第8話 追うものと追うもの
偵察隊は二組に分かれ、村の北門から森へ向かった。
第一偵察隊は、盗賊を先頭に、弓師と剣士が続く。
三人の動きは軽快で、地元ということもあり森の地形に慣れている
「足跡はこの先だ」
「昨日の群れが通った跡だな」
声を潜めながらも、進行はスムーズだ。
森の空気の変化にも気づかず、奥へ奥へと進んでいく。
***
第二偵察隊は、第一隊ほど軽快ではなかった。
盗賊が先頭で道を切り開き、弓師が周囲を警戒し、
剣士が後方を守る。
その列の中に、ハルがいた。
「……歩くの遅いぞ、治療士」
「悪い。昨日の件で慎重になっててな」
足取りは遅い。
だが、全員が違和感を感じていた。
(……森が静かすぎる)
周囲に生き物の気配が感じられない
その割には森の奥から、何かが押し寄せてくるような圧。
昨日、ボアの記憶を見た時と似た感覚。
(何かが……変わっている)
第一隊は前のみの索敵を目的としているため、気にせず進んでいるだろう。
だがハルがいる隊は、後方隊として取りこぼしや周囲の警戒を行いながら進む。
「止まるな、前隊を見失う」
「……ああ」
ハルは歩きながら、森の奥を見つめた。
(この先に……何もないでくれ)
***
その頃、森のさらに奥では。
兄ボアが巣穴の周囲を巡回していた。
昨夜突撃した仲間たちの戻らが少ない
(……3割がやられたか)
胸の奥が焼けるように痛む。
怒りと悲しみが混ざり、体が震えた。
「ブヒィ……!」
短い鳴き声に、周囲のボアたちが反応する。
不安と焦りが群れ全体に広がっていた。
(家族を奪われた。
なら……誇りなどどうでもいい)
ボア族は誇り高い。
他種族に頼ることは屈辱に等しい。
だが――
(守れるなら、それでいい。
力が必要だ。
我々だけでは、人間に勝てない)
兄ボアは巣穴の入口を振り返り、
そして静かに森の奥へと踏み出した。
(……行くしかない)
その先には、
ボア族とは異なる“別の種族”が住む領域がある。
兄ボアの決断は、
森全体の均衡を揺るがす一歩となる。
***
前方を進む第一偵察隊は順調に森の奥へ進んでいた。
だが、彼らの背後で――
木々の影が、わずかに揺れた。
後方のハルたち少し遅れ
その揺れを感じ取れずにいた
確実に“何か”が割り込んできていた。




