表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/58

第40話「忠告」

ウスズミは、しばらく動かなかった。

三人は距離を取り、次の通路へ足を向ける準備をしていた。

その背中に、低い声が落ちる。

「……待ちな」

振り返ると、ウスズミがゆっくりと起き上がっていた。

抵抗する様子はない。

武器も、花も、もう展開していない。

「……はは。マジで負けた」

腹を抱えるでもなく、ただ認めた声だった。

「本家の力、伊達じゃねえな。

お前強いよ。正直、面白かった」

心桜が刃を下ろさないまま、警戒の眼を向ける。

『……起き上がったのに、攻めてこないの』

「攻めねえよ。折れた腕で何するんだよ。

強さは認めてる。勝ったのはそっちだ」

ウスズミは三人を順に見渡した。

皮肉でも、敵意でもない目だった。

「忠告しておく。

この先にいる三人は、あたしなんかより強い。

特に——いや、言っても仕方ねえか。

覚悟だけはしとけ」

菊乃が、短く問う。

『四天王の、残りか』

「ああ。

あたしは一番下だ。上は、桁が違う」

それだけ言うと、ウスズミは壁に背を預けて座り込んだ。

追ってくる気配はない。

戦意が、本当に消えている。

琥珀は刀の柄を握ったまま、その横顔を見ていた。

敵が、勝った相手を讃える。

知らない形の終わり方だった。

菊乃は下り坂の方を見る。

『行くぞ』

『……はい』

三人は、ウスズミを残して広間を出る。

背中に、低い声が一度だけ届いた。

「死ぬなよ。

本家の花、もっと上で見たいからな」

通路に出たあと、心桜が低く呟く。

『……意外と、普通の人だったね。里のわりに』

『自我がある分、予測はしにくい。

次も、同じと思つな』

琥珀は一度だけ振り返り、すぐに前を向いた。

忠告の言葉が、胸の奥に残っている。

この先の三人は、より強い——。

足は、止めなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