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第17話

『【討伐依頼】ドラッグマの討伐【薬物注意!】』


「ドラッグ、マ……? 聞いたことない魔物だな。それに、なんだこの注意書きは」


「ドラッグでラリったクマですな。お腹あたりにポケットがあって、そこにハッパラパーという植物の葉っぱを入れる習性がありまして、ポケット内部には特殊な体液が分泌されており、それに浸された葉っぱがいい感じに熟成されて、最終的に強力なドラッグができあがるという寸法です。そのドラッグでいつもラリってるクマでござる。人間を見つけると。まずポケットから出したドラッグを勧めてくるのでござるが、それを断ると狂ったように襲ってくるでござるよ。ドラッグを受け取って一緒に使えば襲われないそうですが、人間が使うには強力すぎて廃人になるらしく要注意というわけですな」


「早口すぎる。つか、表のギルドで扱っていい依頼じゃないだろ! これのどこがちょうどいい依頼だと思った!?」


「健全なギルダーが薬中にならないよう早急に駆除しろと上から言われておりましてですな。裏にも顔を出しているような健全からはほど遠い神ゴミの皆さまなら喜んでくれるかなと思いまして」


 うちは殺しと薬はやらない方針なんだよ。

 そりゃまぁ、エピスがよく変な薬は作ってるけど、致命的に危険なものは作ってないはずだ。


 それにしてもこの依頼……裏だと高くつくから表に回しただけだろ。

 どうせドラッグマの死体を買い取ったあとは裏に回してポケットのドラッグもきっちり金にするに決まってる。


「こんなヤバいやつ俺らで倒せるわけないだろがっ」


「ミーミーミ。ミーミーミ!」


「肉丸が守りで俺が攻め? お前は無傷ですむだろうけど、俺は一発でも殴られたら死んじゃうよ?」


「ミーミミィ」


「別にいいって?」


 ひどいよ。

 ルギィちゃんが、「トラくんが死んだらうちにおいで~」とか言いながら肉丸に謎の肉を食べさせる。ひどいよ。


「ルギィ氏、それはさきほど買い取った角ウサギの肉では? また怒られるでござるよ」


「オクタくんがおやつに食べたことにするから問題ないっしょ」


「う~ん、拙者がギルドマスターに殴られる痛みでマイナス13点、同僚から生肉を食うバケモノ扱いされる悲しみでマイナス2点、その後ルギィ氏になぐさめられることにより喜びポイント789点……総合的に判断すれば100点満点で合格ということになりますなっ、ぬほほっ」


「オクタくんやさしー」


 だからどういう計算なんだよ。

 計算ドリル買ってこい。



 その後、肉丸をなだめながらいろんな依頼を探したが他によさそうなものもなかったので結局ドラッグマ討伐依頼を受注することになった。



 俺たちは一度アジトに戻り、エピスに泣きついた。


「てなわけで、エピス。クマぶっ殺し薬みたいなものはないか?」


殺鼠剤さっそざいみたいな? そんなのないよぉ。人を殺せるやつならあるけどぉ」


「捨てなさい、それは」


 うちは殺しはやらないって言ったよね?


