世に咲く花
入院中に書いた物です
随分とたがの外れた路を来た。凡てが間違いだった訳では決してない。然し、到りし処が眼前に映える景色ならば、徒に答えをひねり出すのは凡ての愚に於いて、無智に然り、無知に然り、無恥に耽るに同様なりて、人としての、形の定まらぬの点に尽きるのは尤もとして、何故と問うには吊るされ可き人は人に非ずして、きつねの火の躍るが如くに不得要領の域を出ず、先ず奇怪極まり、又、意義を為さぬ。毛の長い犬を這わせば何もかもが攫われる筈だ。其の程度の事である。
夜の帳降りる頃、柳の下には幽霊が愉快そうに笑い、辻斬りが恐ろしき目をぎらりと光らせ、他を出し抜こうとしては逸る、猛る押し込み家業。逆手に仕込んだ包丁遣いの按摩師は、次の獲物を探している。盗人は色町の女に噛み殺された。行きつ戻りつ、渡世の花よ。賽の目狙わず賞金首ぞをと、只管に待つ。
何時まで語っていても恥の上塗りだ。好い事を其れと知らず、他人を憎み、恨み、妬み、呪い、蔑む。人を冷やかしては顰蹙を買い、其れをすら意味を知らずと言い逃れる様よ。金が無いのは他人の所為。時間が無いのは浮世の所為。自由が無いのは世の所為。二言目には何事か文句を云って憚らない。成程、幸せな人生だ。終わりが来ても気付くまい。本当の事に。実は、何に負かされて想い患うのかを。息に苦しむのかを。望むと望むまいとに拘らず、人は生きている。刹那は平等に有る。恋する事も平等だ。即ち、凡てが平等なのだ。ならば、何を願う。望めば手に入るのかも知れないではないか。ならば、何を愛する。それは何だ? ……敢えて問うまい。分かっている筈だから。“生きて”いるのだから。……
私にしか意味が解らないでしょう




