表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/58

第53話「共闘」

紅華は、琥珀の腕の中でゆっくりと息を整えた。

傷は浅い。

なのに、戦う力はもう出てこない。

負けを、体が先に認めていた。

心桜が近づき、菊乃も距離を詰める。

四人の顔が、初めて同じ広間に揃う。

紅華が、掠れた声で言った。

「……お母さんを、助けて」

短く、それだけだった。

三人の間に、一瞬の沈黙が落ちる。

琥珀が、先に口を開く。

『……お母さんは、生きてるんですか』

「生きてる。

でも、普通の生き方じゃない」

菊乃の眼が、細くなる。

『状態を話せ』

「長の侵食で、自我はほとんど残ってない。

命令には逆らえない。

でも——娘にだけは、心が残ってる。

私には、それが分かる」

心桜が、覆いのない方の眼で紅華を見る。

『会えるの? ちゃんと』

「分からない。

でも、放っておけば、本当に何も残らなくなる」

琥珀は紅華の肩を支えたまま、小さく息を吸う。

『……助けたい。

会ったこともないのに、助けたい』

菊乃は、短く頷いた。

初めて、少しだけ口元が緩んだように見えた。

それから、はっきりと言う。

『助けて、ではない。

お前も、一緒に戦うのだ』

紅華の目が、揺れる。

「……一緒に、戦う」

『ああ。残された側も、逃した側も、同じ方向を向く。

母親を、長から取り戻す』

紅華は、短く息を吐いた。

拒絶ではなかった。

心桜が、肩をすくめる。

『はは。可愛い妹ちゃんの頼みじゃ仕方ないか。

それに、ママがわたしに似て美人なのかも確かめたいしね』

受け入れは遅い。

だが、もう拒む理由もなかった。

紅華は槍を拾わず、床に座ったまま、掠れた声で続ける。

「長は、子八根様と呼ばれてる。

里の外から来た。

花の血を使い、侵食を広げようとしてる。

私は器として育てられた。

三人は、逃した失敗——最初はそう聞いてた」

琥珀が、指先を握る。

『失敗、じゃない』

「今は、分かってる。

……少しだけ」

情報は、まだ全部ではない。

母親の侵食の詳細も、長の正体も、血が必要な理由も、これからだ。

それでも、「一緒に戦う」という方向だけは、もう固定され始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