第18話
ドラッグマの出現ポイントに到着した後、油断せずじっくり時間をかけて観察したが、どうやら奴は今ここにいないらしい。
「ふぅ……。よし、肉丸。今のうちに作戦会議だ」
「ミ」
「まず俺が広場の真ん中にあるデカい木に登る。その後、あの木の幹と木の周りの地面をぬるぬるにしてくれ」
「ミーミー」
了承の返事をしたとたん走り出そうとした肉丸の顔面を握りしめて止める。
ぬるぬるだから握りつぶす勢いでやらないといけない。
「まだ説明の途中だ! それでだな、俺は木の上で待機する。肉丸は広場には出ず、今と同じようにこのあたりの木に隠れておいてくれ」
「ミー」
「そのままドラッグマが現れるのを待つ。奴が現れたら、お前も奴の前に姿を現してくれ。陽動だ。逃げ回るだけでいい」
「ミーッミミミーミミ」
「え? 倒してもいいかって? いいけど……」
お前攻撃力ゼロだろ?
どちらにせよ陽動にはなるから、なんでもいいか。
「お前が気を引いている間に、俺は隙を見はからって、木の上からこいつで攻撃する」
俺はおもむろにズボンのチャックをおろした。
ボロンッと飛び出たのは黒光りする銃である。
「ミィッ!?」
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俺のマグナム
某国のスパイ機関が発明した非常時用の銃
研究者とスパイの見栄が先行した結果
サイズと威力と反動がどんどん大きくなり
実用不可能な代物になってしまった
少し小さすぎないか? 俺のはもっと大きいぞ?
おっと失礼、では私のサイズで作り直します
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『ゴミ箱』に入ってた。
普通の銃とか入れといてくんないかな。
どういう仕組みかわからないが、股間に装着して腰を前後に動かすことでしか引き金を引けないらしいんだ、これ。
「まだ一度も使ったことがないけど、こいつの威力はなかなかのもんらしい。一発でも当てればドラッグマの動きくらいは止められると考えてる」
「ミー」
「ホントだっつの。それで死んでくれればよし。死んでくれなくても、動きを止めている間に俺がエピスからもらった例のブツをドラッグマの口に投げ込む。相手は死ぬ。作戦は以上だ。何か質問は?」
「ミーミ」
よし、完璧だ。
「来た!」
木の上で待つこと1時間ほど。
のそのそと、ふらふらとあらわれたのは一匹の黒いクマだった。
身長はクマのわりに小さい気がする。
俺と同じくらいか?
顔と、腹のあたりについたポケットは白色で、それ以外は黒い毛におおわれている。
そして、なぜか二足歩行で歩いている。
腹のポケットに片手をつっこんでダルそうに歩いている姿はおっさんのようだ。
広場にあらわれたドラッグマは、俺がいる木にむかってまっすぐ歩いてきていたが、途中で立ち止まったかと思うと、ポケットからとりだした緑色のナニカを自分の口の中に放り込んだ。
そしてクッチャクッチャと咀嚼したかと思うと、ビクンビクンッと震えて、
「ア゛ァ~~~~!!」
「声までおっさんじゃねぇか……バキバキにキマってるし、怖すぎだろ……」
ダウナー系ならよかったんだが、あのハッパはアッパー系のようで、さっきまでだるそうにしていたドラッグマが急に大声を上げながら地面をぶったたき始めた。
あのテンションで俺がいる木までたどり着かれると怖いので、俺は金視眼をピカピカっと発動して、肉丸に合図を出した。
合図を見て、肉丸が飛び出していく。
「ミーミィ!」
「ア゛ァ?」
肉丸が挨拶をすると、ドラッグマはスンッと真顔になった。
そして、ポケットからドロドロになったハッパを取り出すと、ものすごい笑顔を浮かべながら肉丸に差し出した。
「キモッ! クマの笑顔ってキモいんだな……」
オクタくんの説明通り、本当にドラッグをすすめてくるらしい。
おい肉丸、それヤバイドラッグだから絶対食うなよ! と俺は小声で叫んだ。
「ミーミッ!」
肉丸が飛び跳ねて、ドラッグマの手からドラッグを叩き落とした。
「ア゛……? オア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
「肉丸! 逃げろ!」
「ミィッヒー」
ドラッグマのことをあざ笑いながら逃げ回る肉丸。
追いかけるドラッグマは口からよだれをだらだら流しながら全力疾走している。二足歩行で。
絶対四足歩行のほうが速いだろうに……そのおかげで、肉丸は余裕を持って逃げているから助かるけど。
肉丸はジグザグに走ったり、攻撃力ゼロの蹴りをかましたり、体液でドラッグマを転ばせたりしながらおちょくりまわしている。
いい感じだ。
そろそろ俺も仕事をしないとな。
太い枝の上で、そろりと立ち上がった俺は、腰に手を当てて『俺のマグナム』でドラッグマに狙いをさだめる。
「くっそ、いつものマイサンと射程が違いすぎて全然狙いがつかねぇ」
ドラッグマの動きが速すぎるし、まだ距離が遠い。
そうやって引き金を引けないまま時間がすぎていく。
と、その時、ドラッグマがある地点で派手にずっこけた。
そこは肉丸エキスがまき散らされたエリアだった。
つまり俺がいる木にもかなり近い距離だ。
チャンス!
俺は狙いを定めて、腰をカックーンと一振りした。
バアァンッ! という音とともにとんでもない衝撃が俺の股間を襲う。
「ぎゃああぁぁ!」
「オア゛ァァァ!」
「ミーッヒッヒッヒ」
マグナムをぶっ放した反動で木の上から吹っ飛ばされた俺は、体操選手みたいにキリモミ回転しながら落下していく。
おーっとトラッシュ選手、着地に失敗!
顔面を地面に強打しましたが、大丈夫でしょうか?
大丈夫じゃねぇ!
いや、顔の痛みはそれほどでもないんだけど……チ〇コが! チン〇が爆発した!
「チ〇コなくなったかもしれん……女の子になってもうた……」
地面に寝転がったまま、『俺のマグナム』をいったん『ゴミ箱』の中へ回収した後、すぐにズボンの中へ手をつっこんだ。
おそるおそる触ってみると、そこには生まれたてのハリネズミみたいに可愛い息子が!
「あった! よかったぁ~」
「ミヒッ、ミーッヒッヒッヒッヒ」
「え? 前歯がどうしたって?」
今度は前歯を確認。
ない!?
上の前歯が二本折れてる。
「いや落ち着け。落ち着くんだトラッヒュ。チ〇コが無くなるより断然ましだろう!? それよりクマは!?」
「ア゛ァァ……ア゛ァ? ア゛ァ? オア゛ァアアア!」
「い、生きてますやん……キレてますやん……!」




