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懊悩の淵  作者: 粘土
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洞穴

皆きっと、最初は其処に居るんですよ。

文字は想いを伝える。言の葉は想いを突き付ける。言葉とは、そんな不思議な力を持っている。私は其れを信じている。故に言葉を連ね、言の葉を紡ぐ。けれども……。何だか変だな。私の言葉は無視される。言の葉の想いは届かない。ひょっとして、私は存在していないのかな。けれども、話をしないと、相手に通じない。可笑しいな。真面目に云うと伝わらない。ふざけて云うと伝わる。とても、変だ。

 気が付いたら此の路を歩いていた。意識した覚えは無い。本当に知らぬ間に、此の道を歩いていたんだ。特に後悔は無い。出来る事をする為には此の道しか無いのだろうと認識している。自覚も有る。だから、気が付いたら、ではなくて、本当は知らぬ間に思う路を選んで居たと云えなくも無い。けれども、伝わる事は極僅かで、然も、完全に変換されている事も有る。其れは、仕様が無いのかも知れない。私には私の世界が。他人には他人の世界が在るからだ。強要しようと云うのは傲慢である。詐称であるとも云える。

 暗闇に一筋の光を見付け、目指して歩くが、中々近付けない。其れ処か更に遠く成る様な気さえする。或いは、其の光も偽物なのかも知れない。全く、困り果ててしまう。其れ程元気であるとも云い難い状態で、目指す光が似非だとしたら、私は完全に間違ってしまったと云う事だ。そうではないと信じて進むが。……。

 目の前に蛙が居る。私と同じく、光を見詰めている。ゆっくりゆっくり、一足ずつ進む。彼、或いは彼女に付いて行って好いものか何うか。先に疑問を感じてしまった私には判断出来ようも無い。幾らかの可能性は有るのだろう。けれども、私が怪しんだ事も又事実だ。ならば、私は何うす可きか。誰の啓示も受けられない侭、只々迷う。一つだけ違うのは、蛙と、私は同一の光を求めている訳では無いと云う事だ。ならば。……。

 私は一筋差す光に背を向けた。そして、暗闇へと歩を進めた。私は蛙では無い。私は人間だ。たとい、暗闇にでも、自らの輝きを放てば好いのだ。脳の力に因って。暗闇の水底へと、暗闇の最果てへと向かおう。何れ辿り着く最期の闇を掻き毟って光を放って見せる。其処こそが出立点だと云える様に。羽など無くとも飛んで行ける。光に手を伸べれば、自然、大地の感触を其の足に感じるだろう。助けなど要らない。私が自身で創るのだ。そして、私は最期に地に立とう。其の時には、其れまでに昇った彼氏彼女が待っていて呉れる筈だ。其の時こそ、私は笑おう。大きな声で。本当の笑顔で。……。

 私は待っているよ。君達の来るのを。

私は待っています。皆さんを。

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