君と観た空
「君はあの日の景色を覚えているかい?」
久し振りに、幼い頃の夢を見た。まだ、夜明け前の空に向かって問う。清く、そして、美しかった心で捉えていた景色は、今でも僕の心に残っている。二人で空を見上げ、雲と戯れて、時折現れるプリズムと、虹の橋を渡り、そうして又、自由に羽ばたけたなら。そんな事を何時でも語り合い、夢見ていた。単なる憧憬で無く、本当の事として。現実には不可能な事も、子供なら、真実として想いを馳せる事が出来る。僕等は、正しく純粋だったのだ。イカロスだって、束の間の自由を得た。他に何んな方法が有るのか、そんな事は考えもしなかった。只々、願えばきっと適うと信じていた。
暗闇にも、云い様の無い、絵画の様なフィルムを観る事が出来た。地に花が咲くように、数え切れない程の花が、僕等の夜空に咲いていた。綺麗だった。疑う余地も無く。流れる軌跡と、留まる光。沢山の動物達の居る空は、紛れも無く、素敵な世界だった。あの空を、鉄道が走っていると知った時には、我慢出来ない位の昂揚を覚えた。本当に、本当に、胸を打たれたのだ。……。
其れから何れ位経ったのだろう。其れ程に沢山の時が過ぎた。共に観た“君”はもう居ない。けれども、夢の中の君は、確かに僕の心の中に居る。
「君はあの日の景色を覚えているかい? 僕は覚えているよ。きっと、忘れないよ」
明けの空に問いかける。そうして、約束する。僕はずっと、覚えている。




