第28話
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聖女像(木彫り)
新光終教の聖女アモルス・ナルキッサを模した像
本物とは似ても似つかないが、
一般的にはこの姿が本物だと信じられている
詐欺師の舌は聖別された
血は智に、紙は神に
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しかし、この作品はどう評価すればいいのだろうか。
本物には似てないらしいけど、出来はよさそうだもんな。
すしざ〇まいの入口に置いてても違和感ないし。
あ、寿司食べたくなってきた……。
フレーバーテキストが不穏なのはいつものことだから無視するとして、説明文に変なところもないし、ただの木彫りの像なら危険物じゃないだろう。
木彫りのクオリティは高いし、無価値ではないだろう。
偽鑑定師に目を合わせて、うなずく。
そして神に祈りをささげながら、ドリコとブレイクの様子をチラ見する。
ドリコはブレイクの背中の上で立ち上がり、すしざ〇まいのポーズを取っていた。
なにやっとんじゃああああ!!
俺はすぐさま怒りの金視眼を高速連打する。
『ヤ・メ・ロ! オ・リ・ロ! コ・ロ・ス・ゾ・マ・ジ・デ!』
「えぇ!?」
それに反応したのは、当然、偽鑑定師だった。
そりゃそうなるよな? まったくお前は勤勉だよ。
偽鑑定師はすぐさま国王に危険を伝えたようで、国王もまた目を見開いた。
そして血相を変えて叫ぶ。
「大使殿! これは危険なものなのでは!? どうなっておるのだ!」
「は? はい!? なにをおっしゃるのです、ただの彫刻ですが……?」
混乱する状況に焦りながらも、俺は頭をフル回転させ、あらためて事前の打ち合わせを思い出す。
『危険物であれば目を5回以上光らせろ』
はい、たった今俺の目は5回以上光りましたね?
三三七拍子のリズムで光りましたね?
完全にアウトです。
国王を守るため護衛の騎士たちもあわただしく動き出している。
もう取り返しがつかない。
終わった……。
フラウス王国とエングランド帝国の友好はここに途絶える。
和平寸前の国同士を虚偽の報告により決別させた大悪党。
史上最悪のギャングチーム『神のゴミ箱』。
これで俺も立派なギャングスタだな。
ギャング王に俺はなる! って誓ったあの日の夢がかなっちまったぜ……。
いやいやいや。そんなの誓ったことないから。
存在しない記憶を捏造しながら現実逃避してる場合じゃない。
なんとかこの状況を撤回しないといけない。
偽鑑定師にアイコンタクトを取りたいが、あの野郎、パニクってこっちを全然見なくなっちまった。
クソッ、こうなったら……
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ファンサうちわ
推しの名前やメッセージを書けるうちわ
ボタンを押せば文字が消えるので、何度でもご利用いただけます
左うちわで暮らしていた彼も
今となっては剣を握りしめている
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『ゴミ箱』からファンサうちわを2枚出してそれぞれに、
『偽鑑定師くん♡』『こっち向いて♡』
と書いて、両手に持った。
キャーッと小声で叫びながら、偽鑑定師にむかってファンサうちわを小刻みにふってみるが、やはり全然こちらを見てくれない。
おい、お前を推してくれるのは世界でも俺だけだろ? こっち見ろや!
その間も事態は進む。
「我が国の鑑定師が危険だと判断した。その木彫りを少し調べさせてもらうが、よろしいか?」
「……なにをおっしゃっているのかよくわかりませんな。これはただの木彫りですぞ!?」
「ただ少し確認するだけだ。よし、やれ」
王の指示により、赤鎧を着た騎士たちがゆっくりと聖女像に近づいていく。
エングランド特命大使はおろおろしながら、その事態を見守っていた。
ピシッ……
「警戒!」「離れろ! なにか音がした!」「王を守れ!」
バキィッ!
木製の板が割れるような鋭い音が鳴る。
聖女像が縦に割れ、中から黒い影が飛び出した。
影はフラウス国王にむけ一直線に突っ込んでいく。
「危ないッ!」
王のすぐ近くにいた騎士がとっさに振り抜いた剣は、襲撃者のナイフをはじいた。
「チッ……ろくな鑑定師はいないと聞いていたが、情報に誤りがあったようだな。プランA、プランBともに失敗。プランCに移行する」
「なにを言ってるんだ……お前は誰だ!」
「大使……お前も使い捨てか」
黒い影の正体はエングランド側が仕込んだ暗殺者だったようだ。
しかし特命大使のほうは本気で混乱しているように見える。
友好なんてのは嘘で、エングランド側は初めからフラウス国王暗殺を目論んでいた。
おそらく、本来は国王が木彫りの聖女に近づいたタイミングで殺すはずだったんだろう。それがプランAか?
ところが、幸か不幸か偽鑑定師のはやとちりというか、俺のミスというか、ドリコとブレイクがアホなせいというか、彫刻が怪しいものだと疑われてしまった。
そこでプランB、無理やりにでも飛び出て殺すってところだろう。だが、それも失敗。
で、次はプランCだって?
いったい何個あるんだよそのプランは。
108個か?
てか、ちょっと待てよ、荒事なんて冗談じゃねえぞ!
ただ目ぇピカピカやってりゃ金がもらえる依頼だと思ったのに。
話が違う……逃げないと。
逃げ道を探すため俺はまわりを見渡した。
王様の周囲は騎士がたくさんいて安全そうだが俺があそこに近づいても守ってもらえないだろう。
むしろ怪しすぎて切られるまである。
王様から少し離れた場所には王妃と第一王子がいる。
警備の騎士は今まさに襲われた王に集中しており、王妃と王子の周りにはメイドくらいしかいない。
チャンス!
俺は、より警備の少ない王子のほうへ向かってこっそりと近づいていった。
マッマも王子も含めて全員、襲撃犯にくぎ付けで俺に気付いていなかったため難なく王子に近づくことができた。
あとはタイミングを見計らってダッシュで逃げれば俺の勝ち。
ドリコとブレイクは……檻で守られてるし大丈夫だろ。
あとで助けるからよ!
捨て犬みたいな目でこちらを見ている二人に手を振り、いざ逃げようかと思ったそのとき、すぐ近くから叫び声が聞こえた。
「ひゃわあぁ!! くっ、来るなぁぁ!!」
ふいに俺の腕が強く引っぱられる。
「うわっ」
ガクンとバランスをくずし、たたらを踏んだ俺が顔をあげると、目の前にナイフが迫っていた。




