↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アウシュビッツへ行けば人生が変わる ーー青春ラプソディーー  作者: 白石 遼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/13

デート

 自立の第一歩として、男子寮を去り、東京渋谷で一人暮らしを始めた透。さて、ここからどのような展開が、、、

ある日の休憩時間。透が社員食堂で、いつものように、コーヒーを飲んでいると、別のレストランで、働いている女性が近づいてきた。

「ねえ、滝口君」

「はい?」

 突然声を掛けられ、透は少し驚いた。

「今度、休みいつ?」

「えっ……。明後日です」

 すると、その女性は、にっこり笑った。

「じゃあ、よかったら映画でも観に行かない?」

「……」

 透は、一瞬言葉に詰まった。しかし、特に予定はなかった。

「まあ、その日は、用事はないので……」

 そこまで言ってから、透は少し照れながら、

「はい」

と答えた。その女性の名前は、星野百合子。透より一つ年上の先輩だった。透も、これまで何度かホテルの中で、かけたことがある。

――綺麗な人だな。

 そんなことを、密かに思っていた女性だった。まさか、その人から映画に誘われるとは、思ってもいなかった。仕事は大変だった。毎日、身体を動かし、頭も使う。失敗すれば注意されることもある。それでも、頑張っていれば、少しずつ仕事ができるようになる。そして、ときには、こんな嬉しいこともある。透は、働くことが悪いことではないと、思うようになっていた。単純である。むしろ、一生懸命に働くからこそ、見えてくるものがある。そんなことを、18歳の透は、少しずつ学んでいた。

 時代は、やがてバブルへと向かっていく。街には活気があふれ、人々の暮らしも、少しずつ豊かになっていった。透もまた、その時代の空気の中で、青春を過ごしていた。同期入社の吉成ヒトシと、野球観戦に出かける。そして、休みの日には、星野百合子と時々映画を観に行く。仕事だけだった毎日に、少しずつ楽しみが増えていった。

18歳の滝口透の毎日は、いつの間にか、仕事と仲間と、そして、恋の気配に彩られ始めていた。


  一人暮らしと旅行


 その夢は、やはり、動く事から始まった。王室ホテルに入社して、一年が過ぎた。仕事にも少しずつ慣れ、毎日の忙しさの中にも、自分なりのリズムができていた。そんなある日、透は千葉の男子寮を出ることを決めた。引っ越し先は、東京・渋谷区。十九歳にして、初めての一人暮らしだった。

「どうせ、いつかは、自分で暮らさなきゃならないんだ」

そう思うと、不思議と迷いはなかった。ホテルマンの仕事は忙しかった。その分、残業も多い。けれど、働いた分だけ給料は増え、気がつけば、少しずつ貯金もできていた。

ならば――。今、やってみよう。それが、透の決断だった。渋谷区恵比寿での、一人暮らしが始まると、生活はそれまでとは、大きく変わった。自分で起き、自分で食事をし、仕事に行く。誰かに頼ることなく、一日一日を、自分の力で過ごしていく。そして、職場の大手町までも、以前よりずっと近くなった。

 その頃、同じ男子寮で、暮らしていた吉成ヒトシも、透に続くように東京へ引っ越した。吉成は目黒区だった。千葉の男子寮で、暮らしていた二人は、それぞれ、東京で、新しい生活を始めることになった。そして、もう一つ、大きな変化があった。

 職場に、後輩ができたのだ。入社したばかりの頃は、社内報に載った新入社員の、写真を見ながら、

「この人たちが同期か……」

 そんなふうに眺めていた透だった。ところが今度は違う。社内報に載った 新入社員たちの顔を、透は先輩として見る側になっていた。

 一年。

 たった一年だった。けれど、その一年で、透の立っている場所は確かに変わっていた。十九歳。まだ少年の面影を残していた透は、少しずつ社会人として、自分の足で歩き始めていた。


 時代は、バブルへと向かっていた。街には活気があふれ、誰もが、これから先の未来は 明るいと信じているた。透も、そんな時代の中にいた。王室ホテルに入社して、もうすぐ二年になろうとしていた。

 就職して、二年が経とうとしていた 二月のある日、職場で三連休があることを知った透は、何気なく 関西への旅行の計画を立て始めた。


 ――そうだ。京都にでも行ってみるか。特に深い理由はない。宿もまだ決めていない。

行き先だって、京都と決めただけだった。一人で新幹線に乗り、気の向くままに歩く。そんな、いつものぶらり旅を、一人で楽しむつもりだった。


 

 ところが――。

「滝口さん」

 仕事の合間に、長崎出身の一つ下の後輩、新入社員の青山えつ子が、声をかけてきた。今は吉成さんと同じ職場の後輩だ。小柄で笑顔が可愛い女の子である。今まで何度か 吉成さんも含めて三人で、一緒に食事をしている。

「ん?」

「何か、計画してます?」

「えっ?」

 透は少し驚いて、青山の顔を見る。

「何のこと?」

「だって、さっきから旅行雑誌 見てるじゃないですか」

「ああ、これ?」

 透は手にしていた雑誌を見せた。

「京都。三連休だから、ちょっと行ってみようかなって」

「やっぱり!」

 青山は嬉しそうに笑った。

「やっぱりって……」

「私も今度の休み、三連休なんですよ」

「そうなんだ」

「滝口さんは、どこ行くんですか?」

「京都」

「一人で?」

「うん。そのつもり」

「へえ……」

 青山は少し考えるような顔をした。そして、突然、

「じゃあ、私も一緒に行っていいですか?」




 一人旅を楽しむ予定が、一緒に行きたいと、後輩が言い出した。その結果、、、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。