ガルダレン
ガルダレンは自室に戻っていた。
「何か分かりましたか、セレイス卿」
「御曹司は、妹君をどう思いますか?」
「な、何を唐突に。別にどうもこうもありません」
「深い意味はありませんよ。4歳差、でしたか。妹君が生まれたときのことは覚えていますか?」
「ああ、そういう……。覚えています。アレナエリンがこの屋敷に来たのは生まれてから少し後のことなのです。ね、メリエリナ」
「はい」
「どういうことです?」
「後になってから聞いた話ですが、母の父君が病に倒れられて、母はしばらくカルナポエス家に戻っていたのだそうです」
「それで、そのままカルナポエス家で出産なさった、と」
「ええ。そして、母はアレナエリンとメリエリナ、メリエリナの母のマリエリナを連れて戻ってきたのです。そのときのことはよく覚えていますよ」
「私もよく覚えています」
「マリエリナさんはどんな人だったんですか」
「優しくて、仕事ができる人でしたよ。アレナエリンも懐いていた。私もよく遊んでもらったものです」
「メリエリナさんの母君なら、マリエリナさんも美人だったんでしょうね」
「そう、奇麗な人でした。メリエリナと同じく、髪の毛に少しクセがあって。顔もよく似ていた」
メリエリナは少し困ったような顔をした。自分の容姿に関する話題なのでどんな顔をしたらいいのか分からないのだろう。
「メリエリナの髪を見ると、マリエリナを思い出すよ。ああ、でも瞳の色は父親似だったね。マリエリナの瞳は緑だったな」
ガルダレンは懐かしそうに目を細めた。マリエリナとの思い出は、彼にとっても温かいものであることが伝わってくる。
「ほう、緑色の瞳……」
ウィンはここで姿勢を正した。
「ここまでは余談です。薬の容器を持ち去ったのは御曹司ですか?」
「そうだと言ったら?」
「その容器を渡してください」
「あれは粉々に砕いて捨ててしまいましたよ」
「服の留め具は?」
「ポセワイゼス卿ともみ合っているときにちぎれてしまったようですね。あんな所にあったとは」
「留め具が付いていた服は今どこに?」
「燃やしてしまいました。証拠を残しておくほど愚かではありませんよ。さあ、もう証拠は残っていません。どうなさいますか」
「それは困った。では、犯人は私が適当に見繕うしかありません」
「適当に!? そんなことが許される訳がない」
「実は、私は『真実』にあまり興味がないのです。私が皇帝陛下に申し上げたことが『事実』になる。私は、帝国にとって最も都合の良い『事実』を作るまでです」
「……」
「一体、誰をかばっているのです?」
「分からない……。分からないのです」




