男と女ってこんなもんでしょ
懊悩と云って置きながらの、まあね。って、感じです。
何時だって君は笑って居て呉れた。そんなちっぽけな事で、僕は救われた。付き合って居る訳でも無いのに、君は何時も傍に居て呉れた。そんな些細な事で、僕は有頂天に成った。君と居る時が、本当に幸せだった。君の笑顔が素敵だった。だから、僕は真っ当であろうと思った。少なくとも、君に恥を掻かせない為に。其れなのに、君は僕をもっと幸せにして呉れた。まだ学生であったのにも拘らず、クリスマスイブに君が呉れたブーケ。とても嬉しかった。涙を流す程に。こっちもマフラーを用意していたのに、先を越されちゃったよ。でも、押し付けた。其のマフラーを嬉しそうに捲く君がとても愛おしく思えた。此の侭一緒に何処かへ行こうかと思う位にね。けれども、びっくりしたよ。君の方から誘って呉れるんだから。思っても見なかったよ。然も、連れ立って行ったのはホルモン屋台。豚も牛も有るホルモン屋台。嫌いじゃないから文句は云わなかったけれど、まさかね、と思ったよ。然も君、呑む物が半端じゃ無かった。焼酎をストレートで頼むなんて。僕の方はと云えば、清酒を徳利で。之なら暫く持つと思ったら、君。僕が徳利を空ける前に次の焼酎を頼んでんだからびっくりだ。なんぼなんでも飲み過ぎじゃないかと云うと、「足掛けだよ」なんて云うもんだからまたびっくりだ。もう平然と呑む君に何を云っても無駄なんだと思った。多分、自宅でも相当呑んでるんだろうと思いつつ、次のメニューを頼んだ時には君も次の一杯を頼むんだから恐れ入ったよ。確かにホルモンは美味い。けれども、ピッチが速すぎないか? と思っていると、突然彼女が問い掛けて来た。
「君は私の事を好いているの?」
どうしようと思った。確かに彼女の事は好きだった。然しだ。此のレベルに着いて行けるかというとちょっと自信が無かった。其処でもじもじしていると、
「一か零かでしょう?」
之には参った。好いているのだから、零では無い。けれども完全な一でも無い。考えを巡らそうと思った瞬間、
「零じゃ無い筈でしょう!」と、言われてしまった。流石にもう逃げられない。仕方無く、いや、男として判然と、
「好きです!」と、大きな声で答えた。
ふと見ると、屋台の店主が笑っていた。まさか、ひょっとして……
「あの、こんな事前にも有ったんですか?」と、店主に訊くと、くすくすと笑っていた。
「オッサンは兎も角、好きならば好し」
「はい、好きです。只、君酔ってませんか?」
「酔ってはいる。だけどこんなもんじゃ済まさない」
店主が云った。「この娘は自分が満足するまで帰して呉れませんよ」
(マジか)と、気付くな否や次の注文が入っていた。勿論、焼酎もだ。
「ウェヘへ~。好きと云ったからには今日は帰さん。男と女。遣る事遣ってからじゃないと。因みにもう遅いから、家へお泊りなさい」
嬉しい反面、何とも残念な気分。多分、男にしか解らないだろう。
結局この夜、彼女と自分は付き合うと云うか一緒に成る位まで確定されてしまったのであった。
こんな出会いが一番好いんじゃないでしょうか。




