第10話 防衛線
慌ただしい足音が家の木の床に響き、続いて、扉が騒々しく閉まる音がした。
「もうおしまい! 隊長に殺される!」
ダイアナが叫んだ。洗面所で顔を洗っていた。
アートは、チュニックを肩に引っかけ、起きてからきっかり二分といった顔で廊下を走ってきた。
「なんで先に起こしてくれなかったんだ!?」
彼は尋ねた。着ている服の袖と格闘している。
「本気で!? あと四時間ぐらいは休んで当然だと思ったのに!」
彼女は洗面所の扉を押し開け、リサが眠っている居間へ戻った。小さなエルフの少女は、開いた本を抱きしめたまま、床で丸くなっていた。ページの上に、よだれが一滴垂れている。
「お嬢ちゃん! 起きて!」
ダイアナは言った。返事がないので、少女を軽く揺すった。
「耳のとがった寝袋みたい!」
リサは小さく呻き、瞬きをした。朝の金色の光がリネンのカーテンを抜け、彼女の青白い肌に降り注いでいた。金色の髪の一本一本が、液体の銀でできているかのように光を反射した。胸の上には、小さなエメラルドのついた細い金のネックレスがあり、彼女とともに「目覚める」かのように、やわらかく輝いた。
「ダ、ダイアナ……?」
「やあ!」
少女は眉をひそめ――混乱した様子で――それから手で顔をこすった。ダイアナは興味深そうに彼女を見つめた。
「セレアン……別の日?」
リサは尋ねた。自分の言語と人間の言葉が混ざっていた。
「もう……別の日?」
「あー、そうだね……ただ……私たちの言葉で話してみて、いい?」
リサは深く息を吸い、魔法の公式を思い出そうとする人のように集中した。
「は、は、は……腹ぺこ?」
「そう!」
ダイアナは満足そうに笑った。
「『腹ぺこ』なら、簡単に解決できるよ!」
台所で、彼女はテーブルの上の紙や本をいくつかどかし、ほかほかのパンを皿にのせ、椅子を引いた。
「ここに座って! 床より座り心地がいいよ、ほんとに!」
リサは試みたが、短い脚はあまり役に立たなかった。やっとのことで椅子の端に腰かけ、腕を伸ばしたが、うまくいかない。ため息をついて床へ降り、そのままそこで食べ始めた。《アーチャー》は目をぐるりと回した。
そのとき、アートが制服姿で現れた。体にぴったりした黒いチュニック。肩と袖には金属のプレートが光り、腰の帯には短剣がしっかりと留められている。
「よし。行こうか?」
「行こう……ぐちゃぐちゃだけど、行こう」
ダイアナは髪を、慌ただしく一つに結んだ。
出る前に、アートは少女の前にしゃがんだ。言った。
「リサ、よく聞いて。家、から、出ない。わかった?」
少女は一秒ほど黙っていた。それから、頷き、誇らしげに答えた。
「わかった!」
「おっ! 発音、完璧!」
ダイアナは少女にウインクをした。それから、友人にささやいた。
「ほんとに、ここに一人にしておいていいのかな?」
「選択肢はない。連れていくのは無理だ……それに、本も食べ物もたっぷりある。俺たちが戻るまでの時間つぶしになるさ」
二人は走った。外に出ると、アートは用心深く家の扉を閉め、本当に鍵がかかっているか確かめた。朝のアドレナリンがまだ脈打ち、新しい日常を生きているような奇妙な感覚を抱えたまま、二人は出発した。
(……)
ブーツが石の地面を打つ音が、力強く響いていた。
二人組は急ぎ足で《貴族区》の通りを進んでいた。オーロラの上空にある魔法のドームに映し出された青空は、二人とは対照的だった。この地区の優雅な建物が落とす影は、時の経過――そして遅刻――を告げていた。
磨き上げられた《白曜石》の柱と、《ルミニス材》の繊細な仕上げで建てられた住宅は、ほとんど幻のような輝きで陽光を反射していた。広く、美しい枠のついた窓は、澄んだ空を生きた絵画のように切り取り、小さな花の庭が入口の両脇に並んで、ほのかな香りを放ち、朝を満たしていた。
「いつものリンゴ、持ってくるの忘れた」
