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記憶を読む治療士、魔獣の家族を視てしまう --人間と魔獣の境界で揺れる青年の物語  作者: 50
揺らぎ始める世界の正義

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第8話 森の異変

偵察隊は二組に分かれ、村の北門から森へ向かった。


第一偵察隊は盗賊を先頭に、弓師と剣士が続く。

三人の動きは軽快で、地元ということもあり森の地形に慣れていた。


「足跡はこの先だ」

「昨日の群れが通った跡だな」


声を潜めながらも、進行はスムーズだ。

森の空気の変化にも気づかず、奥へ奥へと進んでいく。


***


第二偵察隊は、第一隊ほど軽快ではなかった。


盗賊が先頭で道を切り開き、弓師が周囲を警戒し、

剣士が後方を守る。


その列の中に、ハルがいた。


「……歩くの遅いぞ、治療士」

「悪い。昨日の件で慎重になっててな」


足取りは遅い。

だが、全員が同じ違和感を抱いていた。


(……森が静かすぎる)


鳥の声も、虫の羽音もない。

生き物の気配が消えているのに、

森の奥からは“何か”が押し寄せてくるような圧だけが漂っていた。


昨日、ボアの記憶を見たときと似た感覚。


(何かが……変わっている)


第一隊は前方索敵が目的のため、気にせず進んでいるだろう。

だが後方隊であるハルたちは、周囲の異変を敏感に感じ取っていた。


「止まるな。前隊を見失う」

「……ああ」


ハルは歩きながら、森の奥を見つめる。


(この先に……何もないでくれ)


祈りにも似た願いが胸に浮かぶ。


***


その頃、森のさらに奥では。


兄ボアが巣穴の周囲を巡回していた。

昨夜突撃した仲間の戻りは少ない。


(……三割がやられたか)


胸の奥が焼けるように痛む。

怒りと悲しみが混ざり、体が震えた。


「ブヒィ……!」


短い鳴き声に、周囲のボアたちが反応する。

不安と焦りが群れ全体に広がっていた。


(家族を奪われた。

 なら……誇りなどどうでもいい)


ボア族は誇り高い。

他種族に頼ることは屈辱に等しい。

だが――


(守れるなら、それでいい。

 力が必要だ。

 我々だけでは、人間に勝てない)


兄ボアは巣穴の入口を振り返り、

そして静かに森の奥へと踏み出した。


(……行くしかない)


その先には、

ボア族とは異なる“別の種族”が住む領域がある。


兄ボアの決断は、

森全体の均衡を揺るがす一歩となる。


***


前方を進む第一偵察隊は順調に森の奥へ進んでいた。

だが、彼らの背後で――

木々の影が、わずかに揺れた。


後方のハルたちは少し遅れていたため、

その揺れを感じ取れずにいた。


確実に“何か”が割り込んできていた。


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