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記憶を読む青年は、人間と魔獣の狭間で揺れる  作者: 50


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8/10

第8話 追うものと追うもの

偵察隊は二組に分かれ、村の北門から森へ向かった。


第一偵察隊は、盗賊を先頭に、弓師と剣士が続く。

三人の動きは軽快で、地元ということもあり森の地形に慣れている


「足跡はこの先だ」

「昨日の群れが通った跡だな」


声を潜めながらも、進行はスムーズだ。

森の空気の変化にも気づかず、奥へ奥へと進んでいく。


***


第二偵察隊は、第一隊ほど軽快ではなかった。


盗賊が先頭で道を切り開き、弓師が周囲を警戒し、

剣士が後方を守る。


その列の中に、ハルがいた。


「……歩くの遅いぞ、治療士」

「悪い。昨日の件で慎重になっててな」


足取りは遅い。

だが、全員が違和感を感じていた。


(……森が静かすぎる)


周囲に生き物の気配が感じられない

その割には森の奥から、何かが押し寄せてくるような圧。

昨日、ボアの記憶を見た時と似た感覚。


(何かが……変わっている)


第一隊は前のみの索敵を目的としているため、気にせず進んでいるだろう。


だがハルがいる隊は、後方隊として取りこぼしや周囲の警戒を行いながら進む。


「止まるな、前隊を見失う」

「……ああ」


ハルは歩きながら、森の奥を見つめた。


(この先に……何もないでくれ)


***


その頃、森のさらに奥では。


兄ボアが巣穴の周囲を巡回していた。

昨夜突撃した仲間たちの戻らが少ない


(……3割がやられたか)


胸の奥が焼けるように痛む。

怒りと悲しみが混ざり、体が震えた。


「ブヒィ……!」


短い鳴き声に、周囲のボアたちが反応する。

不安と焦りが群れ全体に広がっていた。


(家族を奪われた。

 なら……誇りなどどうでもいい)


ボア族は誇り高い。

他種族に頼ることは屈辱に等しい。

だが――


(守れるなら、それでいい。

 力が必要だ。

 我々だけでは、人間に勝てない)


兄ボアは巣穴の入口を振り返り、

そして静かに森の奥へと踏み出した。


(……行くしかない)


その先には、

ボア族とは異なる“別の種族”が住む領域がある。


兄ボアの決断は、

森全体の均衡を揺るがす一歩となる。


***


前方を進む第一偵察隊は順調に森の奥へ進んでいた。

だが、彼らの背後で――

木々の影が、わずかに揺れた。


後方のハルたち少し遅れ

その揺れを感じ取れずにいた


確実に“何か”が割り込んできていた。


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