アートがぼやいた。
「言わないでよ、お腹ぺこぺこで死にそう」
《オーロラ軍》の基地の手前、最後の角を曲がったところで、二基の《監視塔》が見えた。高く、左右対称で、周囲を精密に映している。頂上では、王国の旗が静かにはためき、オーロラの紋章を掲げていた。
基地の長い廊下を抜け、宿舎のエリアに入ると、二人はいつもの秩序と規律を期待していたが、正反対のものに出くわした。広間の中央には二つの即席のテーブルがあり、歪んだ板を木箱に載せて急ごしらえしたものだった。兵士の一団が大声で笑いながら、使い込まれた木の表面にカードを叩きつけている。ボタンやルーンのかけらまで混じった即席のコインの山が、熱狂した叫び声とともに、一手ごとに持ち主を変えていた。
兵士の一人は鎧の胸当てを外しており、それは今、腰に立てかけられていた。汗でぐっしょり濡れたシャツが露わになっている。彼は歯の間から口笛を吹いた。他の者たちに、もっと高く賭けろとけしかけていた。
別の一人は、木の梁にもたれ、リンゴをかじりながら、口をいっぱいにしたまま勝負にコメントしていた。
湿った木と汗の匂いが空気に漂い、まるで場所全体が、過酷な一日のあとで汗をかいているかのようだった。《オーロラ軍》らしい簡素さで造られた壁は、あの馬鹿騒ぎを前に居心地が悪そうで、完全に無視されていた。いくつかの兜が隅に放り出され、まるで制服が責任とともに脇に置かれたかのようだった。
「この勝負に勝ったら、今日は俺と一緒に鳥を観察しに行ってもらうぞ」
マルコスは言った。《ソードマン》は自信ありげな笑みを浮かべた。
「夢でも見てろ」
ハロルドが言い返した。《サポート》はカードを目の高さに掲げた。そんな趣味に付き合うことを想像するだけで、退屈そうだった。
シルヴェインは壁の一つに寄りかかり、腕を組んで眺めていた。褐色の肌に、長い赤みがかった髪の《シールダー》は、ため息をついた。
「どっちがひどいか、わからない……次は私の番」
隣では、メンナが短剣を指の間で回していた。武器を自分の体の延長として扱う者の熟練ぶりで。
「ハロルド! 勝ったら、あとで一杯おごるよ」
彼女は言い、槍に寄りかかって、挑発的な笑みを浮かべた。若い《ランサー》は、雪のように白い長い髪と、空のように青い瞳を持っていた。完全に銀色の鎧を身につけ、胸には三角形に並んだ三つの青いルーンが刻まれている。
混沌の中へ入りながら、アートとダイアナは顔を見合わせ、何事もなく済むことを願った。
「監督官はどこだ?」
アートは息を切らして、つぶやいた。
ダイアナは髪を後ろに撫でつけ、息を整えようとした。
「混ざればいいんだよ、遅刻には気づかれないかも」
期待に反して、一つの声が二人を現実に引き戻した。
「三つ編みのないダイアナ? 王国の鳥並みに珍しいな……どこにいたんだ?」
ハロルドは、カードから目を離さずに問いかけた。
アートは、落胆しているダイアナの方を向いた。
「『遅刻には気づかれないかも』……」
彼は真似をした。
「今日、《防衛線》で誰かがお前たちのことを訊いてたぞ。笑えるのは、説教を食らったのが俺とマルコスだったってことだ……」
ハロルドは続けた。
「庇ってくれて助かった」
「『助かった』? ちゃんとした理由があるんだろうな」
「落ち着けよ、ハロルド!」
マルコスが遮った。
「お前がメンナと姿を消してたとき、俺たちはどこにいたのか訊かなかっただろ」
彼は笑った。
「黙れ、この巨大オーガ!」
メンナは、顔を赤くする彼を見て笑い転げた。非難の意を込めて、シルヴェインはゆっくりと首を振り、腕を組みながら言った。
「私は馬鹿どもと仕事してるのね!」
いつもの場所だった。ダイアナはため息をつき、その空気に乗った。一歩前へ出て両手を上げ、降参するように言った。
「有罪です! 私たちは……都会の退屈に対する極秘任務中でした」
ドン!
