反抗性 0% の社会
人は生まれる前に、一度だけ部屋に呼ばれる。
白い部屋。
中央に、大きな画面がある。
そこに、自分の人生の設定が並んでいた。
顔。
身長。
知能。
運動能力。
健康。
すべて、調整できる。
「自由に選んでください」
担当者が言う。
「これがあなたの人生になります」
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画面には、人気の設定が並んでいる。
標準成功型
・知能指数 125
・身長 178cm
・容姿評価 A
・社交性 高
・健康リスク 低
「これを選ぶ方が多いですね」
担当者が言う。
「成功率の高い人生です」
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画面の横には、細かな項目も並んでいる。
性格設定。
その中に、いくつかの警告付きの項目があった。
反抗性
社会適応リスクがあります
執着心
ストレス負荷が高まる可能性があります
孤独耐性
社交関係が希薄になる可能性があります
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「これらは」
担当者が説明する。
「あまりおすすめできません」
「人生が難しくなる可能性があります」
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画面の下には、参考資料があった。
歴史データ。
世界を変えた人間の特徴。
発明家。
革命家。
芸術家。
多くに共通していた性質。
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反抗性。
執着心。
孤独耐性。
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担当者は言う。
「もちろん自由です」
「ですが」
少し笑う。
「ほとんどの方は選びません」
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画面を見る。
確かに、誰も選びそうにない。
人生は難しくなる。
成功しにくい。
孤独になる。
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「では」
担当者が言う。
「設定を決めてください」
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しばらく画面を見る。
それから、ゆっくり触れる。
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反抗性 ON
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担当者が少し驚く。
「本当によろしいですか?」
うなずく。
「いいんです」
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画面に表示される。
人生設定 完了
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担当者は端末を閉じる。
隣のスタッフが聞く。
「珍しいですね」
担当者がうなずく。
「ええ」
モニターを指さす。
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そこには、今日更新された統計が表示されていた。
反抗性 選択率
0%
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スタッフが首をかしげる。
「おかしいですね」
「今、誰か選びませんでした?」
担当者は少し考える。
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「……気のせいでしょう」




