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第56話


「そういえば、ワタガシ娘は3人組だって……」


「ほんまよう知っとるなぁ。上の姉さんも来とるで? もうそろそろ仕事が終わったはずやな」


「仕事……?」


「ほれ、来たわ。姉さん、お疲れさん」


「ほんま疲れたわ。ぽんぽんぽんぽん殺しよってからにほんま。掃除するこっちの身にもなれっちゅうのに。もっと綺麗に殺されへんのか」


 どこからともなく、もう一人のババァが現れた。

 見た目は紫ババァたちとほぼ一緒で、髪の色は白だった。

 一番地味である。


 突然、コンクが大声をあげる。


「掃除……? ハッ……! あいつらは……オレの手下どもの死体はどこにやった!?」


「タハーッ……! せやから、姉さんが掃除したんや。掃除屋やからな? 綺麗にせんとアカン」


「せやせや、綺麗にせんとアカン」


「綺麗にするんはうちだけやないの! 口だけ達者やねんからほんまに……」


「「タハーッ……!」」


 死体がどうかしたのか? とあたりを見渡す。


 さきほどババァたちが殺しまくった反神連合会はんしんれんごうかいの連中が転がっていた場所を見ると、まるで戦闘なんて発生しなかったかのように、綺麗な地面だけがあった。

 死体も血も、肉片ひとつ落ちていない。


 おそらくこの白いババァがなにかしらのスキルを使って、この短時間で掃除したのだろう。


 掃除屋。

 これがプロの仕事なのか……。


 俺たちみたいなほぼ半グレギャングとは次元が違いすぎる。


 さきほどから、うちのメンバーは誰一人口を開かない。

 ここまでの修羅場はなかなかないからな。仕方ない。


 それより、事態は良い方向に転がっているのでは?

『神のゴミ箱』は神扇組と敵対していないし、むしろ村人たちのために戦った。

 このババァたちが俺たちまで消すことはない……だろう……たぶん。


 あとはババァたちがこの角刈り(コンク)をサクッと掃除してくれれば、一件落着じゃね……!?


 期待に満ちた目でババァたちを見ていると、彼女たちは3人そろって俺たちから少し離れた場所にあった地面に腰をおろした。


「はー、よいしょよいしょ」「年寄にはキツいわな?」「ほんまもう、年々しんどなる」


 白髪ババァは持っていたカバンから茶色の小さな円盤を3枚取り出し、そのうちの2枚を紫ババァと桃色ババァに配り始めた。


「タハーッ……!」「姉さん、今日もあんたおせんべい持ってきはったんかいな!」「せやで、おやつやな」


 ババァたちはせんべいを食べ始めた。

 バリバリゴリゴリという良い音が響き渡る。


「ん? あんたらなにこっち見てんの! あんたらのぶんのせんべいはないで!?」


「いや、せんべいはいらんのですけど……お姉さんがた、まだ一人、反神連合会はんしんれんごうかいの奴が残ってますねん……こいつもったってくれませんか……?」


 デンキウが、おそるおそるそうたずねると、


「タハーッ……! なーにを言うとんねんアンタ! その子を殺るんはアンタの仕事やがなっ」


「えぇ!? いや、せっかくここまで出張でばってくれたんですし、あと一人くらい、姉さん方やったら軽いもんちゃいますの?」


「うちらはもう疲れたんやっ。年寄はいたわらなっ」


「せやせや、年寄は……って誰がババァや! タハーッ……!」「言うてへん言うてへん! タハーッ……!」


 デンキウはババァたちとコンクの間で視線を行ったり来たりさせながら、「マジか……え? マジでワシらがやるんか?」と小声でつぶやいた。


「うちらはここで見とったるから。好きなようにやりやっ」「せやな。おせんべいうまいわ。お茶ないの?」「そこのお家からもろてこよか?」


 ババァたちは完全に観戦モードに入ってしまった。


 なんか妙な展開になっちまったな。

 結局、俺らは逃げていいのか?


 ふたたび逃げ道を探そうとして、ふとコンクに目をやると、なにやらぶつぶつ言いながら右手を前に突き出した。

 右手の進行方向にいるのは、


「フラウッ!」


「ひえぇ!? なんですの!?」


 ガインッ! という衝撃音が戦闘開始の合図だった。


 コンクのスキルを防いでくれたのは、またしてもゴルちゃんだった。

 俺はただ、お嬢に抱き着いただけの間抜け野郎だ。


 クッソ! 逃げそびれた! やっぱ俺らも3馬鹿の仲間かなにかだと思われてる!?


 ガインッ! ガインッ! と石のトゲを防ぐ音が連続する。


 お嬢の次に狙われたのは気絶したタンテだった。


 あんにゃろう、弱そうなやつから数を減らしていくつもりかよ……それで選ばれるのが『神のゴミ箱』メンバーばっかりとか、やっぱ卑怯な野郎だぜ……!


 3馬鹿は馬鹿っぽく見えて、それなりに戦える。

 ゴルちゃんは変態っぽく見えて、一番戦える。

 そんな厄介な奴らは後回しにして、とりあえずお荷物になりそうなやつらを傷つけておけば、俺たち全体の動きが鈍るとでもふんだのか?


 大正解だよ、クソったれ。


 事実、ゴルちゃんはお嬢とタンテを守るのにつきっきりになってしまっている。


 せめて、動けないタンテだけでも担いで逃げてくれるやつがいれば……。


「聖女様……トラッシュ様……おぉ、私はどうすれば……」


「ちょうどいい! おいシスター!」


「おぉ、トラッシュ様。あなたは私の……真の導き手なのですか?」


「なにわけわかんねぇこと言ってんだ! それより、あんたこいつを担いでブレイク……あの人面馬に乗って逃げてくれ!」


 地面に転がっているタンテを無理やりシスターリメアに押しつけて、ブレイクを呼び寄せる。


「ブレイク! この二人乗せて逃げろ!」


「ボスはどうするんダゼ!?」


「残る! いいから早く行け!」


 もたもたしているリメアをブレイクの上に押し上げて、タンテも彼女の前に乗せて、ブレイクのケツをパシンと叩く。


「リメア、しっかりつかまってろよ……タンテを頼んだ! ブレイク、出せェ!」


「了解ダゼェ!」


 まだとぼけた顔をしたリメアを乗せたブレイクは村の奥へ走り去っていく。


 それを見送りつつ、俺は『ゴミ箱』からおなじみの木刀を2本取り出し、クロスさせながら全力で振りぬいた。


「エーックス! ……ウガッ!?」


 コンクがブレイクに向けて撃った石槍をなんとかそらすことに成功したものの、俺は後ろにひっくり返って後頭部を強打した。


 スキルは強いクセに弱いやつばっか狙いやがって。せこい奴め。


 だが、これで戦場は整った。


 敵はコンク一人。

 一方こちらは、神扇組しんせんぐみの3馬鹿トリオ、ゴルちゃん、俺、お嬢の計6人。


 ただし、ゴルちゃんはお嬢を守るような立ち位置から離れられなくて実質、死に駒になっちまった。本当なら俺とゴルちゃんの立ち位置をチェンジできればいいんだが……情けないことに、俺じゃあお嬢を守り切れない可能性が高い。


 動ける3馬鹿と俺でコンクを倒しきるしかない。

 だが、こいつらとぶっつけ本番で動きをあわせられるか?

 そもそもスキルも知らないのに。


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