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第39話

 ティーチャーに拉致らちされた翌日、気を取り直して俺はひとりでギルドへ向かった。


 受付では金髪ギャルのルギィちゃんが暇そうに自分の髪をいじりながら枝毛を探している。仕事しろや。


「よぉ、ルギィちゃん。うちのタンテがもうそろそろ帰ってくるらしいんだけど、なんか伝言とか来てないか?」


「ちょうどさっき帰ってきたよー、ほらあそこ、オタクくん同士で盛り上がってる」


 ルギィちゃんが指さしたのは、ギルドのすみっこだった。

 受付でもなくクエスト掲示板でもなく、なにもないすみっこで、ギルド職員のオクタと、フードつきローブのフードを深く被った小さな男の子が立ち話をしている。

 顔は見えないがあの出で立ちはタンテだろう。


 それにしてもなんであんなすみっこにいるんだ?

 陽キャが自分のイスに座ってるから教室のすみに追いやられた陰キャみたいな哀愁あいしゅうを感じるぞ。


「……それでですな、ミウミウが拙者にむかって手を振ってくれたんですな! ぬほほ。あれはぜったい拙者にホレているでござりまする、はい、拙者完全勝利ィ~」


「それは勘違いだよ……! ぼくもミウさんから手を振ってもらったことあるもん!」


「ぐぬぬ、さすがショタっ子属性持ちのタンテ氏、手ごわいですな……。では、これはどうですかな? 実は拙者、ミウミウに手を握ってもらったことがあるのです! あの心配そうなまなざし129点、手のぬくもり3000点、合計23900点ということで拙者大勝利~」


「えー! それはズルいよ! 変態だよ!」


「へ、変態とはひどいでござる」


 こいつらキモいな。キモ会話をするためにわざわざすみっこに退避していたのか?

 二人とも早口で一生会話が終わらなさそうだったので割り込むことにした。


「おい、お前らいったい何の話をしてんだよ!」


「おや神ゴミ氏、ちょうどいいところに。ミウミウの魅力について語る会に参加されますかな?」


「しねぇよ。誰だよミウミウって」


「孤児院の院長をつとめる女性ですな。ちょうど先日20歳になられたところ」


「黙れ変態。あー、タンテ、ひさしぶり、それとお疲れ。それと馬鹿野郎。こんな変態と話してる暇があったらさっさとアジトに帰って来んかい!」


「ごごご、ごめんボス……ぼくもすぐに帰ろうと思ったんだけど、この変態に捕まっちゃって」


「ちょっとタンテ氏!? その変態呼ばわりは冗談ですよね!?」


 タンテは頭にかぶっていたフードを取った。

 髪も目も薄い茶色をしており、顔はかなり幼い。

 年齢は16歳だが、低い身長と童顔のせいで12歳くらいの子供に見えなくもない。


 ミウミウの話は置いといて、聞きたいことがある。

 タンテはその小さな体に加えてスキルも全然荒事には向いていないので、護衛としてうちのゴルケス・ガンダウマを一緒につけていたはずだ。なのに今はここにいない。


「なんでひとりで帰ってきたんだ? ゴルちゃんは?」


「それが……ゴルちゃんは途中で逮捕されちゃって……」


「はぁ!? なんで!? いや、聞かなくても理由は想像つくんだけど……一応聞いておこうか。なんで?」


「街中で裸になっちゃって」


「やっぱり!?」


 ゴルちゃんのスキルは強力で、うちのメンバーの中で一番戦闘力が高いといっても過言ではない。

 だが、欠点がある。発動すると強制的に全裸になってしまうのだ。


「街中でスキルを使わざるをえない状況になったってことか。盗賊でも出たのか?」


「魔物だよ。猫だった。猫の集団が草むらから出てきてね。最初はただの野良猫かと思ったんだけど、近づくと体が大きくなって襲ってきたんだ。ぼくなんて一口でペロリと食べられるくらい大きい奴もいた」


「大きくなる猫? そんな魔物がいるのか」


「それは曖昧猛虎あいまいもうこですな」


 横で聞いていたオクタが人差し指をたてながらそう言った。


「そんな魔物聞いたことないぞ?」


「フラウスにはおりません。ハンサイ固有種ですな。普段は普通の猫くらいのサイズで生活しておるのですが、獲物を発見すると体を巨大化させて敵に襲い掛かる好戦的な魔物です。最大で虎ほどの大きさになりますが……どのくらい大きくなるのかは個体により差がありまして、その大きさにより戦闘力も異なってきますので……『曖昧』猛虎というわけですな」


 説明どうも。

 それにしても、またハンサイかよ。昨日のドクソンといいハンサイはロクなことがねえな。


「え、ちょっと待て。まさかゴルちゃんはハンサイで捕まったのか?」


「うん、そうだよ」


 昨日ハンサイまで行ったのに! 二度手間じゃねぇか。

 ハンサイの国境をぶち抜いたのはオフレコだから口には出せないが……昨日この事実を知ってたらなぁ。

 ドクソンに頼んでなんとかしてもらえたか?

