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懊悩の淵  作者: 粘土
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現実です

僕はきっとこんな生活を送ると思います。

 初めから解っていた事だが、遂に住む家も、雨風あめかぜを凌ぐ場所も失ってしまった。せいせいする反面、之からの事を考える。死ねば終わる此の身だが、生きるとなると、かなり厄介だ。第一重たい。其れを支えるのなら、其れなりのかてが必要だ。幸い、季節ごとの生き物や野草などを知っている。なので、早速出掛けた。季節は初夏。この時期には色々なかえるが獲れる。蛋白源としては申し分無い。更に植物。以前から摘んでおいたつくしが大量に有る。然し、残念な事に卵が無い。家から持ちだした油やら調味料などが有るから、後は鍋を遣えばつくしの炒め煮が出来ると云うのに、肝心の卵が無い。残念だが、諦めるより他無い。近くに養鶏場が在るので、盗みに入ろうと思えば幾らでも手に入るのだが、余りにもリスクが高い。今現在の身体には力も入るし、色々と出来そうだ。だが、住む家が無くば刑務所も已む無しと云う状況で敢えてそんな事をするのには有効性が無い。仕方無しに蛙を獲る。其処は割と大きな川で、両側面には草も茂っている。其の為、意外と大きな蛙が住んでいる。申し訳無いが、生きる為だ。簡素な網を住み家に仕掛け、蛙が掛かるのを待つ。とは、云っても今はもう暮れ時だ。放って置いても其の内に幾らか網に飛び込んで来るだろう。然し、只待つのでは、退屈だ。一度通りに戻ろう。……

 位過ぎたろうか。“しけもく”を遣って居る内に随分と経った。幾らか繋ったろうか。腹が空いてはいるが、其の腹を満たす為だ。自身で解らない時間程窮屈なものは無い。何もする事が無いのは退屈で仕様が無い。せいぜい蛙が掛かるのを待つだけだ。其れにしても腹が空いた。調味料が有っても喰う物が無ければ意味が無い。まさか、塩を舐めて暮らす訳にも行かない。そんな事を考えて居る内に、空が白みがかって来た。昨日から殆ど寝て居ないので意識が朦朧とする。其の半面、体力はしっかりとしているので中々に不具合だ。之でし獲物が掛かっていなかったら残念至極。其の時には同じ境遇に在る人に炊き出しを遣っている場所を訊くしかない。然し、其れも少々気に入らない。だからして、つくしを喰う内に何かしらの手立てを考えねばならない。残念ながら、昔、明治の頃の様に野良猫や野良犬を喰うのにはかなりの抵抗が有る。兎も角、食糧を得て住み家を探すしかない。でなければ、恐らく終わりだ。生きようと思うのは簡単だが、現実に其れを成すのは非常に難しい事なのだと今更ながらに気が付いた。あまり消極的な事を考えて居ても仕方が無いので、取り敢えず罠を仕掛けた処へ行ってみる。無論期待は出来ないが。暫くして辿り着いた土手で、酷く驚いた。牛蛙が三匹も掛かっていた。何と云う僥倖ぎょうこう。之で、先ず二週間は持つだろう。然も、更なる奇跡。対して丈夫でもなかった網が一処も破れていない。思わず笑ってしまった。之ならば此の先幾らかは生きられそうだ。折角の御馳走だが、つくしと一緒に祝いをしよう。之まで生きて来た人生の中で最も有り難い出来事だった。後は、眠る処さえ有れば好いのだが。其処まで期待しては不可いけないか。今は兎に角、収穫を祈ろう。後の事は後で考えれば好し。辛うじてガスの残っているライターに任せて頂くとしよう。


蛙も結構美味しいと訊きますので楽しみではあります。

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