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測定不能  作者: Wataru
3/10

最適化された恋人

 マッチング結果が届いたのは、二十八歳の誕生日だった。


 【最適一致率 12%】


 画面の中央に、無機質な数字。


 周囲の平均は、70%以上。


 友人は笑っていた。


「え、低すぎない?」


 彼女は肩をすくめた。


「最適化されにくい体質なんだよ」


 冗談のように言ったが、通知は消えない。



 この社会では、恋愛は最適化される。


 性格、遺伝子、生活リズム、収入、ストレス耐性。


 すべて解析され、


 “最も効率的なパートナー”が提示される。


 離婚率は激減した。


 家庭内トラブルも減った。


 子どもの幸福度も上がった。


 合理的な制度だ。



 彼女の一致率は、いつも低い。


 理由は単純だった。


 【自己決定欲求:高】


 【適応柔軟性:低】


 【予測不能行動傾向:中】


 AIは結論づける。


 ――安定性に欠ける。



 最適一致率78%の男性と、試験的交際をした。


 優しい。

 誠実。

 条件も悪くない。


 だが、三ヶ月で終了した。


 理由は、記録されている。


 【将来設計における方向性の微差】


 彼は言った。


「効率的じゃないよ」


 彼女はうなずいた。


「そうだね」


 否定はしなかった。



 ある夜、システムから通知が来る。


 【一致率 0%】


 初めて見る表示だった。


 該当者なし。


 アルゴリズムが、諦めた。



 彼女は、少し笑った。


 落ち込まなかった。


 むしろ、静かに息が楽になる。


 “選ばれない”のではない。


 “分類できない”のだ。



 カフェで、偶然隣に座った男性と話す。


 システム上は接点ゼロ。


 趣味も違う。

 収入も違う。

 価値観も微妙にずれている。


 だが、会話が続く。


 予測不能な方向へ。


 笑う。


 AIは沈黙している。



後日、通知が届く。


 【一致率 48%】


 高くもない。

 低くもない。


 推奨とも、非推奨とも表示されない。


 彼女は数字を眺める。


 48%。


 良いとも悪いとも言えない。


 端末を閉じる。


 結局、付き合ってみないとわからない。


 それは昔から、そうだった。


 彼女はメッセージを打つ。


 「今度、ゆっくり話しませんか」


 送信。


 画面に残るのは、48%という数字だけ。


 けれど、


 次に会うかどうかを決めたのは、


 その数字ではなかった。

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