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第44話

 タンテと迷子探しクエストを解決した翌日、アジトには『神のゴミ箱』メンバーが集まっていた。


 俺、フラウ、エピス、ブレイク、ドリコ、肉丸、そしてタンテ。

 大きな机をかこんで座っている。ブレイクは立つしかないけど。


「タンテ、おひさしぶりですわね。遠征お疲れ様でしたわ」


「ありがとうフラウ。みんなもひさしぶり。クエスト自体はとくに問題なく終わったからよかったよ。でも……」


「ゴルちゃんが捕まってしまったんですわよね。トラッシュに聞きましたわ……」


 全員でため息をついた。

 理由は説明しなくても、みんな察している。


「ボス、ゴルちゃんのお迎えは誰が行くの? とりあえず、ぼくは参加しなきゃだよね」


「おう、道案内もしてほしいからタンテはめんどうだがまた付き合ってくれ。当然だが俺も行く。保釈金の交渉とかもあるしな。あとは、馬車をひいてもらうためにブレイクも参加な」


「わかったゼ。ハンサイなら途中の休憩とかを含めて、2、3日くらいだろうけど……もちろん超特急でいくよな? 本気をだせば1日で着くんダゼ」


「俺らのケツが死ぬから普通でいいよ。てか、そんなに走ったらお前も心臓が爆発して死ぬだろうが。命がけで急ぐような状況じゃねぇ。それで、あとは誰が必要か……」


 しょんぼりしながら上目遣いで特急アピールをしてくるブレイクを無視して、俺は他のメンバーの顔を見渡した。


 荒事になったときに俺たちを守ってくれるようなメンバーがいればよかったが、まさに今回迎えに行くゴルちゃんがその役割をになっている。

 今ここにいるメンバーは俺をふくめて全員雑魚だ。

 正直、誰を選んでもあまり変わりない。


「そもそも、ゴルちゃんを回収したらそのまま帰るだけだし追加はいらねぇな。3人で行ってく……」


「はいはいはーい! ワタクシが行きますわ! かならずお役に立てますわ!」


「お嬢……なんの役に立つつもりなんだ?」


「お色気担当ですわ。ワタクシの美しさに酔いしれて保釈金が安くなるなんてこともあるかもしれませんわね?」


「ねぇよ」と言いかけたが、一理あるかもしれない。


 フラウは、言動が残念なだけで顔は整っている。喋らなければお嬢様、動かなければお貴族様に見えなくもない。


 俺やタンテも男だし、ブレイクにいたっては人面馬だ。

 保釈金が安くなるなんてことはないだろうけど、少なくとも3人だけでいくよりも、ハンサイの衛兵の心証がよくなるかもしれない。

 どの世界でも男は馬鹿だからね。


「そうだな。紅一点こういってん、お嬢も連れて行こう」


「ほ、本当ですわね!? ひさしぶりにトラッシュと旅行できますわ~」


「遊びじゃねえっつうのに」



 ハンサイまで往復で数日間かかるし、保存食などを用意しておく必要がある。


 俺とブレイクとタンテでスラム街にある市場へ向かった。

 お嬢は「レディにはレディの準備がありますの」とか言って、エピスと一緒にきゃいきゃいしてたから放置してきた。


 スラム街でも広めの通りに、ずらりと商店が並んでいる。

 どれもとっかんで屋根だけ用意したようなボロい店だ。

 屋根があるならいいほうで、地面に商品をひろげている露天商のような奴らも大勢いる。

 ここのショバ代を徴収しているのも裏ギルドに所属しているどっかのチームなので、勝手に店を広げたら怖い兄ちゃんたちにしばかれるという寸法だ。


「それじゃあ、俺は食料を買い込んでくるから、タンテとブレイクは一緒に酒と水袋を念のため買っておいてくれ」


「了解、ボス。ブレイク荷運びはお願いね」


「まかせろダゼ」



 二手にわかれて、あれやこれや買い物をしていると金が減っていく。

 タンテとゴルちゃんが遠征で稼いでくれた報酬をゴルちゃん保釈のために使うとか……結局、働いたら負けな気がするぜ。


 一通り買い終えて、ブレイクたちと合流しようと二人の姿を探していると、とある商店の前で何やら男たちがもめていた。

 またブレイクが何かやらかしたか? と嫌な予感がしたものの、幸いそこに顔見知りはいなかった。

 見るからにガラの悪そうな、ハゲ、デブ、ガリの3人組が露天商にからんでいる。


「お前、ホンマは知っとるやろ!? さっさと言わんかい!」


「か、顔は知ってるよ……だけどアジトの場所までは知らないって言ってるだろう!」


「カーッ、使えへんやっちゃのう」


