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懊悩の淵  作者: 粘土
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君を愛している・参

皆さんにもこんな人生を歩んで頂きたいです。

 或る日、妙な事に気が付いた。足が中々踏み出せないのだ。何の覚えも、何の自覚も無い。然し、何うしても踏み出せない。何うしてかと足元を見ると、赤い線が引いてあった。其の線に触れようとすると、何故だか、足も、体も、心も重く成る。脳だけが判然としている。少しく考えて見る。すると、「成程」と、気が付いた。其の線はきっと、今の私の限界なのだ。超える可き領域を示すものなのだろう。よし、と、気合を入れて、思い切って超えて見た。先刻まで苦しかった筈なのに、心を決めると、楽に超えられた。

 之で楽に進めると思った矢先、次の一歩が重かった。流石に気が付いた。又、赤い線が引いてあったのだ。気を入れて踏み出すと、やはり先刻と同じ様に超えられた。余りにも容易いので拍子抜けしたが、然し、其れが私にとって必要な行為であると得心した。

 其れから、幾度も其の線を越えて歩いて来た。目指す先は解らないが、兎も角超える必要が有るのだと安んじて思えた。幾らでも超えて見せる。そう思う度に精神が奮い立って行くのを感じた。総毛立ち、其れこそ、怒髪天の如くに挑み続けた。最早、理由も必要無い。超えて行く事にこそ意味を感じる。即ち、其れが私の生きる路なのだと認めたのである。

 一歩、又、一歩。幾らでも続く限界を超え続け、辿り着くのは何んな処なのか。私の望む世界なのだろうか。いや、生きる路と認め、悟ったのなら、其の路の果てには私の頂く可き光に照らされた未来が在る筈だ。

 雨に打たれ、雷にも怯まず、恐ろしく寒く、何時までも降り続く雪の寒さにも耐え、辿り着く先を、是非とも観て見たい。其の空気を感じて見たい。たとい、けむかれても、眼に映らない美しさに触れて見たい。そんな素晴らしさを味わえるのなら、何んな苦痛も苦悩も乗り越えて見せる。私は、此の世界に産まれたのだから。だから……。

 今視えている景色とは違った未来へ。違った世界へ。一歩ずつ、たったの一歩ずつ、限界を越えて行く。其れは苦しくとも、素晴らしい道程みちのりなのだ。……生まれて来て好かった。こんなにも麗しい苦痛を味わえたのだから。然も、其れを乗り越える心を持てたのだから。何時までも覚えていよう。此の奇跡を。与えられた祝福を。何んな景色でも、私にとっては“まほろば”だ。だから……。

 私は行くよ。ずっとね。

結構辛いですが、生き甲斐は有りますよ。

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