道端の花
道路の脇に、アマリリスが咲いている。きっと、誰かが植えたのだろう。見事に咲き誇る其の美しさとは裏腹に、彼の花は彼岸花の仲間だ。即ち、死者を歓迎し、他の世界に送る花だ。
私は恨めしく思う。私の職場では此の花を販売している。所謂、営業として。可憐にも観え、雄々しくもある其の花は、何時か迎える死を案じているのである。何と云う皮肉か。嫌味にさえ思える。
仕事柄、何時も通る道に咲き誇る赤。まるで、血の色を示しているかの様だ。時に、其の辺りに棲み付いていたシャム猫は、一切姿を見せなくなってしまった。手を引かれ、旅だったのだろう。安んじて考えて見ても、其の花は幾らかの力を持っているのだ。
嗚呼、私に何か出来る事は無いのだろうか。祈るより他無いのだろうか。一考、熟考。まるで意味も無し。感じるゆとりも無し。日々に追い掛けられているだけだ。畢竟、人の出来る事など高が知れているのだろう。そう云う私も、既に朽ちた体で以って生きている。尋常では無い程の苦しみと戦っている。喉を一突き。其れで事足りるのだが、そうして好い場所が無い。海へ還りたいが、其の余裕が無い。何もかもが無い。いや、決断さえ出来れば、何時だって出来る。然し、未来と云う名の余命が、私の頭に横たわり、其れを遮る。すると、気が付く。あのアマリリスは、私に引導を渡す為に咲いているのだと。もう、好い加減に休めと。そうする事が出来たなら。……。
私には家族が在る。簡単に処決する事は適わない。いっそ、何物にも捉われない生活をしていたならば、と、今更ながらに思い、後悔する。が、後悔先に立たず。もう、遅いのだ。辛酸苦難を乗り越えて、之まで何とか遣って来た。喧嘩もした。ボトムアップやボトムダウンに辛子を乗せて舐めて来た。もうそろそろ、好い塩梅だろう。嗚呼、彼のアマリリスよ。私も連れて行って呉れ。凡て君に任せよう。凡て君に委ねよう。……。
処断の時を、私は待っている。




