↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/58

第55話「庇う」

蒼慈の最初の一撃は、紅華へ向かった。

青い花弁がクナイに纏わり、直線で紅華の喉を穿つ。

傷を負った体では、完全にはかわしきれない。

——その前に、琥珀が動いていた。

『ダメ!』

刀を鞘のまま横に出し、軌道を叩きずらす。

未熟な受け方だ。

なのに、致命だけは外れた。

黄色い残像が、一瞬先を示していた。

「……邪魔だ。双子」

蒼慈の声は、冷たい。

師の顔ではない。任務の顔だ。

紅華が槍を拾い、歯を食いしばって立つ。

「先生、私を斬るなら、私だけを見て。

この人たちを巻き込まないで」

「裏切り者に、選択権はない」

青い花霞が広がり、視界が濁る。

毒を孕んだ花弁が、二人の周囲を舞う。

紅華の槍がそれを払い、琥珀が「右!」「低い!」と声を飛ばす。

心桜が割り込もうとして、菊乃に袖を押さえられる。

『まだだ。あいつの読みが、続いてる』

『妹ちゃんたちだけで——』

『今は、見ろ』

紅華は傷を押さえたまま、槍を振るう。

蒼慈のクナイとぶつかり、金属音が広間に散る。

昔教えられた型が、身体に残っている。

なのに、師の方が一枚上手だ。

花の毒が袖を掠め、紅華の動きが半拍遅れる。

「教えは、正しく受け取っていたな。

だが、足りん」

『先生の教え、全部は受け取ってない。

私は、もう兵器じゃない』

琥珀が、紅華の背に密着するように立つ。

刀は拙い。

なのに、先読みだけは途切れない。

『後ろから来る! 花が、三つ』

紅華が指示どおりに身を翻し、槍の石突で花弁を叩き落とす。

二人の呼吸が、強引に重なる。

双子の顔が、同じ方向を向く。

蒼慈は、一歩下がってクナイを持ち直した。

表情は変わらない。

なのに、眼がわずかに細くなる。

「……紅華一人なら、ここで終わっていた。

双子の読みが、邪魔だ」

『邪魔でいい。

この人を、もう一人にしない』

琥珀の声は震えている。

なのに、足は下がらない。

黄色い花弁が、足元に一枚だけ落ちた。

蒼慈の青いプルメリアが、再び濃くなる。

次は、二人まとめて潰す軌道だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。