アレナエリンの手記
私は罪を犯しました。誰も私を責めないけれども、私は自分がしたことから目を背けることができません。
全てをここに告白致します。
あの夜、ポセワイゼス卿に「面白い物を見せてあげる」と言われ、不信感よりも好奇心が勝ってしまったことが全ての始まりなのです。私は、あまりにも無邪気で無防備でした。ポセワイゼス卿に誘われるがまま、彼の部屋に入ってしまったのです。
彼は、突然襲いかかってきました。このときになって、私は彼が何をするつもりなのかをやっと悟ったのです。
寝台の上で、必死に抵抗しました。しかし、抵抗すればするほど、彼は興奮したのです。
そのときです。ポセワイゼス卿は突然苦しみ始めました。胸の辺りを押さえて「薬、薬」と繰り返しました。
私は逃げようとしましたが、苦しむポセワイゼス卿を放ってはおけないという気持ちになりました。私に酷いことをしようとした人ですが、助けなければならないと思ったのです。母から「困っている人がいたら助けてあげなさい」といつも聞かされていたことを思い出したのです。
「薬……棚の、黒い薬……」
ポセワイゼス卿が指さす方向に、ガラス瓶が並んでいました。黒い液体が入った瓶もありました。
私はそれをポセワイゼス卿に急いで手渡しました。彼はそれを飲み干しました。
突然、ポセワイゼス卿は絶叫したのです。自分の喉を両手で押さえて叫び、わめき始めました。
私は怖くなって、気が動転して、逃げ出しました。客室の居間を駆け抜けたとき、私の服が翻って風が起き、ろうそくが消えて真っ暗になってしまいました。私はますます慌ててしまいました。
扉は開きませんでした。かんぬきが掛かっているという簡単なことも分からなくなっていたのです。後ろから聞こえるポセワイゼス卿のうめき声と暗闇、開かない扉に、私は完全に混乱してしまいました。何もかもが怖くて仕方がありませんでした。
廊下から父と兄の声が聞こえました。安心した直後、扉が「ドン」と鳴ったことに驚いて、脇に逃げました。恐ろしい音が何度か続き、突然扉が開きました。父と兄は私に目もくれず、寝室に向かって走っていきました。
私はこの部屋から一刻も早く出たくなり、そのまま自分の部屋に逃げました。
そして、ポセワイゼス卿が亡くなったことを後で知りました。あの人が亡くなったのは、私のせいなのです。私が、きっと、薬を間違えたのです。私が毒薬を飲ませて殺してしまったのです。
でも、そのことは怖くて誰にも言えませんでした。私は卑怯者です。臆病者です。人殺しです。
私は人殺しです。
怖い。
言われた通り、黒い薬を渡したのに、どうして……。
次回、最終回です。




