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第29話

 急に腕をひっぱられてバランスを崩した俺に向かい、迫りくるナイフ……!


「……ふんぐッ!?」


 ガンッ、と強い衝撃が手に伝わる。

 とっさに『ゴミ箱』から出した木刀に暗殺者のふるったナイフが食い込んでいた。


 ――――――――――――――――

 木刀


 けんと君が修学旅行で買ったお土産

 先生に没収されてしまった


 刀はカラスのように鳴く

 鞘はひたすら沈黙している

 ――――――――――――――――



 けんと君ありがとう。

 木刀は男のロマンだよな。先生はロマンをわかってないよ。


「チッ、庭師のふりして護衛だったか、面倒な」


「ち、ちち、違いますけどぉ!?」


 暗殺者は木刀からナイフを引いて俺から距離をあけた。

 木刀にはざっくりと切り込みが入っており、あと1回受けたら折れそうだ。

 ナイフがすごいのか木刀がしょぼいのか。


「庭師、お前も裏の人間だな?」


 はい、ギャングですがなにか? なんでわかったんですか?

 沈黙する俺の顔を観察した暗殺者はニヤリと笑った。


「金貨100枚」


「……なに?」


「王子を渡せば金貨100枚くれてやる。裏ギルド経由だ」


「ほほう……」


 悪くないのでは?


 俺はチラりと王子の顔を見る。

 イケメンだね。でも生理的に無理なの。


「なッ、何を見ている! 貴様、金で王族を売る気か!? 僕を誰だと思っている。フラウス王国の第一王子、セトン・フラウスだぞ!? 庭師の命なんざ僕の髪の毛一本ほどの価値もないんだぞ!? いまここで僕のために命がけで時間をかせげ!」


 甲高い声で叫んだ王子は王妃ママンの後ろに隠れてしまった。

 これが俺の兄貴かぁ……これがこの国の次世代の王かぁ……。


 盾にされた王妃ママンもちょっと引いてますやん。

 王子はどうでもいいけど、俺が抜かれるとママンまで危険にさらすことになるんだよなぁ……。


 護衛の騎士たちも下手に動くと暗殺者を刺激すると判断したのか、微妙に離れた位置で立ち止まっており、こちらには来られなさそうだ。


 つまり、俺がコイツと戦うの?


「気が乗らねぇなぁ」


「交渉決裂か」


「害虫駆除も庭師の仕事ってことですかぁ?」


 ヘラヘラしていた暗殺者は表情を消し、地面に倒れこむようにして姿勢を低くした。

 そのままツバメのようなスピードで突撃してくる。


「……ひぃッ!?」


「特殊な武器かと警戒したが、ただの安物だったか」


 またしてもナイフを防ぐことには成功した……と思ったけど、木刀が折れてしまった。

 そして、そのまま受けきれなかったナイフが俺の頬を切り裂いた。


 痛い……!

 が、傷は浅い。まだやれる。まだ泣かない。


 折れた木刀を投げつけながら、俺はまた新たな木刀を『ゴミ箱』から取り出す。


 ――――――――――――――――

 木刀


 あるサラリーマンが旅先で買ったお土産

 嫁に怒られて捨てられた


 折れた角は刃となった

 胸に空いた穴は鞘となった

 ――――――――――――――――



「また木刀……? 妙なスキルだ」


「この世に男がいる限り、木刀が尽きることはない! 男はみんなサムライだからな……買っちまうんだよ、木刀をよぉ……」


「買った? スキルじゃないだと……? まぁどちらにせよたいしたことじゃない」


 音もなく移動する暗殺者。

 狙いは……ママン!?

 王族なら誰でもいいのかよ!


 てっきり俺か王子かに来ると決めつけていたぶん反応が遅れた。

 ママンを守るように最大限に手を伸ばしたものの、木刀はむなしく空振り。

 届かなかった? 違う! フェイク……!? 狙いは俺か!


 伸びきった腕を切りつけられた。

 痛みでおもわず手放した木刀は手の届かない位置に転がっていった。


「いってぇなクソったれ!」


「トラッシュ!」


「マッ……王妃様、お下がりください」


「でも、あなた血が!」


 ママン、あんたなんで俺の名前知ってんの? と場違いな混乱が頭によぎったが、右腕からしたたり落ちる血を見て冷静になった。

 いきなりの戦闘で頭に血がのぼりテンションがおかしくなっていたからな。

 瀉血しゃけつ治療だぜ。


 冷静になったとたん、身体がふらついた。

 貧血か?

 いや、そういえば、さっきから体がだるいんだよな……。

 だるいってレベルじゃねぇぞこれ……なんか……ヤバいやつ…………。


「先生……熱あるっぽいんで帰っていいっすか? インフルかもしれないっす……」


「ふっ、どうやら毒が効いてきたようだな」


「やっぱ毒かよ……ふっざけんな……」


 毒はまずいって。

 エピスもいないし、『ゴミ箱』には毒消しなんて有用なもの入ってない。


 悩んでる暇もどうやらなくなってきた。

 マジで今すぐ倒れそう。


 倒れる前に、せめてママンだけでも逃がしたい。

 かすみはじめた目で、何かこの状況を打破するモノがないか探す。


 すぐ近くにそれはあった。

 赤い布でおおいかくされて、そびえ立つ巨大なブツ。

 フラウス王国が用意した贈り物の中に俺が紛れ込ませた例のブツである。


「こそこそ動いていた騎士どもが配置につき終わったか……。つまり、こちらとしてもこれが最後のチャンス。もう遊びは終わりだ、死ね、庭師……」


「バ〇カイ……」


「バン? なんだ?」


「バン〇イ……金色玉こんじきたまなし地蔵!」


 暗殺者が困惑している隙に、さっと勢いよく赤い布を取り去った。

 あらわれる巨大なタヌキ……!


 ――――――――――――――――

 信楽焼タヌキ(一部破損)


 高さ2メートルのタヌキ

 信楽焼で作られている

 酒に酔った若者により金玉を破壊されてしまった


 忘れるために飲む酒は銀

 思い出すために飲む酒は金

 ――――――――――――――――


「なん……だそれは!? 魔物か!?」


 かわいそうに、金玉のあった部分にはぽっかりと穴が開いている。

 そして、その穴に王妃と王子をぶち込む……!


「きゃっ」


「ひゃわぁ! 触るな下郎!」


 無理やり腕をひっぱり、二人を穴の中に押し込んだ。

 信楽焼の中は空洞だし、これだけ巨大なら二人が入っても余裕がある。


 あとは俺がこの金玉ポジションを死守すればいいってことよ。



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