表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/41

第27話

 落ち着け。

 落ち着くんだ、トラッシュ。

 戦場では焦ったやつから死んでいくんだぜ?


 ふむ。美男子と人面馬じんめんばね。

 なるほどなるほど。


 見たことある気がするな~。

 いや、他人のそら似か?


 って、そんなわけあるか!


 ドリコはともかく、ブレイクみたいな奇妙な生き物はあいつ以外に見たことない。

 もしかしたらエングランドの奥地にも人面馬が生息しているのかもしれないけど、少なくともあのおっさん顔はブレイク一択なんだよな。


 つか、なんであいつら捕まってんの!? しかも他国のお偉いさんに。

 昨日、バナナスだかゴリラズだかのクエストで港町にむかったはずだよな?


「えー、オッホン! こちら、世にも奇妙な人面馬とその飼い主でございます」


「大使殿、いまバケモノと……」


「いえいえ、とんでもない、非常に価値のあるものです。ゲフン、ゲフンゴホン! それよりも、次の品に参りましょう!」


 わけがわからねぇが、とにかくあとで王様パッパにお願いして解放してもらおう。


 エングランドの大使はごまかすようにして、次の品の青い布を急いで取りさった。

 でてきたのはカボチャだった。


 また野菜かよ。エングランドは農業がさかんなのか?


 濃い緑色の皮のカボチャは半分に切られており、中には黄色い果肉が見えている。おいしそうだ。


 ……ちょっと待てよ?

 もしかして、このカボチャも飛んだり爆発したりするんじゃねぇだろうな?


 少し怖くなった俺は急いで金視眼を発動した。


 ――――――――――――――――

 翠玉南瓜すいぎょくかぼちゃ


 翡翠ヒスイを南瓜の形に彫刻した美術品

 大きさもさることながら、緑と黄色の配色バランスも完璧な逸品


 南瓜は坂道を転がり割れました

 農夫も坂道を転がり割れました

 ――――――――――――――――


 あれ翡翠でできてんのかよ。

 どう見てもカボチャだぞ。技術のムダづかいすぎるだろ。

 前世の中国にも白菜とか豚の角煮みたいな彫刻があったけど、こっちの世界にも同じような変人がいるんだな。


 ほー、と感心していると、必死に目くばせをする偽鑑定師と目が合った。

 そういえば仕事中だったわ、俺。


 これは文句なしのお宝だろう。

「うむ」と自信満々でうなずいてやった。


 ――ガチャガチャガチャッ!


 その時、静かな庭に大きな金属音が鳴り響いた。

 庭中の視線が音のなるほうへ……檻の中へ集まる。


 ドリコとブレイクが必死な顔で檻にすがりついていた。

 しかも俺のほうをガン見しながら。


 なにやってんだあいつら!?

 後でどうとでもしてやるから大人しくしてろよ……!

 あとこっち見んな。

 今の俺は国の威信いしんをかけた極秘作戦中だぞ?


 奴らはガッチャンガッチャン檻をゆらしながら、まだこちらを見つめていたので、俺が『静かにしてろ』という意味をこめて首を横に振った。


「えっ!?」


 それに反応して声を上げたのは偽鑑定師だった。

 違うって。今はあんたじゃねぇんだよ。

 クソッ、あいつらのせいでややこしいことになってきたな……。


 俺は再度、偽鑑定師にむかっておおきくうなずいた。


 ガチャガチャッ!


 またしても反応するドリコとブレイク(うちのアホども)


 違うから! お前らじゃないから!


 もういい。

 話が進まないので、アホどもはいったん無視することにしよう。


 偽鑑定師は怪訝な顔をしながらも、国王にうなずいた。


「大使殿、このカボチャは……なにやら良いもののようだな。そちらの馬も……馬か? とにかく、馬も興奮しておるようだ」


「ウッ、馬の話はもうよしましょう! それより、さすがフラウス国王、お目が高い。この翠玉南瓜すいぎょくかぼちゃはなんと翡翠でできておりまして……」


 エングランドの大使が早口で説明しはじめた。

 ナイスだよ、今はお前だけが俺の味方だよ。


 横目でチラっとドリコとブレイクを見ると、大人しくはしているが、俺のほうをガン見している。

 この後、何品鑑定すればいいのだろうか。

 そして、そのたびにあいつらの反応にやきもきすればいいのだろうか。


 とにかくじっとしてくれればいいんだ。

 それを伝えたい。


 しかし、首をふったりすると偽鑑定師も反応するし……。

 偽鑑定師を見ると、特命大使の説明を「知ってますけど? 今、鑑定しましたからね?」みたいなおすまし顔でふんふん聞いていた。


 チャンスか?


 今のうちにと考えた俺は、ドリコたちにむかって、「静かにしてろ」という意味をこめて人差し指を口の前に持っていった。

 さすがにこのジェスチャーなら伝わるだろ。


 ドリコとブレイクは目を見開いた。

 そして力強くうなずく。


「ふぅ……さすがに伝わっ」


 ドリコはそっと、静かに、ブレイクの背にまたがった。


 そうきたかぁ……なるほどなぁ……。


 どういう解釈?


 俺の人差し指にだけ注目したの?

 上がれ、と。

 そう見えたの?


 さいわい、その動きには誰も注目しておらず、ドリコもブレイクにまたがった後は静かに待機しているため、式典は無事に進行していく。


「続いてはこちら。エングランドでいま一番話題の彫刻家による作品でございます」


 次に、青い布の下から出てきたのは、木ぼり彫刻だった。

 ふくよかな女性が両手を広げてほほえんでいる。

 すしざ〇まいとマツコデ〇ックスのコラボ作品かな?


 ――――――――――――――――

 聖女像(木彫り)


 新光終教しんこうしゅうきょうの聖女アモルス・ナルキッサを模した像

 本物とは似ても似つかないが、

 一般的にはこの姿が本物だと信じられている


 詐欺師の舌は聖別された

 血は智に、紙は神に

 ――――――――――――――――


 ナルキッサ?

 誰だっけ……確か前にも金視眼の説明文の中で見た気が……。

 そうだ。ポーションだ。


 エピスが作ったポーションじゃなく、教会が独占販売しているポーションを鑑定したときに、ナルキッサがどうのこうのと書いてあった。


 みんな『教会』としか呼ばないし、俺も宗教に興味がなかったから知らなかったけど、新光終教という名前の宗教らしい。

 気味が悪い名前だ。


 おっと、また偽鑑定師が泣きそうな顔してこっち見てる。

 ナルキッサとやらの存在も気になるが、今は仕事をしないと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