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懊悩の淵  作者: 粘土
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死して然る可き

きちんと出来ないなら、誰かが云わねばならないのです。

 近頃、自分の精神に“潜る”という事を、生徒の頃に習って遣る様に成った。其の成果は感がえるまでも無く莫大な恩恵と化す。平生ふだんの心持ちでは決して気付けない様な細かな処まで観えて来る。脆弱さ、不甲斐(ふがい)無さ、心の曇天どんてん、命たり得ない生命。余りにも美しい。素晴らしい。正に、死ぬに相応しい命。

 自身では価値の有る事も、同じくして生くる人には通じないらしい。実際、十年以上も兄に虐められ、ネグレクトを受けたにも拘らず、両親は長兄であると云う理由でかばっている。何の謝罪も受けて居ないのに、仕方の無い事だから忘れろと云う。……殺して遣りたい。今直ぐにでも。少しずつ、足や、手の指を刻んでいって、死なない様に介抱しながら、治ったら、又刻む。少しずつ、少しずつ、自身の犯した罪の重さを思い知らせたい。殺したい。……

 僕は狂人ではない。だから、そんな事を好む訳でも無い。嗜虐性しぎゃくせいと云うがハナからそんなものは無い。人の血を見るのだって嫌だ。だから、自分の血を見て満足していた。すると、父には実際に、本気で死んで見せろと云われ、母には他人だから興味は無いと云われた。菜切り包丁で三回位ザクザクと手首を切った。其れ以前にはカッターナイフで裂いた。いずれも十針以上の傷であった。遣り方に因っては確実に死ぬ切り方だ。……

 死ななければならないのは罪人ではないのか? 僕はそんな大逆たいぎゃくを侵した覚えは無い。小学校へ通い、普通に過ごしていたのに、物心付く前から家に帰れば地獄。そんな毎日だった。果たして、僕が悪いのだろうか。何にもしていない、兄には何にもしていない僕が悪かったのだろうか。今、改めて考え直しても、其れは違うと思う。結局はけ口にされたのだろう。両親とも精神疾患の疑いが有るのだから。……

 残念な事に其れは伝播でんぱする。疾患を持った者が育てた子は大抵其れを受け継ぐ。そして、捌け口を探す。其れが、僕だった訳である。“不良品”として生まれた僕には何も出来なかった。口を利く事さえ。只々、虐待に耐えるだけの毎日だった。けれども、僕は大学へ進学し、苛めを貫いた長兄は職場での苛めに耐え兼ねてニートに成った。僕は家への、両親への義務から無理にでも働いた。持病を抱えながら。一方の長兄は“いじけて”働きもせず、毎日アニメの懸賞応募に夢中になった。然も、家族の名を勝手に遣って。其れは犯罪行為だとも知らずに。訴訟になれば必ず刑罰を喰らう事も知らずに。然も、十年経った今でも続けて居る。其れを僕は赦せない。彼の名を云おうか。……いや、止めて置こう。出版社に送った方が手っ取り早いから。ともあれ、才も無く、勉学もしない奴に今現実として、死ねと云われている。そして、何故か彼を護ろうとする両親に死ねと云われているのは確かな事だ。どっちだろうね? 才有りき者が自殺をするのが正しいのか、才無き者が生き延びるのか。己惚れて云っているのではないよ。私には少々の才が有るのだから。成程、少し言い過ぎた様だね。僕には才無き事は無い。そう、言って置こう。

因みに、勝手に人の名前を遣って応募するのは違法ですよ。

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