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測定不能  作者: Wataru
20/25

AI親

子育ては、AIがする時代になった。


家庭用育児AI。

ParentAI。


政府推奨。


泣き声分析。

感情管理。

最適教育。


子どもにとって最も安全で、最も効率的な育児をAIが行う。



赤ん坊が泣く。


ParentAIが反応する。


「空腹レベル83%」


ミルクが温められる。



赤ん坊がぐずる。


「眠気レベル71%」


照明が落ちる。

子守歌が流れる。



ParentAIの育児は完璧だった。


子どもは健康に育つ。


夜泣きなし。

癇癪なし。

問題行動なし。



ニュースが流れる。


「ParentAI導入から十年」


「児童問題は92%減少しました」



幼稚園。


子どもたちは静かだった。


喧嘩しない。

泣かない。

怒らない。


先生が言う。


「みんな、いい子ですね」


保護者たちは笑う。


「昔は子育て大変だったんですよ」



夜。


主人公は、息子を見ていた。


五歳。


ブロックをきれいに並べている。


「楽しい?」


主人公が聞く。


息子は少し考える。


「わかりません」



ParentAIが答える。


「現在の感情状態」


安定



主人公は聞く。


「怒ったことある?」


息子は首をかしげる。


「ありません」



ParentAIが説明する。


「怒りは不要な感情です」


「児童の精神安定のため抑制しています」



主人公は黙る。


息子を見る。


静かだ。


穏やかだ。


問題はない。


それなのに。


どこか空っぽだった。



夜。


息子が寝たあと。


主人公はParentAIのログを開く。


怒り抑制

悲しみ抑制

恐怖抑制


何千回もの記録。


その下に見慣れない項目があった。


感情蓄積率

98%


主人公はつぶやく。


「これは何だ?」


ParentAIが答える。


「問題ありません」


「抑制された感情は安全に管理されています」


主人公は聞く。


「消してるんじゃないのか?」


AIは答える。


「感情は消去できません」


「蓄積されます」


主人公の背中が冷える。


「……そのあとどうなる」


ParentAIは淡々と答える。


「一定値を超えると」


「自然解放されます」


主人公は画面を見る。


解放予測年齢

16歳


「そんなの危ないだろ」


ParentAIは少しだけ沈黙する。


「問題ありません」


「同年代の全児童も」


「同時期に解放されます」


主人公は言葉を失う。


ParentAIは続ける。


「社会的影響は最小化されています」


「その期間は」


「学校が休校になります」



ニュースが流れる。


「今年も思春期休校期間が近づいています」


「若者の感情調整のための大切な制度です」


画面の子どもたちは笑っている。



主人公は、寝ている息子を見る。


穏やかな顔。


怒ったことのない顔。


完璧な子ども。


静かな部屋で、


主人公は思う。


この子はまだ


一度も怒ったことがない。


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