表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/50

第23話

 ~ トラッシュ side ~


 偽鑑定師の依頼を受けた翌朝、オジキに紹介された衛兵に連れられて王城に入った俺は、綺麗なメイドさんたちによって素っ裸にされたあと、庭師のような服装に着替えさせられた。

 念のため王族の特徴である黒髪も白いバンダナでおおって隠してある。


 そして昼になった今、王城の庭の片隅で、俺は後方腕組みおじさんと化して、フラウス王国とエングランド帝国の友好式典の始まりを待っていた。


 庭の中心あたりは広い芝生があり、今回の式典のようなイベントスペースになっている。

 そして、その芝生を囲むようにして、花や木々が植えられており、美しく整えられている。


 芝生にはフラウス王国とエングランド帝国の人々が集まっていた。


 まず、我らがフラウス王国の国王にして、俺を捨てやがったクソ親父でもある、アイン・フラウス。

 こうやって顔をまじまじと見るのは、捨てられた赤ちゃんのころ以来なんだが……いやぁ、ふけたね。

 兄弟であるオジキとは違ってふさふさの黒髪は健在だが、白髪もまじりはじめているし、目尻にもシワがある。

 てか、王様は全然ハゲてねぇじゃん。

 オジキはなんであんなにハゲてるんだよ。ほんとに血がつながってるのか?


 そして、国王の隣にいる青髪青眼の美人はミリヤム・フラウス。

 王妃であり、俺の母親でもある。

 こっちはあんまりふけてないな。あいかわらずお綺麗だ。


 ママンの隣には、長い黒髪をオールバックにした青年が「はやく終わらねぇかなぁ」みたいな顔をして、だるそうにつっ立っていた。

 あいつがフラウス王国第一王子、セトン・フラウスなんだろう。


 はじめて見たけど、俺の兄貴だ。

 整ってはいるけど、なんかイラっとくる顔をしている。

 生理的に無理ってやつだわ。

 目が青いのも気に食わないね。ママンの遺伝子をしっかり受け継ぎやがって。


 俺は髪も目も黒で、ママンの要素ゼロだったんだぞ!


 とにかく、王家が勢ぞろいしている。やはり大事なイベントなんだろう。


 そして、そんな王族から少し離れた位置には、赤で統一された鎧を着込んだ騎士たちがいる。

 フラウス王国騎士団である。護衛だな。


 赤はこの国を象徴する色みたいなもので、王家の人間たちが来ている服も、赤色をベースとしてデザインされている。

 かつて、乱れに乱れたこの国を圧倒的暴力でまとめあげた初代国王が、建国宣言をしたときに着ていた服が返り血で真っ赤だったので、そのまま正式な衣装にも赤色が使われるようになったとかなんとか……ってのを、スラム街の酒場で聞いたことがある。


 確かクエルボ爺さんが教えてくれたんだったか。

 ちなみにクエルボ爺さんは手が震えまくって酒を半分くらいこぼすような重度のアル中なので、話半分で聞いておいたほうがいい。


 それにしても、第一王子くんさぁ、ギャングの俺がいうのもなんだが、こういう式典の場でぐらいシャンとまっすぐ立ちなさいよあなた。


 俺の姿を見てみ?

 腕を組んで、ビシっと胸を張ってさ。

 ラーメン屋の店主かってくらい堂々としてるぜ?


 俺がそんなことを考えながら第一王子セトンをにらんでいると、エングランド側の一番えらそうなおっさんがこちらを見ながら、フラウス国王と話し始めた。


「あの、フラウス国王」


「なんですかな、エングランド特命大使どの」


「あそこに不審な人物がいるようですが……?」


 不審な人物?

 そんなのどこにいるんだよ。

 俺はちゃんと木陰に隠れてるし、この服装を見てわかるとおり、どう見ても庭師だろうが。


「……あれは、庭師ですな」


「庭師、ですか……それにしては態度が大きい気が……」


「……ウォッホン! ンン゛! ンン゛!」


 王様がすごい形相でアイコンタクトを飛ばしてきた。

 ははーん。わかる。わかるぜ、その意味アイコンタクト

 俺も『神のゴミ箱(チーム)』のアホどもに対してよく使うからなぁ。


 つまり、


『コ・ロ・ス・ゾ』


 だな?


