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懊悩の淵  作者: 粘土
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country・road  

 お酒を買いに出た。近くのコンビニへ。果たして直ぐに着いた其処で、チューハイや焼酎を買う。何事も思わず、部屋へ帰り、其れ等を呑む。其れが私の日常だ。辿り着く場所は近く、困難も無い。手にする物は安価で、誰の手にも届く。何時しか忘れた夢は、何時しか目の前に横たわり、決して退いては呉れない。何うしたって届かないのに。

 そんな葛藤を忘れる為か、私は仕事に埋没する。作りたくも無い笑顔で以って、御客に対する。仕事の合間だから、仕様が無いが、余り好い気分では無い。きっと、家庭を持つ働き手はこんな気持ちなのだろうと、勝手に頷く。其れもきっと、自身を慰めようとしている所為だろう。あんまり哀れだ。せめて、帰る場所が、本当に、自分にとって帰っても好い場所が在ればなどと、勝手な事を思う。

 うちを出て何年になるだろう。もう、カレンダーを観なければ自分の歳さえ思い出せない。酷く不安定な心持ちで、日々を生きている。思わず、の名曲、『stand・by・me』を口遊くちずさむ。誰も傍に居ないのに。だから、誰も否定して呉れない。結局、自分自身で打ち消すのみだ。哀しくて、切なくて、『Let It Be』を唄う。きっと、彼等もこんな気持ちだった筈だ。彼等は二組で一つに成ったのだから。詳しくは云わない。下らないから。……

 私が帰ろうと、自転車に乗ると、同じ車線を少女が凄い勢いで自転車をいで行った。体でなら負けぬと漕いだが、心では全く追い付かなかった。いや、追い付けなかった。私の心は、認めたくは無いのだが、既に耄碌もうろくを容認してしまっているらしかった。本当に、認めたくは無かった。けれども、もう、認めざるを得なかった。私は、歳を取った。要らぬ間に。勢い切って漕いで行った少女は、何うなるかは彼女次第だが、可能性を秘めた未来へと向かうのだ。私にはもう、そんな未来は無い。たった一度切りでも光を放つ事が出来たらと、思うのだが、私には無理だった様だ。現に、実家へ帰る積りでいる。其れならせめて、『country・road』を唄おう。不自然な程に溢れる泪を払い除ける為に。程好く濡れた目で物を視る為に。そして、現実を受け入れられる様に。私の願いは適うだろうか。適わないなら、適うまで唄い続けよう。其れが、私の今の信念なのだ。


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