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アウシュビッツへ行けば人生が変わる ーー青春ラプソディーー  作者: 白石 遼


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9/13

ホストファミリー 

 実際にホームステイをしたことで、また、新たな目標を透は見つけた。アメリカでの1か月は、透の人生を大きく動かした。

 しかし、人生は長い。まずは、日本で何をするか、透は考えていた。そして、、、


  ホストファミリー


 それからの一か月間、大きなトラブルもなく、透たちは無事に過ごすことができた。透たちのホストファミリーは、とても温かい人たちだった。週末になると、メキシコまで 連れて行ってくれたり、ドジャースタジアムを 案内してくれたりした。初めて見るアメリカの景色。初めて訪れる場所。透たちは、そのたびに驚き、そして感謝した。

「こんなところまで 連れてきてもらって、本当にいいのかな」

 そんなことを言いながらも、心の中では、この時間を思い切り楽しんでいた。

 一か月の滞在も、いよいよ終わりが近づいた。

「最後に、何か日本のものを食べてもらおう」

 そう思った透たちは、ホストファミリーに 日本の料理を作ることにした。選んだのは、カツ丼だった。近くのスーパーで材料を揃え、日本から持ってきた 調味料などを使いながら、みんなで作った。

「これが日本のカツ丼です」

 ホストファミリーは、嬉しそうに料理を眺めていた。一口食べると、笑顔になった。その笑顔を見て、透たちも嬉しくなった。言葉は十分に通じなくても、気持ちは伝わる。そんなことを感じた一日だった。

 そして、この一か月の生活の中で、透にとって大きな存在になったのが、水島ヒロシだった。

同じ部屋で生活していると、自然と話す時間も増えていった。そして、ベッドは定期的に 交換で使うことにした。

「オレ、京都の同志社大学に通ってるんだ」

「そうなんだ」

「せっかく大学にいるんだから、いろんなことを 吸収したいと思って。それで、このツアーにも参加したんだ」

 ヒロシは、そんな話をよくしてくれた。透も、自分のこれまでのことを話した。同じ日本から来た二人だったが、育った環境も、生活も違う。だからこそ、話していると面白かった。アメリカで出会った、ほんの一か月の仲間。それでも、できれば日本に帰ってからも 会いたい。そう思い、二人は住所を交換した。

「日本に帰ったら、また会おうな」

「うん。連絡するよ」

 そんな約束をした。一方、もう一人の早稲田大学の吉田は、明るくて調子のいい青年だった。みんなと話すこともあったが、時々、一人でいることを 好んでいるようにも見えた。透は、無理に話しかけることは しなかった。人には、それぞれの過ごし方がある。それでいいと思った。

 ほかの女の子たちとも、少しずつ仲良くなった。一緒に笑い、話し、アメリカでの時間を楽しんだ。

 けれど、一か月のツアーが終わると、みんなそれぞれの 日常へ戻っていった。連絡を取り合うことも、いつの間にかなくなっていった。自然消滅だった。

――まあ、そんなものなのかもしれない。


  アメリカからの帰国


 翌朝。いよいよアメリカを 離れることになった。一か月という時間は、長いようで短かった。最初は、ただのホームステイ先だった。けれど、一か月後には、離れるのが寂しいと思える場所になっていた。透は、改めて思った。アメリカに来てよかった。英語が上手く話せたわけではない。特別なことができたわけでもない。それでも、ここで出会った人たちと 過ごした時間は、きっと忘れない。そして、この一か月の思い出を胸に、透たちは日本へ帰ることになった。失敗しても笑って許してくれる。そんな日々を重ねているうちに、いつの間にか、この家にいることが 当たり前になっていた。週末には、メキシコまで連れて行ってくれた。ドジャースタジアムにも 案内してくれた。そのたびに、

「こんなところまで 連れてきてもらっていいのかな」

と思った。そして、同時に嬉しかった。アメリカへ来なければ、決して見ることのなかった 景色だった。一つ一つの思い出が、今になって鮮明に蘇ってくる。

「……今日で終わりか」

 透は、小さく呟いた。その日の夜。最後の夕食は、透たちが作ることになった。

「一か月間、本当にお世話になったから」

 そして、静かに言った。

「You are always welcome here.」

 透は、一瞬、言葉を失った。意味は分かった。――いつでも、この家に帰ってきていい。

その言葉が、胸の奥に深く入ってきた。最初は、ただのホームステイ先だった。一か月が終われば、日本へ帰る。それだけの場所だと思っていた。

 なのに今は――。

「帰りたくない」

 そんな気持ちが、ほんの少しだけ 胸の中に生まれていた。

「Thank you……」

 やっと、それだけを口にした。

 本当は、もっと伝えたかった。楽しかった。嬉しかった。本当にありがとう。この一か月を忘れない。またここへ来たい。でも、それを英語にするだけの力は、まだ透にはなかった。だから、何度も頭を下げた。

「Thank you very much」

 一か月という時間は、永遠ではない。透は前を向いた。胸の奥に、ぽっかりと穴が空いたような 気がした。

「……終わったんだな」

 一か月前には、あれほど長いと思っていた 時間だった。それが今では、あっという間だった透は 歩きながら考えた。アメリカに来る前、自分は何を期待していたのだろう。英語を覚えること。海外を経験すること。それくらいだった。

 でも、実際に一か月を過ごしてみると、それ以上のものが残っていた。人と出会うこと。人に親切にしてもらうこと。そして、別れること。別れが寂しいと思えるほど、大切な時間を過ごせたこと。それは、英語の勉強だけでは決して得られないものだった。透は、少しだけ笑った。

「アメリカに来て……よかったな」

 英語が流暢になったわけではない。難しい会話ができるようになったわけでもない。けれど、知らない場所へ 飛び込むことへの怖さは、確実に小さくなっていた。

 英語が上達したというより――英語が通じなくても、何とかなる。そう思える度胸がついた。それだけでも、透にとっては十分だった。



 日本に帰ると、まずは、仕事探しを始めようと考えていた。そして、、、

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