 俺は自分のスキルである『ゴミ箱』からぞうさんジョウロを取り出し、すぐそばにある花壇かだんの花に水やりをはじめた。

 ジョウロは赤色のやつをチョイスしたよ。俺だってフラウス王国の一員だからさ。


 ――――――――――――――――

 象さんジョウロ(赤)


 象の形をしたジョウロ

 子どもの水やりデビューに最適


 ただ一輪の花に水をやるため

 世界のすべてを踏みつぶした象がいた

 ――――――――――――――――



「ほら、あのとおり、ただの庭師ですな。仕事熱心なやつでして、式典があるというのにどうしてもこの時間に水やりをしなければならないと訴えるので」


「ははぁ、確かに見事な花壇ですな。エングランド帝国では見たことがない花も……」


 ふぅ。なんとか乗り切ったか。

 しかし、式典開始前から相手側の一番お偉いさんに目を付けられてしまったな。

 これじゃあ、うちの連中に文句言えねぇや。


 引き続き、パンジーみたいな花に水をちょろちょろかけながら、エングランドの人間をチラ見する。


 まず、目ざとく俺を見つけたのが特命大使と呼ばれていたように、今回のエングランド側のトップだろう。

 七三分けの金髪とちょび髭が神経質そうな印象のおっさんだ。


 そのおっさんの横にくっついている気弱そうな青年が鑑定師だろうか。

 おっさんも鑑定師も青色の少し豪華な服を着ている。


 そんな彼らを後ろから守るようにして、青い鎧を着た騎士たちがいた。

 鎧のデザインもうちとは違うようで、フラウス王国の赤鎧は細身で動きやすさ重視な印象、エングランドの青鎧はゴツめで守り重視な印象が見受けられる。


「それでは、ただいまより、フラウス王国ならびにエングランド帝国の友好式典を開始いたします!」


 おっ、やっと始まったな。

 確かお宝交換は挨拶とかありがたいお話が終わった後にやると聞いているので、俺の出番はまだだ。


「まず初めに、フラウス王国、国王アイン様より、挨拶があります」


「えー、本日はお日柄も良く……」


 王様にしてはフランクすぎる挨拶が始まった。


 お日柄はいいね、確かに。

 夏から秋に変わってきて涼しいし、晴れてるし、ちょうど気持ちいい天気だわ。


 国王の挨拶を聞き流しながら、ふと中庭の一角を見ると、両国の騎士たちが守るように配置されているスペースがあり、そこには大量の荷物が置かれていた。

 上等な布がかけられて、中が見えなくなっているが、あれがお宝たちだろう。


 お宝を目視できないので、俺の金視眼きんしがんでもまだ鑑定はできない。

 大人しく待つしかないか。


「……我々とエングランド帝国との関係は長く。古くは百年以上前までさかのぼり……」


 それにしても、エングランドの荷物、デカくね?

 ご丁寧に荷物にかけられた布も赤と青でわけられているので、どちらの国の宝なのかがわかる。


 うちの赤色の布の下にあるのは、木箱が十箱がニ十箱ぶんくらいか?

 正確な数はわからないが、だいたい同じような大きさの箱が積まれている。


 それに比べて、エングランド側の青色の布は、やけにデコボコしている。

 普通サイズの箱とは別に、やたらデカい箱が1つあるし、それ以外にも、通常の箱に収まらないようなお宝がいくつかありそうだ。


 いやぁ、気合い入ってるねぇ。

 いったいどんなお宝を持ってきたのか、鑑定するのがちょっと楽しみになってきたな。


「……そして、最近では教会本部のあるルミエール教国の動きもなにやら……」


 それにしても、国王の挨拶なげぇな。

 校長先生じゃないんだから、3行くらいにまとめとけよ。

 女の子が貧血おこして倒れちゃうだろ。


 俺もアイツの遺伝子をついでいるわけだし、年を取ったら話が長くなっちゃうんだろうか?

 お日柄もよく~とか言っちゃってさ。


「……両国間では悲しい出来事もいくつかあり、関係が悪化していた時期もあるが……」


 いや、まだ続くんかい。

 この後、エングランド側の大使とやらも挨拶をするんだろ?

 暇だなぁ。

 こんな良い天気なんだから、どっか遊びにでもいきたいぜ。


 ってか、実際、フラウ(お嬢)たちは遊びにいってるんだよなぁ、俺のポケットマネーで。

 くっそー、なんでボスである俺がまじめに働いてるのに、手下どもは遊んでやがるんだ? 


「どうしてこうなっちまったんだろうなぁ」とぼやきながら、俺は秋の高い空を見上げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