ウィンの推理 その一
ガルダレンの部屋を出たウィンは、メリエリナに向かって静かにこう告げた。
「みんなを客室に集めてくれないか。ポセワイゼス卿が使ってた部屋の隣の」
「一体、何のために?」
「全てを終わらせるのさ」
メリエリナの後ろ姿を見送りながら、ウィンは深くため息をついた。あまり気が進まないが、これしか方法が浮かばなかった。
「ウィン様、どうするのですか?」
「アデン、今日はよくいなくなるね」
「今日は、私以外にツッコミ役がいるようですし」
「なるほど。おっと、客室に行く前にあれを用意しなきゃ」
こうして、ポセワイゼスとは別の客室にガルトレン、ガルダレン、アレナセイア、アレナエリン、ゲルネセルム、メリエリナが集められた。
「セレイス卿、こんな時間に我々を集めてどうするつもりだ?」
ガルトレンが半ばあきれ、半ば諦めたという顔でウィンに問いただした。全てさらけ出したためか、彼は比較的落ち着いている。
ガルダレンは、いまだに懊悩の中をさまよっていた。
アレナセイアは、不安げに視線を泳がせている。顔色も悪い。
アレナエリンは俯いたまま、押し黙っている。両手を握り締めて、何かに耐えているようだ。
ゲルネセルムには、不安も焦りもなかった。背筋を伸ばして、壁の一点を見つめている。
メリエリナは、一同を心配そうに見回していた。
一同がそろったことを確認して、ウィンは語り始めた。
「皆さんにお集まりいただいたのは、この事件を解決するためです。これから、全てをお話ししましょう」
「何だって!?」
ガルトレンが驚いてウィンを見つめた。
「今夜、この屋敷で起こった事件の問題点は二つ。出入りできない部屋で起こったこと、そして寝室に落ちていた留め具の所有者です」
ウィンは、ゆっくりと歩きながら一同に語りかけた。それぞれの表情を観察しながら。
「この謎を解体していきます。まずは、出入り不可能だった点を解決しましょう。これで、不思議なことはなくなります」
ウィンは、懐から太めの糸を取り出すと、輪を作って廊下に通じる扉のかんぬきに引っかけた。そして糸を扉の上に通すと、自分だけ廊下に出て扉を閉めた。
「犯人は、このように糸を引っかけて、廊下からかんぬきをかけたのです。実際にやってみましょう」
糸に引っ張られて、かんぬきがカタカタと動いた。動いたことは動いたが、その場で上下に揺れるだけであまり位置は変わらない。
「こうして、こう……アレ? よっと……かかりました?」
「いや、ほとんど動いていないが」
ガルトレンが扉の反対側に向かって答えた。
「え? ちょっと待って。……どうだ。ちょい、ちょい、っと」
一同は、ほとんど移動しないかんぬきを見守った。
熱い茶が冷めるくらいの時間、ウィンは糸と格闘し続け、かんぬきを廊下から掛けることに成功した。
「ほら! ほらほらほら! このように、廊下からかんぬきを掛けることは可能なのです!」
「そ、そうですね……」
メリエリナがウィンに向かって答えた。
そして静寂が訪れた。
「……」
「……」
「……」
「あの……かんぬきを外してもらえますか?」
廊下に閉め出されたウィンの声がした。




