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第46話

 ~ トラッシュ side ~


 水底から浮かび上がるようにして意識が覚醒する。


「なんだ……? 痛っ……!」


 目の前には3人の男たちがいた。


 びっくりして、すぐさま立ち上がろうとするものの、すぐに体がつっかえた。

 俺の体にはヒモがぐるぐると巻き付けられてあり、イスに縛り付けている。

 腕も手すりに、脚はイスの脚に縛り付けられており、逃げられそうにない。


「アニキ、こいつ目ぇ覚ましたで」


「ホンマか。ほな尋問しよか」


 俺は……ぶん殴られて気絶してたのか。

 頭が少し痛むのと、ヒモで縛られている部分が痛いってくらいで、他にケガはなさそうだった。


「おい、ここはどこだ!」


「それ聞かれて答えるやつおるんか?」


 いないだろうね。聞いてみただけ。


 あたりを見渡すと、ここは広い倉庫のような場所で、荷物が大量にある。

 尋問をしたいと言っているし、大声を出しても外まで声が届かなさそうなこの場所を選んだのだろう。


 窓から入る光を見るに、まだ夜になっていないし、そう遠くまで来たわけじゃないと思われる。

 ハンサイまで移送するのは無理。なら、フラウス王国のどこかだ。

 ぱっと見た感じ、かなりぼろい倉庫だし、まだスラム街から出てないんじゃないか?


「テメエらは誰なんだよ」


「それ聞かれて答えるやつおるんか? って何回やらすねん、このくだり! それより、質問するんはこっちや」


「ハッ、尋問がしたいんだっけか? フラウスのギャングをナメんなよ。ペラペラ喋るハンサイ人とは違うんだ、何もしゃべらねぇよ」


「こいつ……! ペラペラよう喋るんはお前のほうやろ! それより、お前ハリソンかなんかいう、ええもん持っとるらしいやないけ? それを渡せや」


「ハリソン……? 誰? 地面師?」


「人の名前ちゃうわ! ちょけとったらイテまうぞ!」


 いや、本当に知らない。


 リーダー格のハゲ男は舌打ちをして腰の剣を抜いた。


「ハリソンや、ハリソン! なんかうちの親分が言うとんの聞いたんや。『トラちゃんが持っとったハリソン欲しいなぁ、つっこみにちょうどよかったんやぁ』ってな」


「ハリセンじゃねぇか! てか、お前ら神扇組しんせんぐみのとこの下っぱかよ……」


「はぁ!? なんでわかったんや!?」


「ハリセンをほしがるハンサイ人なんてドクソンしかいねぇよ」


「「ア、アニキ……」」


「ぐッ……クソが!」


 ひざから崩れ落ちたハゲをデブとガリがなぐさめはじめた。

 こいつら、本当にあの神扇組しんせんぐみでやっていけてるのか?


「お前ら、なんでハリセンなんて欲しいんだ?」


「そら、親分が欲しがっとったんやで? もし子分のワシらがこっそり手に入れて献上すれば、組内での地位があがるかもしれんやろがい!」


 ハリセンにそこまでの価値はねぇよ。


 ひとまずわかったこととして、こいつらは神扇組しんせんぐみの下っぱであり、おそらく独断専行で勝手に動いているだけだってことだ。

 であれば、うまいことおさめれば神扇組と対立することはないだろうが……問題は、こいつらがどこまでヤルつもりなのかだ。


 正直、ハリセンなんてどうでもいいからさっさと渡して解放されたい。

 しかし、俺がハリセンを渡したら用なし、かつ口封じとして殺すって線もなくはない。


 俺の推測でしかないが、この場所は俺が拉致された場所からさほど離れていない。

 ってことは、時間をかせげば『神のゴミ箱(うちのメンバー)』が助けにきてくれるかもしれない。


 ここは耐える方向でいくか。


 俺が悩んでいる間、あちらさんも悩んでいたらしい。

 少し離れたところで3人集まってこそこそ作戦会議をしている。


「もうアカン、バレてもうた、親分に殺される……」


「アニキ、あいつからハリセンをもらったあと、仲直りすればいい。半殺しなら許してもらえる」


「そうやでアニキ、最悪殺して埋めたらバレへんバレへん」


「おぉ、ほんまか!? とりあえずハリセンの場所を吐いてもらうためには……拷問ごうもんとかやればええんか?」


 拷問!?

 おい、冗談じゃねぇぞ!


「ごご、拷問でっかアニキ!?」


「オデ、拷問やったことない。ガリオとアニキは?」


「「ないなぁ」」」


 拷問に慣れてるわけじゃないのか。

 ならエゲつない責め方は知らない、よな?

 ちょっと殴られるくらい……かな?


「拷問ってどうやってやるんや?」


「拷問用の道具とか持ってはるんですか、アニキ?」


「いいや持ってへん。剣だけや……これで刺したらさすがに一発で死んでまうんちゃうか?」


 3人そろって俺のほうへ視線をよこす。


「おい、馬鹿なこと考えるんじゃねぇ! 俺は拷問を受けたことあるが、剣で拷問するやつなんか見たことないぞ!」


 ほらやっぱアカンみたいや、とブツブツ言いながら3人とも俺の近くへやってくる。


「ほな、ガリオが持っとるナイフでグサーっといってみるか……?」


「さすがアニキ、これならちっこいから一発で死ぬことあらしまへんで」


「馬鹿馬鹿馬鹿! ナイフでも刺さりどころが悪ければ出血多量で死んじまうんだぞ! 俺はそういう奴らを何人も見てきた! ありゃあ拷問としては完全に失敗だったね!」


 俺がすかさずツッコむと、ガリオから受け取ったナイフをふりあげていたハゲが手を止めた。

 こいつらまじで拷問の知識ゼロみたいだし、適当なこと言ってたら信じるんじゃねぇか……?


「めんどくさいやっちゃなぁ……ほなブータン、お前のメイスでどないや? これやったら血も出えへんし」


「オデ、ためしにやってみる?」


「馬鹿! いっちゃんダメ! それがいっちばんダメ! メイスなんか手がすべって頭に当たったら即死だね!」


「なんやお前さっきから文句ばっか言うて! ほなお前が拷問用の道具出さんかい!」


「ハァ!?」


 拷問される側が道具を出すわけねぇだろうが。


 いや、でも待てよ?


 ここで『ゴミ箱』から『見た目はちゃんとした武器だけど実は痛くないおもちゃ』とかを出せば勝ち確では?


 そんなのあったっけ?

 木刀は普通に痛いし……クソッ、焦って頭がまわらねぇ。


「あと5秒以内に道具出さんと、メイスで拷問はじめたるからなァ!? いーち、にーい、さーん……」


「だぁー! ストップストップ! わかった、これでどうだ!?」


 ――――――――――――――――

 ピヨピヨハンマー


 ヒヨコマークがあしらわれた黄色いハンマー

 叩くたびにヒヨコの鳴き声が聞こえるよ


 卵を産まないからオスはいらないと言った

 彼女はオスのヒヨコをすべてハンマーで叩き潰した

 ――――――――――――――――


 とっさに出したのは、先日アジトの修理に使っていたピヨピヨハンマー。

 まだ頭のかたすみにあったので無意識のうちに出してしまった。


 ミスったぁぁぁ! これ普通に固くて痛いやつじゃねぇかぁぁぁ!!!!



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