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第43話

 ――――――――――――――――

 アヒルの浮き輪


 黄色いアヒルを模した浮き輪

 子供のプールデビューに最適


 欲望でふくらんだアヒルは破裂した

 あの橋をくぐることはできなかった

 ――――――――――――――――



「よし、そのヒモを離すなよ?」


「うん、おじちゃんってやっぱり変なんだね」


「やかましいわ!」


 レントくんには『ゴミ箱』から出した浮き輪に乗ってもらった。

 そして、俺の口から出ている万国旗に捕まってもらい、俺が泳いで引っ張っていく作戦だ。

 そのまま万国旗に捕まると無限に出てくるので、一度俺の体に巻き付けてこれ以上伸びないようにしてある。


 当然、行きよりも俺の負担は増える。


 数分間、必死に泳いでなんとかタンテのもとにたどり着いた時にはヘロヘロになっていた。


「ハァ……ハァ……マジで……死ぬ……」


「ボスってすごいんだね。その格好じゃなければ素直に尊敬したよ」


「やかましいわ……オェ……」


 万国旗を消して、シルクハットを『ゴミ箱』にしまった俺は、しばし大の字に寝転がって休みを取った。

 体が乾いたら、服を着て、ふたたび孤児院へ戻った。


「レントくん! 心配したんですよッ……!?」


「院長先生! ごめんなさいー! うわーん!」


 レントくんをぎゅっと抱きしめるミウさんの足元には、あの猫がいた。


「にゃー」


「あぁ! 猫ちゃんだ! これ捕ってきたんだよ。食べる?」


「にゃあ」


 レントくんが俺のパンツから出てきた魚を猫に差し出すと、猫はそのままかぶりついた。

 猫をなでていたレントくんは、体の傷が消えていることに気づいた。


「ケガが治ってる……」


「トラッシュさんが治してくれたんですよ? レントくんのことも助けてくれたし、なんとお礼してよいやら」


「えぇ! おじちゃんが!? おじちゃんってすごいんだね、ありがとう!」


「おー、どういたしまして。もう二度と内緒で抜け出すなよ?」


「うん!」


 返事がよすぎる。本当にわかってくれたのか心配だけど、まぁ大丈夫だろう。



 俺とタンテは院長に依頼完了のサインをもらい、ギルドへと戻った。

 受付へ向かおうとしたが、ギルドの一角がやけに騒がしい。

 野次馬根性で見に行きたくなったけど、ひとまずクエスト完了の手続きをしてもらうことに。


「オクタ、孤児院の子供は見つかったぜ。ほい、完了のサインももらってきた」


「おぉ! さすが神ゴミ氏! 感謝いたしますぞ。やはりタンテ氏のスキルで?」


「あぁ、タンテのスキルだな」


「さすが『神のゴミ箱』唯一の良心と言われるだけありますな~」


 確かに、人間的にもスキル的にも一番まともかもしれない。

 唯一かどうかは議論の余地があるけども。


「ぼくはそんな……それにまた気絶しちゃったしね」


「気にすんなタンテ。お前のお手柄だ……ところで、オクタ。あの騒ぎはなんなんだ?」


 ギルドの一角で、男達がやいやい騒いでいるほうを指さしてたずねると、


「あ! 神ゴミ氏が依頼を達成したのであれば、あれはやはり間違いでしたか……止めないといけませんな。ちょっとお二方もついてきてくだされ」


 よくわからないが、オクタについていくことに。

 野次馬たちをかき分けて中に入ると、そこにいたのは夜空教室よるぞらきょうしつのメンバーたちだった。


「あいや失礼。通してくだされ。よいしょよいしょ………あっ、夜空教室のみなさま! その人を解放してあげてください!」


「なんだと? 絶対こいつが犯人だろう!」


「いえ、もうクエストは完了しました。レントくんは見つかったでござるよ。どうやら一人で抜け出したみたいでして、その人は無関係かと」


「なに!? トラッシュ、貴様が見つけたのか!?」


 野次馬の輪の中心では、夜空教室の男たちが太った男を取り押さえていた。

 地面に押さえつけられて苦しそうにしているのは、廃屋でこっそり俺たちを見ていた大きいお友達だった。


 そういえばいたね、こんなやつ。

 こいつは結局なんだったんだ?


「ほら! さっきから言ってるじゃあないかぁ! 僕は無関係だぁ!」


「クソッ、なんなんだよ、だったらなんであんなところにいたんだ! まぎらわしいというか、あきらかに怪しいだろうがッ」


「だからぁ、僕はあのミミちゃんを愛でるために……」


「ミミとは誰のことだ! あの院長か?」


「ちちち、違いますよぉ、あのかわいい猫ちゃんです……」


「はぁ? 猫?」


 大きいお友達がギルドの床に正座しながら語ったところによると、このおっさんはただの猫好きだったらしい。

 あの廃屋にたびたび通い、エサをあげたり、なでたりしていた。

 レントくんたちが来たときは、子供たちに怖がられないように隠れていただけで、あくまで猫を愛でるためだけにあの場所にいたのだとか。


 無罪であることがわかった大きいお友達は、解放された後、ギルドから逃げるようにさっていった。


「今回は要注意ということで減点はしませんが、夜空教室の面々は反省してくだされ。次も同じようなことがあれば減点は免れませんぞ」


 オクタに注意された夜空教室のメンバーたちは、「次は気をつける」と意外にも素直に反省しているようだった。

 そしてそのまま、しれっと逃げようとしたので、


「おーい、先生に言いつけちゃうぞー」


 と俺が声をかけると、顔を真っ赤にして戻ってきた。


「今回は我々の負けということにしておいてやるッ」


「はいはい、で、俺が勝ったらどうするんだっけ?」


「20万ギル……! こんなはした金で喜ぶとは、やはりお前は先生にふさわしくない!」


 夜空教室のメンバーはギルドの受付で金をおろし、きっちり20万ギルぶんを俺に叩きつけるように渡して、舌打ちをした後、ギルドを出ていった。


「ゲヘヘ、これで今月は生きていけるぜ」


「神ゴミ氏、顔がくずれておりますぞ。タンテ氏、ついでに今回のクエストの報酬5000ギルをお渡ししますぞ」


「ありがとう。ボス、これはボスが預かっといてよ」


「おう、じゃあチームの金庫に入れとくわ。じゃあなオクタ」


「まぁ待たれよ。そちらの20万ギルは大金でしょう。それもこちらでおあずかりしましょう」


「そうか? じゃあ半分だけ預けていくわ」


 10万ギルぶんの金貨をオクタに渡すと、横からルギィがやってきてその金貨を奪った。


「じゃ、これは没収~」


「ハァ!? ルギィちゃん!? チョコミントよりも、お金!?」


「なに言ってんの? それよりトラくんさぁ……ギルドにいくら借金してるんだっけ?」


「うぎッ……!」


「返せるうちに返しとかないと、あとで苦労するよ~? 10万あれば死にはしないっしょ? てことで、これは返済にあてちゃおっか」


「そんなぁ……」


 俺はタンテになぐさめられながら、アジトへ向かってとぼとぼ歩きだした。


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