命に祈りを
命ってなんでしょう。
楽しい事って何かなぁ。僕は楽しいと思っていても、楽しいとは思っていなかったんだ。嬉しい事も同じで、嬉しいのはほんの一時で、まるで其れを与えて呉れた人に対する“お辞儀”みたいに思ってたんだ。感じる事の全部は、今支えて呉れる人達の御蔭だったって思うんだ。それなら、どうしたら僕は僕の嬉しさを感じられるんだろう。之まで生きて来て、そんな事も解らない僕は馬鹿なのかな。同じ様に、哀しさも解らない。どうしてかな。皆、“こんな時は”って云っているのに、僕には判らないんだ。それでも、生きていて好いって、そう云って呉れる人達の為に生きて来たんだ。でも、成長は他の人と同じだから、知らない感情も知っちゃったんだ。“切ない”って云う感情を。もう少ししたら、此の星の命も尽きる。其れは、きっと、僕等の所為。只の居候でしかなかった僕等には助けられそうもない。気持ちとは裏腹に、生きて居たいと思う。でも、其れは無理な事だから、最期には何うしようかと思う。大好きな人は沢山居る。けれども、皆の処へは行けそうも無い。何うしたら好いんだろう。……生きて居たいと思うなら、最期位は誰かの傍に居てあげられるかも知れない。それなら、僕を好きだと云って呉れた人の処に行こう。何んなに残酷な最期を迎えても、好きと云って呉れた人の傍に居られるのなら、其れはきっと幸福なんだ。きっと。……
『迎えに来たよ』。彼女は苦しそうに、でも、嬉しそうに、笑って呉れた。其れがとても哀しくて泣きそうになったけど、『せめて最期は』と、僕はか細く呟く様に云った。すると、彼女は手を伸べて僕の頬を撫でて呉れた。涙が、溢れた。「どうして」、思わず口を滑らせた。答えは、無かった。只、彼女は微笑んでいた。淋しさを感じる事しか、僕には出来なかった。すると、彼女が云った。きっと、苦しい筈なのに。『来て呉れて有難う』。そうして、彼女は眠りに就いた。生涯目の覚めない眠りに。僕は其処で理解した。人は必ず最期を迎える。其れが、楽しかったり、嬉しかったり、幸せだったり、色んな感情が入り混じって、人を鈍感にさせるのだろう。けれども、僕は其の凡てを理解したのだから、正面から向き直った。『おやすみ』。たった其れだけだった。其れ以上、何も言えなかった。せめて、最期のキスを。……
やがて、此の星は最期を迎えた。同時に凡ての命も。身勝手なお願いかも知れないけれど、何時か、また、出逢えますように。
生きる事ってなんでしょう。