重く鈍い、規則的な足音が広間に響き渡り、石の床に戦太鼓のように反響した。兵士たちの笑い声は、喉の奥で消えた。何人かが慌てて立ち上がり、椅子が軋んだ。他の者は、見えない糸に背骨を引かれたかのように、背筋を伸ばした。
エドガーが到着したのだ。
《オーロラ軍》の隊長は、声を荒げずとも敬意を命じることができた。その存在だけで十分だった。冷たい瞳が、一人ひとりの顔を的確に見渡した。数秒のうちに、騒音は止んだ。
「いつから賭博場になったんだ」
エドガーは言った。声は揺るぎなく、間を取っていた。
「それとも、休息が《オーロラ軍》の朝の日課になったのか」
マルコスとハロルドは、急いでカードをかき集めた。シルヴェインはただため息をついた。こうなることは、予想していたのだ。
「全員、持ち場に戻れ! 今すぐだ!」
乾いた口調は、ためらう余地を残さなかった。アートとダイアナは他の者に紛れてこっそり抜け出そうとしたが、エドガーが指をさして二人を呼び止めた。
「アート・ハマー! ダイアナ・プラウス! こっちへ来い、今すぐだ!」
二人は顔を見合わせ、隊長のもとへ歩いた。アートは視線を合わせるのを避け、ダイアナは無理に笑顔を作った。
二人は歩いた。
エドガーは二人を、隣の簡素な部屋へ連れていった。石の壁は、触れると冷たかった。中央には、使い込まれた跡のある木のテーブルがあった。箒やバケツが、隅に立てかけられている。
「お前たち二人は?」
彼は灰色の髪に手を通して整えてから、腕を組んだ。
「昇進したばかりで、好きな時間に来ていいと思ってるのか? ここが自分たちの家になったとでも? お前たちのことは知っているが、こんな態度は予想していなかった」
彼はダイアナをまっすぐ見た。
「お前はレイモンド・プラウスの娘だ。オーロラ最高の科学者の一人の」
「そういうわけじゃなくて、俺たちは……」
アートが言いかけたが、エドガーが眉を上げ、彼を即座に黙らせた。
「そしてお前、アートは、ギデオン・ハマーの息子だ。我々の最も偉大な魔法使い。いつかドームが破られたときの、最後の希望だ」
「でもドームは決して……」
「静粛に!」
エドガーは鋭く遮った。
「時間を無駄にするなら、王国を守るために使え。お前たちは南の《防衛線》に配置された。行け!」
二人は一瞬頭を下げ、声を揃えて答えた。
「はい、隊長!」
エドガーはため息をついた。一瞬、傷だらけのテーブルへ視線を落とした。木の傷跡が、その職務の重みが決して肩から降りないことを思い出させるかのように。
「待て! お前たちが何を抱えているか、わかっている……つまり、お前の母親のことだ」
彼はアートをまっすぐ見た。その眼差しは厳しさが薄れ、より人間的だった。
「ここで、魔法の盾の下に閉じ込められ、あの生き物たちが襲ってくるのをただ見ているのは、楽なことではないだろう。ほかの問題もあるしな……」
若者たちは、隊長が漏らした本音に驚いた。そんな言葉を聞くとは、思っていなかったのだ。どう反応していいかわからず、二人は黙って頷き、部屋を出た。
数歩進んでようやく、胸に詰まっていた息を吐き出し、二人並んで南の《防衛線》へ向かった。
(……)
午後の太陽が空にかかる頃、二人は《貴族区》の輝く建物を後にした。
南へ進むにつれ、《白曜石》の邸宅の輝きは、くたびれた木と古い煉瓦の質素な家々へと変わっていった。整った歩道は踏み固められた土の地面に譲り、空気は湿った葉の匂いと、野花のひそやかな香りで満ちた。
《森林保護区》が、それぞれの地域をさりげなく隔てていた。高い木々が不規則な影を落とし、二つの世界の間の静かな移行のようだった。
「マークが聞いたら、《アウリヴェント》の鳴き声を聞きたがるだろうな」
ダイアナは樹冠を見上げて言った。
最初のうちは、すべてがまだ整った姿を保っていた――都会の化粧のように――きれいに塗られた街灯、即席の庭、近所の目に見守られて遊ぶ子どもたち。
家と庭の影の間を、何かの影がすり抜けた。小さく、素早く、ゴミ箱が倒れる音と、遠くで呼ぶ子どもの声を伴って。
「アート、早く! 走って!」
そして、彼らは消えた。アートとダイアナは戸惑い、しばし足を止めた。
「今の、聞こえた?」
彼は尋ねた。今度は声が頭の中だけのものではないと、確かめるように。
「聞こえた。でも……ま、いいや。子どもは子どもだし」
二人は道を進んだ。雰囲気は徐々に変わっていった。暖炉の煙、揚げ物の匂い、埃が空気を支配した。ざわめきが大きくなった。子どもたちが路地を駆け回り、商人たちが声を張り上げて品を売り、急ぎ足の大人たちが端切れで作った籠を提げて通り過ぎた。
ぐぅぅぅぅぅぅ!
