第9話 外から来たもの
湿った暗いトンネルの中で、松明は勢いを失い、辺りを照らすのはルーンの弱い光だけになっていた。アートとダイアナは、気を失った耳の尖った子どもの前に、立ち尽くしていた。
「エルフ? どうしてこんな……?」
若い《アーチャー》が尋ねた。
若い魔法使いは黙ったまま、青い瞳をその小さな生き物に釘づけにしていた。目の前にあるものは、これまでずっと本や物語……そしてドームの周りをうろつく脅威の中にしか存在しないものだった。それが今、現実にここにいる。外の世界から来た生き物が。
「どうやってドームを越えてきたの!?」
ダイアナが言った。自分の考えを声に出していることに、もう気づいていなかった。
エルフは、まばたきほどの一瞬で、びくりと目を覚ました。
乱れた息が唇から漏れ、心が追いつくより先に体が反応した。筋肉がこわばり、現実にしがみつこうとするかのように、指が冷たい床を握りしめた。
彼女は眉をひそめ、薄暗さに目を慣らそうとした。その場の弱い光が、紫色の瞳に映っていた。湿った泥の匂いと、規則正しく滴る水の音が狭い空間に響き、重苦しい空気を彼女に知らせた。自分がどこにいるのかに気づいて、呼吸が速くなった。だが、どうやってここに来たのだろう?
そのとき、目の前の二つの人影に気づいた。
アートとダイアナが彼女を見ていた。食い入るように見つめていた。若い魔法使いは心配そうにしていたが、友人のほうは口を半開きにしたまま、身動き一つしなかった。それに反応して、小さなエルフは首にかけた首飾りを強く握りしめ、身を縮めた。
「ナイ……イ・サラン?」
彼女の声は震えていた。エルフの言葉だった。
(ここはどこ?)
アートは彼女に手を伸ばそうと身を乗り出したが、その急な動きが彼女を怯えさせた。目に涙がたまった。その恐怖も無理はなかった。
ダイアナは目をぐるりと回し、肘で彼を小突いた。
「バカ!」
彼女はささやき、彼を軽く後ろへ引っぱった。
「あの子が怖がりすぎてるの、わからないの!?」
「じゃあ、どうしろっていうんだ? 何を言ってるのかすらわからないんだぞ。たぶん、エルフの言葉だと思う」
「たぶん、ね?」
ダイアナは皮肉っぽい目つきをした。
アートはため息をつき、何か解決策を考えようとした。いくつもの可能性の間で迷った末に、尋ねた。
「お前の考えは?」
「この子をここから連れ出さなきゃ。でも問題は……どこへ?」
アートは顎に手を当てた。その姿勢は、計画――少なくともその一部――があることを示していた。
「そうだな。俺の家に行こう。あそこなら安全だ……次のことは、それから考えよう」
「ああもう! どうやら完全に頭がおかしくなったみたいね……」
ダイアナは首を横に振りながら答えた。
若い魔法使いは、これ以上怖がらせないように、ゆっくりと身をかがめた。
「俺たちは、助けに来たんだ」
彼は落ち着いた身振りで、間を置きながら話した。
「君の面倒を見るよ」
謎めいた子どもは、彼の動きを見つめていた。戸惑い、唇を震わせながら。答えたいのに、ふさわしい言葉が見つからない。少女の声は揺らぎながらも、はっきりと響いた。
「だい……じょうぶ……あなたたちと、行く」
アートとダイアナは目を見開いた。一瞬、暗いトンネルが二人を別の世界へ連れていったかのようだった。
「ええええっ!?」
二人は声をそろえて叫んだ。
エルフは、二人がなぜそんなに驚いているのかわからず、彼らを見つめた。アートは咳払いをして、先に我に返った。
「俺たちの言葉が話せるのか?」
彼女はためらった。小さな指は、まだ首飾りを握っていた。視線を落としてから、つぶやいた。
「わたし……は……リサ」
ダイアナはため息をつき、腕を組んだ。
「少なくとも、名前はわかったね。あとは外に出る前に、この子を隠さないと。誰かに街を歩いてるところを見られたら、大騒ぎになる」
