07 ナイトの称号を持つ魔剣士ミクリ(改訂)
ナイトの称号を持つ魔剣士ミクリ
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東の沼地に着いた瞬間、湿った土の匂いと重く淀んだ空気が二人を包み込んだ。
アリスは剣を構えながら周囲を鋭く見回した。
「リザードンって、どんな感じの魔物だっけ?」
ミクリが静かに、しかしはっきり答えた。
「大型のトカゲ型だ。毒の息を吐くから近づきすぎるのは危険だぞ」
ディネが肩の上で腕を組んだ。
「近づかずに遠距離で仕留めなさいよ。アリス、迂闊に突っ込むんじゃないわよ」
サラが元気よく叫ぶ。
「僕が焼いちゃうよ! 一気にいこうぜ!」
ノームが低く、落ち着いた声で注意した。
「沼は足場が悪い。気をつけろ」
二人が沼の奥へと慎重に進むと、地面が突然激しく揺れた。
巨大な影が泥を跳ね上げて飛び出してくる。
「来た!」
リザードンが大口を開け、毒々しい緑の息を吐き出した。
アリスは素早く横に跳び、気を込めた剣で横一文字に斬りつけた。
「えいっ!」
しかし硬い鱗に弾かれ、衝撃が腕に跳ね返る。
「くっ……!」
ミクリが即座に援護に入った。
「俺が足を狙う!」
俊足で泥の中を回り込み、魔剣でリザードンの後ろ足を深く切り裂く。
リザードンが激しい咆哮を上げて暴れ回った。
アリスはディネに向かって叫んだ。
「ディネ、アイスランス!」
冷たい氷の槍が宙を舞い、リザードンの肩に深々と突き刺さる。
「今だ!」
サラが炎を纏った拳を振り下ろし、硬い鱗を溶かしながら抉った。
ノームが地面を隆起させ、リザードンの動きを一瞬封じる。
アリスは隙を逃さず、気を最大限に込めた大剣を振り上げ、縦一文字に叩き込んだ。
リザードンが断末魔の叫びを上げ、泥の中に倒れ込んだ。
アリスは息を弾ませながら、にやりと笑った。
「やった! 連携、結構いい感じじゃん!」
ミクリも穏やかに頷いた。
「ああ。お前のおかげだ」
二人が素材の回収を始めると、突然地面が再び揺れ、今度は三匹のリザードンが同時に姿を現した。
「まだいるのかよ!」
三方向から同時に襲いかかってくる。
アリスはミクリと背中を合わせ、素早く指示を出した。
「左は私! 右はミクリ!」
「了解!」
二人が同時に動く。
アリスは気を最大限に込めた大剣で一匹を真っ二つに斬り裂き、ミクリが魔剣の速さで残り二匹の足を次々と切り裂いた。
サラが炎の弾を連射し、ディネが氷の矢で追撃、ノームが土の壁を隆起させて逃げ道を塞ぐ。
最後のリザードンが必死の抵抗を見せた瞬間、アリスは剣を高く振り上げて叫んだ。
「これで終わりだ!」
全力の一撃がリザードンの頭を叩き潰し、周囲がようやく静けさを取り戻した。
アリスは額の汗を拭いながら、ミクリに向かって親指を立てた。
「ナイス連携!」
ミクリが少し照れくさそうに笑う。
「君もすごいよ」
ディネが満足げに頷いた。
「まあまあね。まだまだ改善の余地はあるけど」
サラが元気いっぱいに声を上げた。
「次はもっと派手にやろうぜ!」
ノームがぼそりと呟く。
「無茶はするなよ」
大量の素材を抱えて町に戻ると、ギルド長が目を丸くした。
「よくやった! 上位冒険者でも苦戦する相手だったのに……」
報酬を受け取り、宿に戻る道中、アリスはミクリに聞いた。
「明日からどうする? もう少しこの町でレベル上げするか?」
ミクリが静かに答えた。
「そうだな。もう少し連携を固めてから、次の街へ向かうのもいいかも」
アリスはにっこり笑った。
「じゃあ、決定!」
その夜、宿のベッドに寝転がるアリスは、亜空間の会議室から聞こえてくる声に耳を傾けていた。
ノームが重々しく切り出す。
「第3回精霊会議を始める。議題は『ミクリ加入後のアリス成長計画』だ」
ディネが腕を組んで宣言する。
「まずは基礎体力の強化ね。走り込みから始めましょう」
サラが勢いよく声を上げた。
「戦闘練習も増やそうぜ! 僕の炎をもっと使わせて!」
ノームが頷く。
「土の魔法で防御を固めるのもいい」
ディネが最後に締めくくった。
「とにかく、甘やかさないこと。厳しくいくわよ」
アリスは天井を見つめながら小さく苦笑した。
(みんな、うるさいけど……頼りになるな)
胸の奥に、わずかな温かさと同時に、どこか遠くから感じる不穏な気配がよぎった。
先日の沼地で感じた、あの影のようなもの。
(……まだ、何かが動き出している気がする)
(続きは次話で)
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