 依頼書を見せながらエピスにドラッグマの生態について説明していくと、いつもヘラヘラしているエピスの顔がどんどん真顔になっていった。


「ボスぅ……うちは危険な薬は扱わない、そういう方針だよね?」


「お前が言うなよというツッコミは置いといて、そうだな」


「このクマを討伐した後、ポケットに入ってるドラッグはどうするつもり?」


「それは……」


 いつになく真剣な顔のエピス。

 彼女は幼い頃に両親をなくしている。

 母は病気で、そして父は危険薬物のオーバードーズで。

 妻を失った悲しみに耐えられず危険な薬物に手を出してしまい、少しずつ量が増えていったそうな。

 そんな家族の姿を間近に見ていたエピスは、危険な薬物を嫌っている。


 俺としてもドラッグなんて近づかないにこしたことはないと考えているので、メンバー全員に手を出すなよと命令している。


「ポケットに入ったもんは俺が回収してあとで処分する。ドラッグがなくなったからって報酬が減ったりはしないしな。なんせ健全な表の依頼だ」


「それならいいよぉ! 絶対クマぶっ殺し薬を作ってみせるからねぇ。ちょっと待っててねぇ」


 エピスはスキル『気まぐレシピ』を発動し紙に材料などを書きなぐった。

「これならすぐできるねぇ」と、つぶやいたあと、いそいそと自分の部屋兼錬金工房に閉じこもった。


 10分ほど待っていると、エピスの部屋から、ドンッ! という爆発音が聞こえてきた。

 ボロいアジト全体が揺れ、天井からホコリがぱらぱらと舞い落ちてくる。


「またやりやがったな……エピス! 生きてるか!?」


「ふぅ、アイタタ……なんとかできあがったよぉ。あーあ、また白衣がボロボロになっちゃったよぉ」


 部屋から出てきたエピスは白衣がビリビリにやぶけて、ほぼ黒い下着だけの状態だった。

 いつもはつやのある緑の髪の毛も、今はボサボサに乱れている。

 メガネはずれ落ちているものの、ひび割れたりはしていない。


「お前の白衣代にいくらかかると思ってんだ。メンマ代にせまる勢いだぞ」


「メンマは知らないけど、ボスにもらった下着とメガネは本当に頑丈だねぇ。これのおかげで裸にもならなくなったし、視力も落ちなくなったよぉ」


「感謝はいいから白衣をさっさと着てくれ」



 ――――――――――――――――

 アダマンタイト・メイデン


 とある女神の髪の毛を編んで作られた下着

 一生独り身だった女神の怨念がこめられている

 自分の意思以外で外せないし破壊もできない


 この髪を抜いて抜いて抜いて抜いて下着にしようと

 触って触ってもらうあなたに触ってもらう触って

 ――――――――――――――――



 ――――――――――――――――

 神牛乳シン・ギュウニュウビン底メガネ


 豊穣の女神が営む牧場で販売されている神牛乳シン・ギュウニュウ

 神牛乳ビンのビン底を加工して作られたメガネ

 度数と強度は最強クラス


 神牛は牧場のさくをこえられない

 柵の出口を探すにはメガネがなくてはならない

 ――――――――――――――――



 ふたつとも俺の『ゴミ箱』に入っていた。

 爆発のたびに全裸になっていたエピスの姿は刺激が強すぎたので、このちょっと怖い下着をつけてもらった。

 今のところ怨念の影響とかはないらしい。


 また、何度も錬金失敗による爆発をもろに顔面で受けていたエピスの視力はかなり悪くなっていたので、これで目を保護するように命令した。

 かなり度数が強く目が小さくなってしまいせっかくの美人が台無しになるがエピスは気にしないらしい。


 エピスから薬の入ったビンを受け取って金視眼きんしがんで効能を確認した。


「これは……なんかの間違いじゃないのか? こんなんでクマを殺せるってのか?」


「知らないよぉ。でも『気まぐレシピ』だとこれが出てきたんだから多分大丈夫だよぉ」


 想像とは違う効能に二人そろって首をかしげる。

 飲んで試すわけにもいかんし、ぶっつけ本番か。




 『ソリを出せ!』とミーミー騒ぐ肉丸を無視して、乗合馬車で現地まで向かうことにした。

 半日ほどかけてドラッグマがでるという森までたどり着いたが、もう日が暮れるのでその日は宿をとって休んだ。



 次の日、俺と肉丸は朝から森へと入っていった。


 この季節はまだ暑いけど、森の中に入ると木陰が多くひんやりしている。

 木の根や石に足をとられないように進んでいくと、鳥の鳴き声や魔物の鳴き声が遠くから聞こえてくる。

 魔物がいないならキャンプでもしてみたいような平和な森だ。


 奥へ進んでいくと、木の生え方がまばらになってきた。

 さらに進むと、半径50メートルほどの広場に出た。

 広場の真ん中には1本だけ大きな木が生えている。


「止まれっ。音を立てるなよ?」


 小声で肉丸に指示を出し、息をひそめて広場と真ん中の木のあたりを観察する。

 ギルドの情報では、ドラッグマがあの木の下でドラッグをキメてるのが目撃されたらしい。



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