 いや、ただでさえ貸しを作ったのにこれ以上貸しを作るのはよくないし、いずれにせよ正規ルートで入国しないとダメだったか。


 昨日はティーチャーのイカレた身体能力があったからサクっと日帰り旅行ができたけど、本来は馬車で数日かけて行く距離だ。


 保存食とかも用意しないといけないし、今日明日で準備してから向かうことになるだろう。


「よし、事情はわかった。とりあえずアジトに帰ろう。タンテ、行くぞ」


「うん、わかっ……」


「ちょーっと待つでござる、ご両人! 申し訳ないのですが、タンテ氏には早急に受けていただきたいクエストがございまして……」


 出口に向かおうとした俺とタンテの腕をグイっとひっぱるオクタ。

 文句を言ってやろうかと思ったが、めずらしく妙に真剣な顔をしているので、ひとまず話だけは聞いてみようと思いなおす。


「実は……ミウミウから依頼を受けておりまして」


「ミウミウかよ! もういいよミウミウは! ハァ……まじめに聞こうと思った俺が馬鹿だった、行くぞタンテ」


「ま、待つでござる! ミウミウというより、孤児院からの正式な依頼です! 行方不明になった子供の捜索依頼なんですな」


 最初からそれを言えよ。


 話が長くなりそうなので、ギルドのすみっこから受付へと場所を変えた。

 あらためて説明してもらったところ、二日前に孤児院から迷子の捜索依頼が出されたらしい。


 王都の中でもスラム街に近い場所に存在する貧乏な孤児院であるため、依頼料は少ない。

 ギルダーからすると割に合わない仕事なので基本的には誰も受けないが、たまに善良なギルダーが市民やギルドからの信用を稼ぐために受けることもある。

 今回もそういった善良なギルダーたちがいた。


 ここ王都を中心に活動している『夜空教室よるぞらきょうしつ』という白三級パーティが依頼を受けたそうだ。


「なんだ、もう受注済みかよ。なら俺ら必要なくね?」


「それが……この二日間、いろんな場所を探していただいたのですがまだ見つかっておらず」


「おいおい、いなくなったのは子供だろう? 二日も見つかってないとなると正直生きてるか微妙なとこだぞ」


「そうなのです。なので、ぜひタンテ氏のお力をお借りしたく! あのスキルであれば、こういう依頼にうってつけでござろう?」


 うーん。同情はするが金にならんからなぁ。

 ボスとしてはすぐさまOKを出せないが、そもそもこの依頼をお願いされているのはタンテだ。

 まずタンテがどうしたいか次第だろう。


「ぼくは、この依頼やってみたいな。ミウさんの孤児院とは別だけど、ぼくも孤児院出身だしね」


「おぉ、タンテ氏、受けてくれるでござるか! 神ゴミ氏、ではよろしいですかな?」


 まぁタンテがやりたいって言うんならいいだろう。

 タンテは俺よりも喧嘩が弱いし、仕方ないが今回は俺も一緒についていくとしようかね。


 依頼の手続きを受注しようと思ったそのとき、後ろから急に声をかけられた。


「ちょっと待て! おい受付! その依頼は我々が受けているのに、そんなやからに頼む必要はない!」


「あっ……『夜空教室よるぞらきょうしつ』のみなさんではないですか。これはですね……」


 依頼書をオクタの手から奪い取ったのは、金髪をつんつんと立たせた背の高い男だった。

 背にはメイスを背負っており、どことなく服装もティーチャーに似ていて、軍服のようなデザインのものを着ている。

 その男の他にも3人の男が一緒に俺たちを取り囲んでいた。


「おい、お前。ギャングをやっているトラッシュとかいうやつだな?」


「おぉ? そうだけど?」


「お前ら黒タグの出番はない。とっとと地下へ行くなり、帰るなりすればいい」


 顔をしかめながら、しっしっと手を振る男。


 こいつはなんで俺のこと知ってんだ? どこかで会ったっけ?

 うーん、思い出せない。


 ていうか、感じ悪いな。

 こいつら俺のことナメてる?


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