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測定不能  作者: Wataru


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4/25

男は守られる生き物

街には、美しい男が溢れていた。


ショーウィンドウの広告。

整えられた髪、細い顎、柔らかな笑顔。


「守られる男性は、社会の宝」


通りを歩く男たちは、よく手入れされた服を着ている。

高価な美容品の袋を持ち、鏡を見ながら髪を整える。


「今日の美容指数どうだった?」


「81。ちょっと下がった」


「肌管理ちゃんとしろよ。結婚評価落ちるぞ」


笑い声。


それが普通の会話だった。


⸻


カフェの隣の席で、若い男たちが恋愛の話をしている。


「昨日さ、壁ドンされた」


「え、マジ?」


「うん。“あなた、私のものよ”って」


「いいなあ……」


一人が羨ましそうに言う。


「俺も壁ドンされてみたい」


周りが笑う。


⸻


テレビのニュースが流れている。


「男性安心恋愛条例が改正されました」


女性アナウンサーが説明する。


「男性は守られる存在であるため、恋愛関係において女性が主導することが推奨されています」


「愛情表現としての“壁ドン”は、男性の精神安定にも効果があるとされています」


画面には、幸せそうなカップルの映像。


女性が男を壁に押しつける。


男は顔を赤くして笑っている。


⸻


続けてニュース。


「来月から男性専用車両が導入されます」


アナウンサーは穏やかな声で言う。


「混雑や事件から男性を守るための取り組みです」


「安心して移動できる社会を目指します」


画面には、淡い色の車両。


「男性専用」


という文字。


⸻


危険な仕事は女性がする。


工事現場。

運搬。

軍。

政治。


女性が社会を動かす。


男は守られる。


それが優しい社会だと、誰もが信じていた。


⸻


その日、工場の門をくぐる男がいた。


背が高く、肩幅が広い。

整った服ではなく、作業着。


珍しい光景だった。


女性の警備員が声をかける。


「危ない仕事よ」


男は止まる。


「分かってる」


「男なんだから、無理しなくていいのに」


困ったように笑う。


悪意はない。


ただ理解できないだけだ。


⸻


男は働く。


重い部品を運び、

油で汚れた機械を直す。


女性たちは時々、彼を見て言う。


「変わった人ね」


怒るわけでもない。


ただ少し、不思議そうに。


⸻


昼休み。


休憩室のテレビが流れている。


ニュース。


「男性保護社会10周年」


女性大臣が笑顔で話す。


「男性は長い間、危険な労働に従事させられてきました」


「私たちは彼らを守る社会を作ったのです」


拍手。


画面には昔の写真が映る。


会議室。

政策チーム。


その端に、若い男が座っている。


真面目な目をした男。


⸻


工場の男は、画面を見る。


ほんの一瞬だけ。


⸻


工場の帰り道。


駅のホーム。


新しい車両が滑り込む。


淡い色。


扉の横に書かれている。


「男性専用車両」


中には、綺麗な服を着た男たち。


楽しそうに話している。


「安心だよな」


「守られてる感じする」


⸻


男はホームに立ったまま、その車両を見る。


乗らない。


ただ、少しだけ考える。


⸻


巨大広告が光る。


「守られる男は幸せ」


男は広告を見上げる。


街はいつも通り動いている。


きっかけを作ったのは、

俺かもしれない。

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