ダイアナは、空腹が恥ずかしくなって、お腹に手を当てた。
「こっち来て」
アートは微笑みながら彼女を引っ張って言った。
「このあたりの路地に新しい甘いパンがあるって聞いたんだ。魔法みたいに美味しいらしい」
奥の路地へ入り込むにつれ、仮面は剥がれ落ちていった。地面は凸凹で汚れ、建物は狭く、傾いていた。ただ頑固さだけで、時の流れに耐えてきたのだ。
古い金属の屋台は、二軒の廃屋の間に押し込まれた即席の長方形で、まるで隠れようとしているかのようだった。錆びた板が壁を成し、曲がった釘とテープで補修されている。かつては白かった日よけは、今や脂と埃で汚れて垂れ下がり、午後の乾いた風にかすかにはためいていた。
中では、積み重ねた木箱が即席のカウンターになっていた。その上には、古くなったパンが白い布の下に置かれ、かつての盛りを過ぎた機械式の秤の隣にあった。それでも、発酵した生地の匂いは心地よかった。
ダイアナは鼻にしわを寄せた。
「新しくて魔法みたい、ねえ?」
彼女は挑発した。
「でも、これの店主はどこ?」
アートが答える前に、屋台の裏からしわがれた声が飛び出した。
「出ていけと言ったろう、このガキども! ごほん! 今すぐそれを放せ!」
乾いた打撃音と、金属板がぶつかる音がそれに続いた。二人は反射的に顔を見合わせ、一秒後には、急いで屋台の裏へ回った。
裏手では、腰の曲がった老人が、痩せこけた少女の腕を強く掴んでいた。少女の金色の髪は乱れ、ワンピースは棒のような体にはだぶだぶすぎた。もがくたびに裾から落ちるパンを、ほとんど隠せていない。
「逃げて、アート!」
彼女は声を詰まらせて叫んだ。
「行って! ママのところへ持っていって!」
目を見開いた少年が、数歩先でためらっていた。半端に切られたパンの塊を握りしめて。
「ごほん! もう戻ってくるなと言っただろう、このガキども!」
老人は咳払いして、少女の腕を揺さぶった。
「何でもタダだと思ってるのか?」
「放せ! 今すぐ!」
若い魔法使いが叫んだ。指の間で魔力が火花を散らした。
老人は少女を掴んだまま振り向いたが、二人の制服を見て固まった。ダイアナはすでに弓を半分構えており、険しい表情で、軽蔑を隠そうともしなかった。
「言っただろ……放せ!」
「ごほん! 《オーロラ軍》か? ここはお前たちの管轄じゃない」
老人は少女を放しながら言い返した。
「あいつらは俺から盗んでるんだ。ごほん! 《王国衛兵》を呼べ!」
「嘘!」
少女は目を潤ませて叫んだ。
「私たちは、余ったものを取っただけ! 全部ゴミ箱に捨てるつもりだったのに!」
少年は、おずおずと近づいた。妹をかばおうとするかのように。
「やめて、お願い。僕をまた殴ってもいいから、この子だけは……」
アートは深く息を吸い、二人のもとへ歩いた。少女は反射的に後ずさったが、青年の差し出された手を見て落ち着いた。
「大丈夫。誰も誰かを殴ったりしない。二人の名前は?」
「私の名前はライラで、この子はアーサー」
「ああ、だからアートって呼んでるのか……」
ダイアナはかがんで、落ちたパンを拾った。
「ごほん! こんなガキどもの話に乗るな。一日中走り回って、盗んでばかりだ」
「二度と彼らに触るな……ほら! 百エルド……あんたの屋台の損害分だ」
アートは、それを老人の手に落とした。
「これで、子どもたちのパンも何個か賄える……それと、俺の友達に二つ」
