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第44話「蒼域」
アオイの視線が、三人を順に撫で、琥珀の顔で止まった。
「……なるほど。そっくりだな」
短い一言だった。
それ以上は語らない。
琥珀が、戸惑ったように瞬きする。
『……え?』
心桜も、刃を構えたまま首を傾げる。
『なにそれ。誰に言ってるの』
アオイは答えなかった。
静かに手を上げる。
「私情は不要だ。
処理を始める」
広間の空間が、歪む。
床が傾いたように見え、壁の距離が変わる。
心桜の踏み込みが空を切り、菊乃の花弁が予定した座標から外れる。
連携が、最初の三手で崩された。
『——っ、なにこれ』
『空間を、歪めている』
アオイの声は、変わらない。
「一人ずつ潰す。
それが最も効率的だ」
青い斬撃が、琥珀の喉を狙う。
菊乃が領域で軌道をずらすが、ずれた先がさらに歪み、別の角度から迫る。
心桜が半身で受け、袖が裂ける。
『ちっ……厄介』
琥珀は後ろに下がりながら、黄色い残像を追いかけて目を凝らす。
敵意の軌道。歪みのタイミング。
以前よりはっきりしているが、まだ全部は読めない。
頭が、熱い。
アオイは感情を見せない。
なのに、斬撃の奥に、あの通路で拾った悲しみの残滓が、薄く混じっている。
三人は、円の中央で押し込まれていく。
まだ、勝機は見えていない。