彼女は考え込みながら、辺りを見回した。
「何か探してくる。運がよければ、開いてる店が見つかるかも。二人ともここにいて、動かないでね」
アートが答える前に、彼女はもうトンネルから姿を消していた。マントを探しに行ったのだ。
再び静寂が支配した。リサは辺りを見回し、自分がどこにいるのかをもっとよく理解しようとした。トンネルの壁は石でできていて、苔に覆われ、古いひび割れがあちこちに走っていた。湿気が空気に染みつき、息を吸うたびに、少しずつ重くなるようだった。
アートはいくつかの松明に火を灯し直した。揺らめく光が、壁に幻想的な影を映し出した。そのとき、リサが何かを言った。ほとんど聞き取れないほどの声で。
「だ……だい、い……第七の《アーティファクト》」
若者はすぐに彼女のほうを振り向いた。
「何だって? 今、何て言った?」
彼女は首飾りを胸に押し当て、目を逸らした。まるで禁じられたことを口にしてしまったかのように、身を縮めていた。アートは眉をひそめ、自分に向かって繰り返した。
「第七の《アーティファクト》……」
沈黙が長く続いた。その名は彼の頭の中で響き、母のうわごとを呼び起こした――同じ言葉。《アーティファクト》。背筋を寒気が走った。数分後、少女にもう一度尋ねようと決めたとき、ダイアナが、すり切れたマントを手にして戻ってきた。
「手に入れた! この子に着せて、早くここを出よう」
アートは素早くエルフにマントをかぶせ、耳がちゃんと隠れているか確かめた。小さな子がすっぽりと覆われているのを見て、ダイアナは微笑んだ。
「これでどこにでもいる村娘みたいに見える。これなら目立たないね。行こう!」
リサはただ頷き、布を体に引き寄せた。そして、おずおずとした足取りで《アーチャー》のあとについていった。
「信じられる? あのぼったくり野郎、こんな古いマントで二十エルドも取ったのよ!?」
出口へ向かって歩きながら、《アーチャー》が言った。
「もうこの子に悪い言葉を教えるつもりか?」
アートは、いたずらっぽい笑みを浮かべてからかった。
二人は大笑いした。小さなエルフは、会話を理解しようと、じっと見つめていた。
「ところで、私はダイアナで、こっちはアート。私の言ってること、わかるかわからないけど……」
外では、影の中に隠れて、フードをかぶった一人の男がトンネルを見張っていた。夜の訪れとともに、そのシルエットは濃い闇に溶け込んでいた。彼は三人の一挙一動を、慎重に目で追っていた。
(……)
人目につかないよう苦心しながらの、張り詰めた道のりの末に、三人はたどり着いた。アートの家は居心地がよかったが、混沌が支配していた。病気の母と多忙な父の不在に苦しむ、だらしない若者が切り盛りする家の姿そのものだった。散らかった物、乱雑に積まれた本、椅子の上に置かれたしわくちゃの服。
リサは興味深そうに辺りを見回した。
「ようこそ! 散らかっててごめん、客が来るとは思ってなかったんだ」
アートは言った。ばつが悪そうに頭を掻いた。
ダイアナは大声で笑った。
「散らかってる? ここは今すぐ掃除が必要よ!」
アートは深く息を吸ったが、笑った。
「大げさだな」
小さなエルフは、家の柔らかな明かりに照らされて輝く目で、部屋の中を探検していた。
「喉が渇いてるだろ」
アートは水を一杯持ってきた。だが、渡す前に、友人のほうを振り向いた。
「エルフって、水は飲むよな?」
ダイアナは信じられないという顔で彼を見た。
「当たり前でしょ、アート! この子はエルフなの。神話の生き物じゃないんだから」
彼は笑った。リサに渡すと、彼女はためらいながらコップを受け取り、水を飲んだ。少しずつ、落ち着いていった。若者はそのとき、彼女がどれほど汚れているかに気づいた。ドレスは土と埃で汚れていて、二人に会うまでに長い道のりを越えてきたかのような印象を与えた。
