることに気づいた。それでも、耳にしたあの声のことが、まだ気になっていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
イラスト:Einzo 様
楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、また次のエピソードでお会いしましょう!