「これだけあれば、四十個は買えるぞ!」
老人は叫んだ。
「ごほん! 釣りを取ってこよう」
「いらない。残りは、この子たちのために払ったことにしてくれ。毎日、彼らが少しずつ取りに来る。そして、また手を出したら……」
アートの指に炎が踊った。
「別の話をすることになる」
老人は後ずさり、怯えながら屋台へ入っていき、何かをつぶやいた。最悪は過ぎた。幼い二人は、喜んで近づいてきた。
「ありがとう、お兄さん! 大きくなったら、お兄さんみたいになりたい!」
少年が言った。
「私は、あの人みたいになりたい! でっかい弓を持って!」
妹が答えた。
ダイアナは笑った。パンを胸に抱えて、家へ跳ねるように帰る二人を見るのは嬉しかったが、あの現実が残した苦い味は消えなかった。
「自分の分、食べないの?」
彼女は尋ねた。
「食べていいよ。腹減ってない」
ダイアナは一瞬、咀嚼を止めた。
「いつか、これが変わると思う?」
アートはなかなか答えなかった。路地へ消えていく二人の兄妹を、目で追った。
「わからない……でも、俺たちがここにいる間は、やってみよう」
(……)
二人は旅を続けた。
最後の路地を抜けて、《監視塔》17へ向かった。《黒アダマンタイト》の建造物は、大地に突き立てられた槍のようにそびえ、高慢で冷たかった。塔は地上から約二十メートルの高さがあり、基部は幅約八メートルの六角形だった。遠くからは街のかすかな灯りを反射し、近くで見ると、長年の使用による傷みが目立った。
風はそこのほうが強かった。錆とカビの匂いがした――南の端に特有の、混ざった匂いだ。塔の頂上では、何人かの兵士が重いマントで寒さをしのぎ、他の者は、地平線の歪んだ先へ虚ろな目を向けながら、刃を研いでいた。下の障壁の根元では、いつもの光景が広がっていた。大きすぎて、自分たちが通れないと理解できないハエのように、生き物たちが魔法の表面にぶつかっていた。
爪が魔法の障壁を滑り、空中に青みがかった火花の軌跡を残した。乾いた衝撃音が響いた。
ドスン!
半透明の表面が、石を投げ込まれた水のように波打った。向こう側から、くぐもった咆哮が聞こえた。荒々しく、苛立っている。一体の怪物が、怒り狂った牛のように頭を低くして全力で突進した。頭蓋骨がドームにぶつかる鈍い音が数秒間響き、その後、重い体が仰向けに倒れ、手足が衝撃を受けた虫のように、一瞬宙で震えた。
「頭の良さは、奴らの強みじゃないな」
兵士の一人が、干し肉をかじりながら言った。
「石のほうがまだ統率が取れてる」
別の兵士が、顎を掻きながら答えた。
「少なくとも今日は、あのエルフどもじゃない……あの虚ろな目、ぞっとするんだ」
一人の魔法使いが、確かな足取りで近づいてきた。黒いチュニックが、唇から漏れた笑いのリズムに合わせて揺れる。両脇を刈り込み、頭頂は短くした橙色の髪が、爆発寸前の抑えられた炎のような印象を与えた。彼女は兵士たちの隣で立ち止まり、瞳は嘲りに輝いていた。
「ビビってんの、え? それなら、別の仕事を探したほうがいいんじゃない……花売りとか、どう?」
彼女は手で髪をかき上げた。
「でも冷静にね。いつかドームが落ちたら、二人の赤ちゃんは私が守ってあげる……」
アートとダイアナは、《防衛線》の持ち場についた。半透明の障壁の向こうの地平線は、今や二人の責任だった。