「母さんの服に、この子に合うのがあるはずだ」
彼は言った。数分ほど姿を消し、清潔な白い服を持って戻ってきた。
「ほら、たぶん合うのはこれだけだと思う……その汚れた服よりは、ずっといい」
それは軽い生地でできた、長袖の白いチュニックだった。襟と袖口には金の装飾があり、上品な雰囲気を添えていた。その服が、洗練された文化か、特別な意味を持つ文化のものであることをうかがわせた。茶色のベルトが腰を締め、全体を引き締めていた。
リサはその生地に触れ、感謝の気持ちを抱いた。小さなエルフは、散らかった書類が載った机の陰に回り込み、見られないようにした。着替えている間、彼女の好奇心に満ちた目は、本でいっぱいの書棚をたどっていた。
着替え終えると、使い込まれた革装の本の中から、目を引く一冊を見つけた。そっと引き抜く。リサは床に座り、机から取った小さな果物を膝の上でバランスよく載せながら、ページをめくり始めた。読書に夢中になっている小さな女の子の姿に、アートとダイアナは思わず微笑んだ。
「おい! その古いリンゴは食べるな!」
若い魔法使いが言った。彼は台所へ走り、果物のかごを取ってきた。
「ほら! こっちなら食べていい。いろいろあるぞ……」
「その子、床に座らせたままにするの?」
ダイアナが、からかうような口調で尋ねた。
「机は散らかってるし、今は疲れすぎてて片付けられない。それに、あの子もかなりくつろいでるみたいだし……」
彼は小さな子を見つめながら答えた。
「このままにしておいたほうがいい」
少女の遠慮がちにかじる音と、果物をかき回すかさかさという音だけが、静けさを破っていた。この日初めて、差し迫った危険はなかった。
もう夜も遅く、疲労がとうとう二人に追いついた。長い一日だった。気づいたときには、ソファに座ったまま、体が眠りに屈していた。ソファは大きく座り心地がよく、土色のベルベットの生地は、時を経て少しすり減っていた。柔らかなクッション――乱れたまま――と、その上に投げかけられたニットのブランケットが、そこがよく休息に使われる場所であることをうかがわせた。木の肘掛けには控えめな彫刻が施され、部屋に素朴な趣を添えていた。
アートとダイアナは知らないうちに眠り込み、互いの頭がもたれ合っていた。規則正しい寝息が静かな部屋を満たし、ランプの炎がかすかに揺れて、壁に柔らかな影を作っていた。
数時間後、アートは何か湿ったものが腕を伝うのを感じて、居心地悪そうに身じろぎした。
「ダイアナ、よだれ垂らしてるぞ……」
彼は眠そうな声でつぶやいた。
「んん?」
彼女はゆっくりと目を覚ました。意識を取り戻そうとしていた。
「あなただって、私によだれ垂らしてたじゃない!」
急に目が覚めて、彼女は言い返した。
二人はぎこちなく体を離し、恥ずかしそうな顔で拭った。ドームが窓に映した陽の光が居間に差し込み、二人の顔にそっと触れた。そのとき、二人はあることに気づいた。
「リサ?」
アートが呼んだ。その目が部屋を見回した。
ダイアナもすぐに立ち上がった。あの子を見失ったかもしれないと思うと、心臓が速く打った。
しかし、床に目をやると、二人は安堵のため息をついた。ソファに寄りかかって、小さなエルフが丸くなり、開いた大きな本の上で眠っていた。頭は使い古されたページの上に載っていて、そこには、色あせたインクで書かれた文章の間に、外の世界の細密な挿絵が広がっていた。
「ふぅ! 死ぬかと思った……」
ダイアナは顔に手をやりながら、つぶやいた。
アートは微笑んだが、その穏やかなひとときは、ふと浮かんだ考えに遮られた。
「ダイアナ……今、何時だ?」
彼女は時計を見て、凍りついた。
「嘘でしょ……」
二人は顔を見合わせた。その顔には恐怖が浮かんでいた。
「遅刻だーーーっ!!」
その叫び声が家じゅうに響き、始まったばかりの一日の静けさを破った。




