第26話
~ トラッシュ side ~
王城の庭では、友好式典が続いていた。
フラウス国王の長い話が終わったあと、エングランド特命大使のちょっと長い話が始まった。
そのあとは、お偉いさん同士の会談がおこなわれている。
俺はといえば、庭師のかっこうをしたまま土いじりをしている。
花という花に水をやり、これ以上水をやるのも不自然かと考えたので、そのあとは花壇にはえた雑草を抜いたり、エサを運ぶアリの邪魔をしたりして暇を潰していた。
アリからの反撃をくらったので、次の遊びでも探すか……と腰をあげたところで、ようやく俺の出番がやってきたようだ。
「それでは、ただいまより、友好記念品の交換をとりおこないます!」
王城の召使いや騎士たちが、大小さまざまな荷物を庭の中央へ運んでくる。
我らがフラウス王国側の荷物には赤い布が、そしてエングランド側の荷物には青い布がかけられて、まだ中は見えない。
しかし、その時点でエングランド側の荷物のほうが大きいし、数も多いことが見て取れる。
特命大使はチラチラと荷物を見ながら、金色の七三分けとチョビ髭をなでつけなでつけ、「うちらのブツのほうがデカいですけど?」みたいなドヤ顔をしている。
フラウス国王はそれに気づきつつも、すまし顔でスルーだ。
……おいおい、パッパよ?
一国の王様がそれでいいんか?
男が『デカさ』勝負で負けたら終わりだぜ?
なめられたら終わりなのは、ギャングも国も変わらないだろ?
OK、OK、了解だよ。
デカさ勝負ね?
ならいいものがある。
俺は、すすすっと忍者のように移動し、すまし顔で荷物を運ぶ人員にまぎれこんだ。
そして、フラウス王国側の赤い布の下に手を突っ込んだ状態で、スキル『ゴミ箱』の中から、とあるブツを取り出した。
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信楽焼タヌキ(一部破損)
高さ2メートルのタヌキ
信楽焼で作られている
酒に酔った若者により金玉を破壊されてしまった
忘れるために飲む酒は銀
思い出すために飲む酒は金
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これだ。
突如としてモッコリと怒張する赤い布。
「「「おぉ!?」」
「……クッ……あいつッ……!!??」
ざわめく大衆。
ブチ切れる国王。
首が折れるほどのスピードでこっちを向いたフラウス国王は口パクで、
『ブ・チ・コ・ロ・ス』
と無言の絶叫をくり返していた。
ま……まぁまぁ、落ち着きなよ旦那、仕事はちゃんとやるからさ。
みんなが巨大なアレに目を取られている隙に、俺は元のポジションに戻った。
「まずは我がエングランドの特産品を見ていただきましょう」
特命大使のその声で青い布が取り払われた。
布の下には大きな木箱があった。
その箱を開けたとたん、数本のニンジンが勢いよく飛び出した。
「なッ……!! 陛下!!」
思わず護衛の騎士たちがフラウス国王をかばうようにして前へ出る。
が、ニンジンは国王まで届かずに、空中に静止していた。
よく見ると、ニンジンは紐でしばられており、箱の中にある重りかなにかと結びついていて、一定の距離以上は離れられないようにしてあった。
「ほっほっほっ。ご安心ください、フラウス国王。ただの野菜でございますれば」
「……大使どの、お戯れがすぎるのでは?」
国王が大使をにらみつけたあと、チラリと偽鑑定師に目くばせをした。
そして、偽鑑定師はひきつった顔で鑑定をする……ふりをしながら俺へと目くばせをした。
了解、金視眼の出番ってわけね。
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ジェットニンジン
成熟すると飛んで逃げるため収穫が困難
非常に美味
あなたも空を飛ぶ夢をみたことがあるだろう
唄に唄われたあの鳥は本当に鳥だったろうか?
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あの紐を外すとどこかへ飛んでいくってことか?
まぁ、いくら飛ぶといったってニンジンだ。
危険はないだろう。
俺は事前に偽鑑定師との間で取り決めたルールを思い出した。
『良い品物であればうなずけばいい』
『無価値なものであれば首を横にふれ』
『危険物であれば目を5回以上光らせろ』
こんな感じだ。
ジェットニンジンは非常に美味とのことだ。値打ちものだろう。
俺は偽鑑定師にむかって、うなずいた。
そして、偽鑑定師はホッとした様子で国王にむかってうなずく。
「うむ、よさそうな品だ。それで、これは?」
「ジェットニンジンでございます。煮ても焼いても生でもおいしいと評判でして。飛んで逃げるという妙な特徴もありますが、このように紐でしばっておけば問題ありますまい」
「ふむ、まぁよいわ。しかし……3本だけか? 箱の大きさのわりに本数が少ないようだが?」
「そ、それは……実はですね、ここへ来るまでの道中、不幸なトラブルがありまして……持ってきた大半が空を飛んで逃げてしまったのです」
へぇ、不幸なトラブルねぇ。
どこぞのアホな盗賊かギャングにでも襲撃でもされたか?
騎士が護衛する馬車を襲うなんて自殺行為すぎるだろ。
そいつらはアホだな。
親の顔が見てみたいぜ。
「続いては、こちらです」
特命大使は次の品物の紹介にうつった。
次はかなり大きいブツのようだ。
青い布の下には人が余裕では入れそうなくらいの大きな箱型の何かがある。
エングランド側の用意したモノの中で一番大きいんじゃないか?
青い騎士たちが勢いよく青い布を取りさった。
出てきたのは箱ではなく檻だった。
頑丈そうな檻の中には、金髪碧眼の美男子と、人面馬がとらえられている。
美男子も人面馬も鎖のついた首輪をかけられており逃げられそうにない。
ご丁寧に、口に猿ぐつわまでされて喋れないようだ。
「大使殿……これは?」
「これは……!? 違いますぞ! ふ、不手際ですな。コラ、騎士ら、大事な式典の場に、なんでこのバケモノどもまで持ち込んだのだ!」
なんかあのバケモノ、見たことがある気がする……。
気がするだけだよな……?
そうだよな?




