表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/58

第38話「灰薔」

下り坂が終わると、円形の広間が現れた。

壁は灰がかった花弁で覆われ、床には棘の痕跡が残っている。

中央に、一人の女が立っていた。

背は高く、装備は簡素だ。

派手さはない。

なのに、気配だけが重い。

これまでの敵と違い、目に感情がある。

女は三人を見て、面白そうに口の端を上げた。

「おお、やっと来たか。

知らせは聞いてたけど、三人揃ってるとはね」

心桜が刃を構える。

『四天王?』

「正解。

ウスズミだ。

子八根様の下で、腕を振るってる一人」

名乗る声に、誇示も卑下もない。

戦える相手が来た、という生の反応だった。

「花の血の三人組、か。

生け捕りで連れて来いって話だけど……正直、手応えがある方がいいんだよな。

抵抗してくれよ?」

菊乃が一歩、前に出る。

『望むところだ』

「いい答えだ。

じゃあ、折るところから始めるか」

ウスズミの腕から、灰色の薔薇が咲き広がる。

棘が体表を走り、花弁が刃のように立つ。

力押しの武装だ。

心桜の声に、緊張が混じる。

『……今までのと違う。中身がある』

『実行部隊とは、質が違う』

琥珀は後ろに下がり、刀の柄を握る。

黄色い残像は出ていない。

なのに、敵意の輪郭だけが、はっきりと見えていた。

ウスズミが、地面を蹴る。

「子八根様の命は命として、私は私で楽しむ。

どこまで持つか、見せてみろ」

棘を纏った拳が、直線で菊乃の顔を狙う。

菊乃は下がらない。

足も、花弁も、まだ動かしていないように見えた。

心桜が舌打ちをする。

『また、動かないの——』

言葉の途中で、灰色の棘が空を切った。

軌道が、わずかに外れている。

菊乃の足元に、いつの間にか緑の花弁が落ちていた。

『抵抗は、すでに始めている』

短い言葉と共に、領域が閉じ始めようとしていた。

ウスズミは、外れた自分の拳を見て、笑った。

「はは、いいじゃねえか。

本家本元の花の力か? 面白え」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