「アニキ、オデ、こいつ殴ろうか?」


「ブータン、お前アホかぁ! カタギに手ぇ出したら親分に殺されてまうやろッ、やめとけッ!」


 明らかにハンサイなまりの言葉を喋りながら、誰かを探しているようだった。

 とばっちりをくう前に帰るか……と逃げようとしたところで、


「あっ! あいつだ! あれがトラッシュだよ! 教えたからもういいだろう、さっさとどっか行ってくれぇ……!」


「はぁ? そんなタイミングよくご本人様登場するわけあるかい! お前、ふかしやったら承知せんぞ? おい、お前がトラッシュいうやからかぇ!?」


 3人組の中でアニキと呼ばれていたスキンヘッドの男が俺にばっちり目を合わせながら、そう叫んだ。


 あの露天商め! 売りやがったな!


 あいにく俺はあの露天商の顔を知らない。あちらが一方的に俺のことを知っていたのだろう。たびたびこの市場には顔を出すし、それは仕方ないが、変なもめごとに巻き込むんじゃねぇよ……。


「俺の名前はゴミッシュ。人違いだ。それじゃあ失礼するぜ……」


「おい待たんかい……! ガリオ、やれ!」


「へいアニキ」


 俺が方向転換して一歩踏み出そうとしたら、


「あんちゃんちょっと失礼するで?」


 急に近くから声をかけられた。

 さっきまでハゲの横にいたガリガリの小男が、俺のすぐそばまでやってきて、手に持った何かを見ている。


「アニキ! やっぱりこいつがトラッシュで間違いありまへんで!」


「はぁ? だから俺はゴミッシュだと……って、それは俺の!?」


 ガリ男が手に持っていたのは俺のギルドタグだった。

 こいつ、いつの間にスリやがった!?


「よっしゃ、でかしたガリオ! ブータン、そいつを捕まえろ!」


「オデ、こいつ、マルカジリ」


 ハゲの横に突っ立っていたデブは露天商が売っていた果物を一つ手に取りマルカジリした。次の瞬間、俺の目の前にそのデブの顔が……!


「速ッ……ぐわぁッ!?」


 デブの体当たりで後ろに吹っ飛ばされた俺は頭を打って悶絶する。

 こいつ、動けるデブかよ……。


 地面で頭を抱えて寝転がっている俺に、ハゲ男が近づいてきて剣を抜いた。


「安心せえや。大人しくしとけば殺さへん。ただ、ちょーっと聞きたいことがあるんや、着いてきてくれるかァ?」


「クソが……ハンサイ人が俺になんの用だ? フラウスのギャングナメてんのか……てめぇ、どこのシマのもんだよ」


「おうおう、生意気やのう。さすが親分が見込んだ男や。でも、今はちと黙っとれや」


 地面に倒れた俺をデブが拘束し、ガリ男がヒモでしばりはじめた。

 こいつらマジで白昼堂々拉致(らち)するつもりか?


 親分が見込んだ男ってなんだよ……ハンサイのギャングなんて神扇組しんせんぐみのドクソンくらいしか知らねえぞ?

 まさかドクソンの指示でこんなことしないだろう。

 あいつはイカれているけど、意味のないことはしない。

 モメてもいない相手にちょっかいかけたりはしないと信用できる。


 ってことは、違うチームのギャングか?

 ハンサイのギャング事情とか知らねぇぞ。


 俺が理解不能な状況に頭を悩ませていると、


「あっ! ボスがやられてる!」


「助けにきたゼ、ボス!」


 もめごとから逃げまどう市場の奴らとは逆走するように、タンテとブレイクがこちらへ駆け寄ってきた。


 ブレイクが走る勢いそのままにハゲ野郎にキックをかまそうと前脚をあげる。

 その脚をデブ男がメイスではじき飛ばし防いだ。

 たたらを踏んだブレイクの脚をハゲ男が剣で斬りつけた。


「おらぁ!」


「痛いぃぃぃ……もう無理です。暴力はちょっと管轄外です。調子のりましたすみませんすみませんすみません……」


 ブレイクはムチで打たれるだけでもキャパオーバーするくらい痛みに弱い。

 斬られるなんて耐えられるわけがなかった。心が折れている。


 傷は浅そうだが、ブレイクの脚からは血が流れていた。


「血ぃぃぃ!?」


 その血を見て、こんどはタンテがノックアウト。


 返り討ちRTA終了。タイムは10秒。対戦ありがとうございました。


「よっしゃ。とりあえずこいつは隠れ家に運ぼか。行くで、ブータン、ガリオ」


「「へいアニキ」」


 俺は頭に麻袋をかぶせられた後、メイスか何かで頭をぶん殴られた。

 薄れゆく意識の中で、どこかへ運ばれるような振動を感じたが、すぐに意識を失った。


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