第55話
村人たちのほうへ走っていく反神連合会の奴らを横目に俺たちは一歩も動けなかった。
クソッ、助けにいきたいけど、こいつのスキルが強すぎてロクに動けねぇ……!
下手したら、背中を見せた瞬間ズドンじゃねぇか。
こいつに対抗できるのは『神のゴミ箱』だとゴルちゃんくらいだし、3馬鹿の連中もギリギリってところか?
俺はなにもできないのか?
「おい、逃げんなやめんどくさいのぅ!」「あっち回り込め!」「死にさらせ!」
「子供だけは勘弁してください!」「家の中に逃げてッ」「きゃぁぁぁ! あなた!」
村人の悲鳴を聞きながら、こんなところに突っ立ってるだけなのか?
「そういえば昨日、オリバーさんとこの息子さんに会うたわ」
「あぁ? オリバーって誰やねん……てか、なんやこのババァ……どっから出てきた?」
「あぁ、あのチンチクリンの子か?」
ババァの世間話を聞きながら、こんなところに突っ立ってるだけなのか……?
……いや、誰だよ、この状況で世間話してるやつ。
「うわっ! おい、こっちにも変なババァおるぞ!? おまえ村のもんちゃうな? まさかしんせん……ギャァァ!」
「せやせや、そのチンチクリンや。昼間っからプラプラしとったで? 仕事してへんのちゃうか?」
「おい、大丈夫か!? お前、どこの組のもんじゃい! 反神連合会ナメとったら……グベッ……!?」
『神のゴミ箱』、神扇組の3馬鹿、反神連合会のコンクはお互いにらみ合い、一触即発の状況だった。
しかし、周りから聞こえてくる会話の様子が明らかにおかしいことに全員が気を取られて微妙な顔をしていた。
コンクは俺たちから目をそらさないまま、舌打ちをして叫んだ。
「おい、なにがあった!?」
「コンクさん! なんか変な2人組のババァがいて……! めっちゃ強いっす……! これ勝てへ、ギャァ……!」
「ババァってなんやねんッ……」
コンクが思わず仲間たちのほうへ視線をやった。
攻撃のチャンスではあるが、俺たちの誰も攻撃しなかった。
それよりもババァが気になりすぎる。
俺たちもコンク同様、村に散らばった反神連合会の奴らへ視線をやる。
すると、そこには反神連合会の男たちや、逃げる村人たちとは少し毛色の違う人物が2人まじっていた。
それはおばちゃんとしか言いようのない2人だった。
背はそれほど高くなく、片方のおばちゃんは紫色、もう片方は桃色の髪をしており、くるくるパーマというかむしろちりちりパーマのような癖毛である。
二人ともヒョウ柄の服を着ており、地味な服装の村人たちとは明らかに異なる。
それぞれ、手には自分の髪色と同じ色の小さなバッグを持っている。
武器は見当たらない。
ただ買い物をしにきただけの、大阪のおばちゃんといった感じだった。
「なんやあのババァ……。おい、神扇組の仲間かァ?」
「ちゃうわい、知らんわあんなおばはん。コンクも知らんのかぃ」
どうやら反神連合会でも神扇組でもないらしい。
「知らん知らん。ほな、お前らか!? そもそもお前らも誰やねん!」
「俺らはフラウスのギャングだ。おっと、ハンサイギャングの抗争に口出しするつもりはないから勝手に潰しあってくれよ? ってことで、帰っていい?」
「帰ってえぇわけあるかぃ! クッソ……オレが用意した兵隊ばっか狙っとるやんけあのババァ……ただの村人にしては強すぎるし……わけわからんッ!」
紫ババァと桃色ババァは、場違いな世間話をしながら、サクサクと反神連合会の男たちを殺していく。
「あんた飴ちゃんいるかぁ?」
「飴ちゃんやとぉ? ふざけ、オゴッ……!」
ニコニコと笑いながら敵に話しかけた紫ババァは、カバンから飴を取りだし、そのまま相手の口へ放り込んだ。
その直後、相手は吐血しながら倒れる。
それを見て爆笑する桃色ババァ。
「タハーッ……! あんた今日も飴ちゃん持ってきたんかぁ?」
「そらそやないのあんた、オリバーさんとこの息子さんにもあげたわ。あんたこそ、持ってきてんねやろ?」
「今日はミカンや……タハーッ……!」
「タハーッ……! ミカンて……! タハーッ……!」
桃色ババァはカバンから出したミカンを握りつぶした。
ブシュッ! と果汁が飛び散り、反神連合会の男たちにかかる。
「うわっ、ぺっ、ぺっ!」「目に入った!」「はれ? 体に力が入れへん……」
バタバタと地面に倒れた男たちの頭を「ほいほいほい」と言いながら踏みつぶしていく桃色ババァ。
パンッ、パンッ、パンッ、と男たちの頭はスイカ割りのようにつぶれていく。
「クッソババァァ! ナメてっと殺すぞ!?」
「殺すってあんた、そんなぶっそうなこと言わんと! おかあちゃんに怒られてまうよ? コラッ言うて、バシーン叩かれても知らんでぇ?」
「死ねェ!」
紫ババァは男が振り下ろした剣を「はいバシーン」と言いながら素手ではじいた。
「ハァ!?」
そしてまた「バシーン言うてな?」と笑いながら男の頭を素手で叩いて粉砕した。
そして、数分後、コンク以外の反神連合会の連中は全滅していた。
「ど、どういうことやねん……作戦が全部パァや……」
顔面を蒼白にしながらコンクがそう呟いた。
仕事を終えて、こちらへ歩いてくるババァたち。
「はいはいはいはい、言うて」
「どーもどーも、言うて」
「「タハーッ……!」」
「お前ら……お前らいったいなんやねん!」
「お姉ちゃん、この子、うちらのこと知らんみたいやで?」
「ほんまか!? ハンサイ人やのに知らんとか、モグリやな?」
ハンサイでは有名なのか? と思い、3馬鹿トリオに目配せでたずねると、全員が首を横に振った。
その様子を見たババァたちは、
「タハーッ……! なーんで、あんたらも知らんねな!」
「うちの組で、うちらのこと知らんとか新米ちゃうか?」
「う、うちの組……って、まさかあんたらも神扇組なんか?」
「せやでぇ? 神扇組で掃除といえばうちら『ワタガシ娘』でひとつよろしゅう言うて。タハーッ……!」
「タハーッ……! あんた、掃除屋が自己紹介してしもうて、どないすんねんな!」
「ワタガシ娘!? 幹部の方やないですかっ! こ、これは失礼を! おいお前らも頭下げぇ!」
「「へい……!」」
3馬鹿トリオがペコペコとお辞儀をする。
コンクは「終わった……」とつぶやいて、
「ワタガシ娘と言えば、ハンサイの暗殺ギルド最高ランクかつ、神扇組幹部。姿を見たやつは全員消されるから誰もその姿を知らないって聞いてたが……」
「おー、よう知っとるやないの」




